株式会社日本医歯薬研修協会にて、管理栄養士の国試(国家試験)対策の先生をされている宇田川孝子さんに管理栄養士になったきっかけや現在の仕事内容、今後の展望などについてお話をうかがいました。
管理栄養士を目指したのは、花嫁修業のつもりだった
大学にはいろいろな学部学科がある中で、それほど興味がなかったものの花嫁修業のためにと、管理栄養士の学部に進みました。実を言うと、元々は獣医学部や理学部などにも興味を持っていて、そちらのどちらかに進もうと真剣に考えていたこともあったので、まさか自分が管理栄養士として、こうして働くことになるとは夢にも思ってもみませんでした。
大学3年生の時に専門科目が始まり、腹を据えて管理栄養士を真剣に目指してみるか!と決意しました。そこからは真面目に勉強に没頭しました。特に医学分野が興味深く、人体の仕組みや食事について図書館に行って調べるのが楽しかったのを覚えています。
内定を取り消し大学院へ進学
自宅に高齢の祖母がいたため、漠然と高齢栄養にたずさわる仕事がしたいなと考えていました。周りの先生に、まずは給食会社で経験を積んでから、病院の栄養士になるのがいいのではないかと言われ、当時は給食会社が盛り上がっていた時期でもあったため、給食の委託会社を受け、内定をいただきました。
ところが、大学の元学長でもある坂本元子先生が大学院への進学を薦めてくださり、内定していた会社まで断りの謝罪に行ってくださったのです。それで大学院に進むことにしました。今の自分があるのは、坂本先生のおかげが大きいです。先生には感謝してもしきれません。
現在のお仕事は「管理栄養士の国試対策」
今年(2017年)の3月までは、鎌倉女子大学で先生をしていましたが、子育てとの両立が難しいため、一旦お休みをし、今は国家試験の対策の予備校で先生をしています。管理栄養士を目指す栄養士の学生さんたちを対象に、都内だけでなく、日本全国のいろいろな大学で出張講座をしています。
私は、合格ラインぎりぎりで管理栄養士になったのですが、恩師からは「管理栄養士になった後のがんばりが大事ということを示すために、『できない人の中の星』になりなさい!」と言われていました。そこで、自信のない学生さんたちには、昔話を交えながら、「こんなにできない私でも、なんとかなってますよ!」と、言って励ましています。
講義は身近な話題でわかりやすく
管理栄養士を目指す栄養士の学生さんたちを対象にした授業では、身近な話題を例に出すようにしています。管理栄養士は、生活に即している仕事なので、自分の生活での経験を元に皆さんにお伝えしていけるのがいいなといつも思っています。90歳のおばあちゃんが嚥下でむせている話や、子育て中の離乳食の話など、全て講義のネタになっています。また、実は私、大学院の時に体重が78㎏もありまして、1年かけて30kg落としました。その時の苦労話もとても役に立っています。
このように身近な話と紐づけて解説をすると、何かと覚えやすいということで好評のようです。
今後はもっとマネジメント力を磨きたい
現状、課題と感じていることがあります。もっとマネジメント力を強化したいという点です。複数人のチームで仕事する時に、「人を動かす」のは難しいことだなと感じることが多々あります。自分がその場にいなくても、部下がいい動きをしてくれるようにするためには、どうしたらいいのかなと日頃から考えています。
栄養士業界では、「先輩を見て倣え」という雰囲気があるのですが、人を育てるためのマニュアルをきちんと作る必要性があると思っています。「部下の育て方」の研修会などにも興味があり、行ってみたいと思っています。
管理栄養士の地位向上のために思うこと
まだまだ管理栄養士の地位が低いなと思っています。これだけが要因ではありませんが、地位の低さを感じると、途中で辞めたくなってしまいがちです。せっかく取った国家資格です。より多くの人に長く続けてほしいので、おのおの学位を取るなど地位向上に努めてもらえたらと思います。
私はよく、臨床の現場で頑張る人も学位を取りましょう!と言っています。実際、学位があると一緒に仕事をする医師・歯科医師さんの見る目が違います。ほかにも、いろいろな資格を取ってステップアップするのもいいですね。
また、常に新しい情報に触れていられるよう、必要な学会には所属しておくことをお勧めします。私は、日本栄養士会、日本老年医学会、日本ケアマネジメント学会、日本栄養食糧学会、改善学会に所属しています。状況はめまぐるしく変わっていきます。時代に取り残されないようにしたいですね。
最後に管理栄養士を目指す人に一言…
私は学生時代、人とのコミュニケーションや人前での発表が苦手でしたが、今は人前でスラスラとお話しできるようになりました。みなさんも、今上手くできないことがあっても、気張ったり焦ったりしなくてもいいと思います。自身の仕事を真摯に続けていれば、目指す姿に近づいていけると思います。仕事が人を作っていきます。
昔、恩師が言っていたのですが、「思い続け、10年継続すればその道のプロになれる」そうです。私は将来、「高齢者栄養と言えば、宇田川孝子」と言われるようになりたいと思っていますので、恩師のその言葉を信じて、今後も引き続きがんばっていこうと思います。