スポーツの競技別の栄養・食事に関するシリーズです。
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難しい球技系スポーツ選手の身体づくり
瞬発力、パワーに加えて持久力とすべて必要とされる球技スポーツも、食事の影響が大きいですが、前回のボクシングや柔道(「④パワー、スピード&持久力を作る食事…ボクシング、レスリング、柔道など」参照)とはまた少し異なる部分があります。減量はありませんが、瞬発力が必要なため俊敏な身体づくりを要します。バレーボールのスパイク、テニスのショットなどは瞬発力と共にパワーが必要となります。
さらに試合時間を考慮すると、バレーボールなら1セット20~30分、3セットを行うと1時間半前後、5セットでは2時間半ほどの試合時間になります。テニスなら1セット30~40分なので、トッププレイヤーは2~3時間も試合が続きます(ソフトテニスの場合は、1試合30分前後)。したがってこれらは持久力も要するスポーツです。持久力をつけるために、十分なエネルギーを蓄える必要がありますが、体重が重すぎると動きにくくなります。また、パワーも必要です。
球技系は、すべてを兼ねそろえた体型と体力が必要となるため、食事の面でも栄養素をまんべんなく取らなければなりません。なかなか難しい身体づくりとなります。ここからは基本を押さえ、特に必要な栄養素を説明していきましょう。なお、球技系のスポーツ選手は、女子選手で2500~3000kcal、男子選手で3000~3600kcal程度が1日に必要です(体格や練習量によって摂取量は前後します)。
特に重視したい栄養素
①糖質&ビタミンB1
エネルギー源となる糖質、糖質を体内で利用できる形にするビタミンB1を摂ることで、スタミナが高まります。糖質はご飯、パン、麺類などです。甘い糖質は、吸収は早いですがすぐに空腹感が出やすく、また、体脂肪をつけやすいので控えるようにしてください。ご飯やパンでも、雑穀米・胚芽米・玄米・田舎パンなどの茶色いパンは、ビタミン・ミネラル・食物繊維も多く含んでいるのでお勧めです。ただし、その分消化吸収に時間がかかるため、よく噛んで食べることを意識してください。
練習や試合の時間が近い場合(1~2時間前)には、消化の良い白米や柔らかめのパンの方がお勧めです。ビタミンB1には糖質を燃焼させる役割があります。豚肉(特に赤身部分)や鰻、大豆をおかずにして食べると良いでしょう。主食に雑穀ご飯、おかずに玉ねぎやニラを加えた豚肉の生姜焼きという組み合わせは、代謝を高めるスタミナメニューです。
②たんぱく質&ビタミンB6
瞬発力のある良い筋肉は、良質なたんぱく質からできています。赤身の肉・魚介類・卵・大豆などをまんべんなく食べることが大事です。B6は赤身の肉・魚、青魚、レバー、バナナなどに豊富です。筋肉をつけたいからと言って、たんぱく質を一度にたくさん食べるのは効果がありません。1日3食+補食に分けて食べるのが、一番効率よく身体に取り込めます。1食あたり最大30gまで、補食なら20gまでのたんぱく質量が適当でしょう。
③カルシウム&マグネシウム
筋肉の収縮と弛緩をスムーズに行うには、カルシウムとマグネシウムです。カルシウムは牛乳・乳製品、小魚、葉物の緑黄色野菜、大豆などに、マグネシウムはゴマやナッツ類、海藻、葉物の緑黄色野菜などに豊富です。これらは1日に1:1くらいの割合で摂取できると良いでしょう。
動物性たんぱく質や加工食品、スナック菓子、ファーストフードなどを過剰に摂り過ぎると、カルシウムを体外へ排出してしまうので、注意が必要です。
スポーツ栄養の関連コラム
①スポーツ選手の食事の基本
②瞬発力&大きい筋肉を作る食事…投てき種目、ウエイトリフティングなど
③瞬発力&大きい筋肉を作る食事…スピードスケート(500m、1000m)、陸上短距離・跳躍、野球など
④パワー、スピード&持久力を作る食事…ボクシング、レスリング、柔道など
⑤瞬発力、持久力&パワーを作る食事…バレーボール、テニスなど
⑥瞬発力、持久力&パワーを作る食事…サッカー、ラグビー(バックスBK)、バスケットボールなど