昨今、よく耳する“Ḥalāl(ハラール)“という言葉。これは、イスラム教徒にとって大切なキーワードです。
観光大国日本では、2012年頃よりインドンネシアからの観光客が増えました。彼らの大多数はイスラム教徒です。多くの観光客を受け入れる国にとって、各国の文化を「異文化だから」と拒否せずに、理解し受け入れて行くことが大切です。
そこで今回は、イスラム教徒の食事について全3回のシリーズでご紹介していきます。
全世界に広がるイスラム教
イスラム教は、世界3大宗教のひとつです。イスラム教徒にとって、宗教は生活の土台です。神(アッラー)(※1)に帰依(※2)し、その教えを遵守します。そして、食についても非常に気を使います。
イスラム教での食事は、神からの報酬という信念であり、宗教的な規制事項もあります。
イスラム教の起源は中東地域にあり、そこでは国民の大多数がイスラム教徒といわれています。そしてイスラム教は、13世紀に中東からインドネシアへ渡りました。
現在では、全世界にイスラム教徒がいますが、最も多いのは東南アジアです。(日本人でも、国際結婚などの理由でイスラム教徒になった人もいます)
中東に比べてアジアの方が、イスラム教の厳格度は緩い傾向にあります。
(※1)神を優れたものとし、それを頼みにその力にすがること
(※2) 宗教的なシンボルや聖像などの偶像を崇拝するのではなく、宗教上の神(目には見えない精神的なもの)のみを重視する考え
ムスリム、ハラール、ハラーム
イスラム教の話をする上で、覚えておきたい言葉があります。
ムスリム…イスラム教徒。唯一神アッラーに帰依する者。
ハラール…唯一神アッラーが創造したもの。宗教上認められている、許されている状態。
ハラーム…アラビア語で禁忌。不浄なもの。宗教上禁止されているもの及び行為。
この禁止事項を守らなかった場合、イスラム法上の刑罰もある。
“ハラール”“ハラーム”は、全ての事柄について決まりがあります。
食事についても決まりがあり、一般的に“ハラールフード”と呼ばれるものは、宗教上認められている食事を指しています。
ムスリムの食習慣を理解するポイント
ムスリムの食習慣を知るポイントは、ハラームにあります。(ハラールについては、次回、詳しくお伝えします)
ハラームな食材
・豚肉
・アルコール
・血液
・宗教上、適切な屠殺を行わなかった肉類
・不適切な飼料で育った家畜・家禽肉・魚介類
・不適切な肥料を与えられて育った野菜・果物
・遺伝子組換え作物
これらを調味料や添加物として使用した料理も禁止されています。また、材料にこれらを使用していない場合でも、例えば“餃子”のように“豚肉”を連想しやすい料理名を避ける傾向もあります。
キッチンについても、ハラームな食材を取り扱った場所・器具と同じものであることを嫌う場合があります。このような要望を取り入れて、日本のホテル・レストランの中には、厨房を改修した施設もあります。
食の多様性への対応
宗教、アレルギーなど何らかの理由で食べてはいけないものがある人は、国内では10%、全世界では30%以上とされています。
近年では、給食施設でも宗教上の食事制限申告が増え、保育園でもお弁当を持参する子どもがいると耳にします。
私たちの日常では馴染みの薄い食事制限ですが、何でも食べてよいことに感謝しつつ、食事制限を持つ文化の人にも丁寧に対応してあげたいものです。
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