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前回のコラムはこちら。
膵炎の基礎知識と脂肪調整食について ②

今回は、膵炎の原因と食事で気を付けたい点についてです。

膵炎の原因

膵炎の主な原因は、アルコールの過剰摂取と胆石です。特に男性では、長期に渡る大量のアルコール摂取が元で起こる膵炎が半数以上を占めています。一方で女性は、アルコール性の膵炎は少なく、胆石によるものが1/3を占めると言われています。また、原因がよくわからない突発性の膵炎が見られることもあります。
アルコール性の膵炎の場合は、断酒が重要となります。胆石性の場合は、胆石が膵液の出口をふさいだり、傷付けたりすることがきっかけとなって起こる膵臓の自己消化が原因となるので、胆石を取り除く処置をすることもあります。

食事で気を付けたいこと

ここから食事についてのポイントに入ってきます。
基本となるのは、朝・昼・夕の規則正しい食事です。三食を規則正しくいただくのは、膵臓への負担の軽減につながります。暴飲暴食は控え、量は腹八分目がいいでしょう。また、よく噛んで食べることも大切です。
そして、できるだけ消化のいい食品を選ぶようにしましょう。消化がいいと胃での滞留時間が短くなるので、大量の胃酸の分泌を促すことがなく、刺激を押さえられます。三大栄養素では、炭水化物よりたんぱく質、たんぱく質よりも脂質のほうが、胃の滞留時間は長くなります。消化の悪い物は胃の中に留まる時間が長く、消化するための胃酸がたくさん分泌されます。それが刺激となり、膵液の分泌も促進されるため、膵臓への負担も大きくなってしまいます。
また、消化されにくいと言われる野菜の食物繊維に関して補足すると、食物繊維とはヒトの消化酵素で消化されない難消化性成分の総称で、食物繊維は消化管の中で分解・吸収はされないのですが、腸の運動を活発にし、便秘予防やコレステロールを下げ、胆石の予防にもつながるため、膵臓への負担はかからないと考えられています。ですから、食事に意識的に加えるのがいいですね。ちなみに、刺激の強い香辛料などは、できるだけ少ない方がよさそうです。

代表的な食材別の簡単な注意点

肉:脂肪分の多いバラ肉・皮は控えましょう。
魚介類:1日の摂取量の範囲で。ホタテ・エビ・イカは低脂質で高たんぱくです。青魚の脂質は体内で固まりにくく、血液中の中性脂肪やコレステロール値の調整をサポートする効果が期待できる不飽和脂肪酸です。
大豆製品:ヘルシーなイメージですが脂質は含まれています。豆腐は木綿より絹ごしの方が、水分が多いので低脂質です。
穀類:パンやうどんには、脂質や塩分が含まれています。臓器の負担にならないためにも意識的に減塩を心がけましょう。また、ご飯は症状に応じてお粥にするなど、消化を良くする工夫もいいでしょう。
乳製品:動物性脂質の摂り過ぎにならないように、無脂肪や低脂質のものを取り入れてみましょう。

1回の食事の脂質量を10g以下に

食事療法の際、1日の脂質量を減らそうと言われても、実際にはどうしたらいいかわからないことがあります。まずは1回の食事の脂質量を10g以上にしないよう、心がけることから始めてみましょう。
脂質は、茶碗一杯分の米飯(150g)には0.5g、6枚切り食パン1枚には2.6g含まれています。米飯か食パンかの選択で2.1gも違います。
主食が三食とも米飯なら脂質の摂取量は6.3gも違ってきます。脂質6.3gは、アジ1尾(正味80g:脂質3.6g)+豚ヒレ(70g:脂質2.6g)に相当する値です。ちなみにベーコンは1枚(18g)で、なんと7.0gもの脂質が含まれています。こう見ると結構な量ですよね。
また、調理方法にも気を付けたいところです。お勧めの調理法は、揚げないで焼く・ゆでる・蒸すなどです。脂質を減らすために、普段からドレッシングもノンオイルのものを使用し、かけないで付けて食べてみるなど、こまめな工夫をするとよいですね。

アルコールにも気を付けたい

お酒を飲まれる方はアルコールにも注意が必要です。アルコール換算で1日80g以上のアルコールを10年間以上摂り続けると、慢性膵炎を発症するリスクが高まると言われています。慢性膵炎の予防のためには、アルコール飲料の摂取は、アルコール換算で1日60~80gを上限にしましょう。

アルコール換算で80gの目安は以下の通りです。
ビール:中ビン4本
日本酒:4合弱
ワイン:グラス4杯(800ml)

医療機関を受診されている方は、必ず主治医に具体的な飲酒量を確認してください。また、連日飲まないようにすることも重要です。休肝日だけではなく、休膵日という意識も大切ですね。

参考文献:
・『慢性膵炎診療ガイドライン2015』日本消化器病学会
https://www.jsge.or.jp/files/uploads/mansei2_re.pdf
・『急性膵炎診療ガイドライン』日本肝胆膵外科学会
https://www.nanbyou.or.jp/pdf/048_i_guide.pdf
・『おかずレパートリー 胆石・胆のう炎・膵炎 体にやさしい67レシピ 食事療法おいしく続けるシリーズ』加藤眞三 女子栄養大学出版部 2017
・NHKきょうの健康 2017 6月号 NHK出版 2017
・NHKきょうの健康 2015 9月号 NHK出版 2015

 

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      1846日前

      Eatreat編集部です。本日のコラムは、前回に引き続いて、膵炎の基礎知識と脂肪調整食についてです。

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WRITER

膵炎の基礎知識と脂肪調整食について ②

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

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