日本の食生活に脂質の多い物が増えてきたことで、膵臓の病気が増加しています。しかも、膵臓は身体の奥の方にあるので、なかなか病気に気が付けないまま悪化してしまうことがあります。健康な生活を送るため、膵臓についての正しい知識を身に付け、食生活のポイントを押さえていきましょう。
膵臓の役割
膵臓は、消化酵素を作る工場と言われ、食べ物の消化に欠かせない臓器の一つです。胃の裏側にあり、縦の長さ15~20cm、幅3~4cm、厚さ1~2cmほどの大きさです。膵臓の主な役割は、消化液である膵液を分泌することです。膵液は炭水化物を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなど消化酵素を含んだ消化液で、1日に1~2リットル分泌されます。また、インスリン・グルカゴンといったホルモンも産生します。
食べた物は、胃で3~6時間かけて粥状になった後、十二指腸へ送られます。この時、膵臓の膵管から分泌され十二指腸に送られた膵液によって消化され、小腸から吸収されます。ちなみに膵液は、膵臓内では消化能力をもたない不活性な状態で、十二指腸に送られた時に初めて活性化します。
膵炎の症状とは-急性膵炎と慢性膵炎
膵炎は本来食べ物を消化する消化酵素が、膵臓自体を溶かしてしまう自己消化によって起こる病気です。膵炎には急性と慢性があります。
急性膵炎は、へその上からみぞおち辺りまでの上腹部に、急な強い痛みが起こります。お腹が板のように固くなるのも、急性膵炎の特徴です。痛みは次第に背中や左肩に広がり、吐き気・おう吐・発熱を伴うこともあります。急性膵炎は軽い腹痛程度でおさまるものと、全身に炎症が広がる重症のものがあります。重症の場合は、集中治療ができる病院への入院、治療が必要になります。絶食により、膵液を分泌させないよう、飲食を断つ必要もあります。
慢性膵炎も自分の膵臓を消化することで起こりますが、急性膵炎との違いは症状が徐々に起こる点です。急性と同様で上腹部に痛みが起こり、アルコールや脂質の摂取で特に痛みが強くなることがあります。慢性膵炎は長い期間に渡って炎症が続くため、慢性膵炎を患うと膵臓の機能が徐々に落ちていき、消化不良に伴う下痢、脂肪便、体重の減少、さらには糖尿病の症状が出ることもあります。
お腹の痛みが繰り返される初期の代償期(※1)から移行期(※2)にかけては、治療で膵臓の機能は維持されますが、さらに症状が進み、体重の減少が見られる非代償期(※3)になると、インスリンや消化酵素を補うことが必要になります。代償期のうちに、断酒や脂質を調整した食事、生活改善を行うことが大切です。
※1…代償期:お腹に激痛や鈍痛を繰り返し、膵臓の機能が徐々に失われていく時期。
※2…移行期:腰痛が軽くなる。治療によってまだ膵臓の機能は維持できる時期。進行を食い止めるには、治療と生活改善が必要!
※3…非代償期:膵臓組織の石灰化・線維化が進み、膵臓の機能がうまく働かなくなる時期。下痢や脂肪便になり、体重減少・糖尿病などの合併症も。
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