栄養士の資格を取得後、新卒で給食委託会社に勤務。働きながら勉強し、管理栄養士の試験に合格した大越さんにお話をうかがいました。食品メーカーに転職されましたが、給食委託の経験が日々の仕事の役に立つこともたくさんあるそうです。
減量の経験から栄養士を目指す
私は高校生の頃、柔術というスポーツをしていました。柔道などと同じように体重で階級が分かれるので、試合の前には厳しい減量をしなければならないこともありました。それまではお腹がすいたときに食べたいものを食べるという感じで、食べ物を特に気にしたことはなかったのですが、この減量の経験をきっかけに意識が大きく変わりました。柔術というのはかなりの運動量がある競技です。その運動量を保つためにある程度しっかりと食べながら体重を減らすというのは、高校生にはとても難しいことでした。食べ方や食べる物をあれこれ工夫しているうちに、栄養や食について関心を持つようになったのが、栄養士を目指すきっかけになりました。
高校卒業後は専門学校に進学し、栄養士の資格を取得しました。最初は漠然とスポーツ栄養の分野で仕事がしたいと考えていましたが、就職先を見つけることは難しく、また、将来のことを考えたときに管理栄養士の資格はやはり必要になると思い、まずは受験資格となる3年間の実務経験のために給食委託会社に就職しました。
給食委託会社での仕事、管理栄養士試験合格まで
最初の配属先が新規オープンの病院だったせいもあって大変忙しく、仕事は早朝から夜まで続けての勤務になってしまうことも多くありました。休みも十分には取れなかったため、就職してからは本当に目まぐるしい日々でした。
勤務していた病院では、栄養士は栄養指導以外の給食に関わる業務をすべて受け持っていました。
献立、食材の発注、検品、調理、配膳、片付け、洗浄…と、一連の作業に責任者として関わっていたので、体力的にもかなり負担が大きかったですが、若い時にあれだけ現場で鍛えられたというのは自分にとって大きな財産になっていると思います。
ひたすら毎日の仕事をこなしていくうちに3年間が過ぎ、ろくに準備もできないままに管理栄養士試験を受験したのですが、不合格。その翌年改めてチャレンジし、2度目の試験で合格することができました。
2度目の受験の時は、仕事をしながらでしたので、とにかく短期集中で効率よくということを意識して勉強しました。3月の試験に向け、夏ごろから休日もすべて勉強時間にあて、職場の休憩時間には試験対策のアプリなども活用して時間を無駄にしないようにしていました。晴れて合格できた時は本当にうれしかったし、ほっとしましたね。
食品メーカーに就職
管理栄養士の試験に合格してから、転職活動を始めました。今までとは全く異なる業界に飛び込んでみたいと思い、食品メーカーに絞って探した結果、旭松食品に営業職として就職することができました。高野豆腐が有名な会社ですが、介護食にも力を入れているため、私も営業では様々な商品を扱っています。営業先も、流通、中食などのメーカー、病院、介護施設など多岐にわたります。
旭松の介護食のブランドに「カットグルメ」という業務向けの商品があるのですが、それを病院や施設に売り込みに行くときは、特に、給食の現場での経験がとても役立っています。実際に調理する人たちにとっての使い勝手などもよくわかるので、「この商品はこんな時に役に立ちます」、「こういった工夫をしているからおすすめです」など、説得力を持ってお話することができるんです。
また、会社の開発部に「ここをこうした方がお客様が使いやすくなります」などの提案をすることもあります。実際にその意見が取り入れられて商品化につながったこともあるんですよ。
栄養士から管理栄養士を目指す方へ
給食委託会社での勤務は、正直つらいこともたくさんありましたが、若いからこそできたことだとも思いますし、必ずその経験があとで役に立ちます。
仕事をしながらの管理栄養士試験の勉強は簡単ではありませんが、その資格があれば仕事の幅もぐんと広がりますし、将来の自分のビジョンに向かって諦めずに頑張ってほしいです。
私も学会などにブース展示で参加することもあるので、そこでの講演をしっかり聞くなど、意識して知識のブラッシュアップをはかっています。また、介護食を扱っているので、嚥下障害などについてももっと勉強していきたいですね。