COLUMN

中医学は対症療法ではありません

テレビなどのコマーシャルで、「風邪の引きはじめには○○!」、「花粉症には○○!」、「ダイエットには○○!」のように、あらゆる中薬(漢方薬)が紹介されています。

しかし、中医学は表面に現れている症状の一部だけを見て対症療法を行なうわけではありません。一番つらい症状である主訴はもちろん、本人の年齢、性別、体質、体格、職業、生活習慣など、あらゆる情報を集め、化学検査をはじめ顔色や舌の状態、脈などを合せて総合的に「証」(体質や症状などから判断した本質)を判断します。

同じ「便秘」という症状を例に挙げると、冷えのために内臓の働きが低下している場合もあれば、熱のせいで便が固まっている場合など原因も様々です。そのため、一概に「食物繊維をたくさん摂りましょう」、「水分をたくさん摂りましょう」、「オイルも摂りましょう」、「運動しましょう」などというアドバイスをすることはありません。體(からだ)が弱っている場合は、食物繊維をたくさん摂ると胃腸に負担をかけてしまいます。その上運動をすれば、体力を消耗し、逆効果になります。

同病異治と異病同治

このように同じ症状でも、「証」によって違う治療方針をとることを中医学では「同病異治(どうびょういち)」といいます。冷えが原因であれば温め、熱が原因なら冷まします。また、「便秘」と「下痢」のように正反対の症状であっても、冷えが原因であれば同じ治療を行います。これを「異病同治(いびょうどうち)」といい、いずれもきちんと「証」を診断することが前提です。

サプリメント感覚で「友人がこれで良くなったから」、「テレビやネットで紹介していたから」という理由で中薬を選ぶと、症状が改善しないばかりか、思わぬ副作用に悩まされることになります。

中薬は効果が現れるまでに時間がかかると思われがちですが、非常に強く、早いものもあります。必ず専門家に相談の上で服用することをおすすめします。

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みんなのコメント( 1

    • ID: 56
      2893日前

      子供の頃、アトピー性皮膚炎に悩まされ、漢方薬局に毎月通い、そのときの状態に合わせて調合してもらっていました。お金も掛かるし親に申し訳ないという気持ちが強かったですが、結果的には大衆に合うタイプよりも、自分に合う漢方を続けたことが治る近道だったのかな、と感じています。

WRITER

大倉 あやこ

中医学の本場中国、上海中医薬大学にて中医内科を専攻した後、現地の国立病院で糖尿病の外来の営養指導や現地在住の日本人に薬膳をレクチャー、ハーブティーブレンド開発・店舗経営などを経て、2014年に日本に帰国しました。 中医・薬膳の先生と聞くと少し別世界の人のように思われがちですが、厳しい事や細かい事はとても苦手な、美味しい物が大好きな酒のみ栄養士です。 「食」は「人を良くする」ものです。 研修医時代、「この人は食をきちんとしていたら病院に来なくても良かったのに」というような患者さんを沢山診てきた経験から、「病院に行かなくてすむ人を増やしたい」「病氣になっても回復が早まるように」と願い、【食医】」の道を選びました。 ぬる~い私でもできる薬膳ですから、きっと皆さまも楽しんで実践していけると信じて、誰よりも楽しんで活動・情報発信していきたいと思います。 薬膳を通じて沢山の人とご縁できる事を楽しみにしております。

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