2019年7月27日、28日の2日間、神戸国際会議場にて2019年度全国栄養士大会が開催されました。大会開催中は、全国から管理栄養士・栄養士が集い、幅広い分野の栄養に関する知見を広げる機会となりました。今回は前回に引き続き、大会で得た情報をノート式で皆さんにもシェアしたいと思います。
前回のレポートはこちら
第1日目の続き
◆講演:「栄養管理によるがん予防とがんとの共生、がん診療の最近の話題」
講師:藤田医科大学医学部 臨床腫瘍科教授 河田健司先生
要旨
・がんについては、がん対策基本法の中で、国民の責務が定められている。
〜がん対策推進基本計画〜
・WHOによるとがんの約40%は予防できる。
・ガイドラインには“塩分、過体重、やせ、果物と野菜不足、熱いものをとらない、との項目あり。
・頭頸部がんの治療を行なっている人についての注意点
➡喫煙者は口腔内血管が細くなっており、抗がん剤治療の効果が出にくい
➡喫煙者と非喫煙者では生存率に違いが出る
・肥満とがんの関係性は、子宮体がんが一番強い。
・米国のすべての州で2030年までに、肥満率(BMI30以上)が44%を超える見通し。
・肥満だとなぜがんになるか分かったのは6年前のことである。
・肥満➡慢性炎症➡サイトカインが出る➡がん発症というプロセス
・非乳がんBMI25未満の人を対象に、DHAとプラセボを投与し、肥満細胞の炎症が減るのでは?という研究があったものの、上手くいかなかった。
➡広い人を対象に簡便にがんを予防する方法は、今のところないようである。
・特定の栄養素をサプリメントで摂取するのではなく、やはり生活習慣の改善が必要。
・がんになった後でも、肥満、メタボリックがあることが予後に影響しているという論文がある。
・微小転移、潜在転移を栄養指導、生活習慣改善によって免疫力を高め、抑え込む可能性がある。
・乳がんと診断されたときに、血糖コントロールが良いと予後が良好。
・メトホルミンは肝臓での糖新生を抑制する。
➡炎症抑制、発がん作用抑制
・複数のがん、多発ポリープの人でメトホルミンを内服していると再発が予防された。
<再発率について>
糖尿病>非糖尿病
コントロール不良糖尿病>コントロール良好糖尿病
メトホルミン内服糖尿病=非糖尿病
・抗がん剤の種類によって蛋白結合率が異なる。
・蛋白結合率が高い抗がん剤は数%しか細胞に吸収されず、ほとんどはアルブミンにくっついて、血中をぐるぐる回る。
➡蛋白結合率が高い抗がん剤を、低アルブミン血症の患者に投与すると副作用が強く出るので、注意が必要。
・ガイドラインに当てはまらない患者さんは約4割いるため、EBMからPDCA(plan do check act)という動きがある。
・PDCAでは、視覚化・明文化を意識することが重要。
・ゲノム医療の検査が今後、保険適用になる。
第2日目
◆講演:AIやICTと管理栄養士、栄養士の働き方
講師:株式会社リンクアンドコミュニケーション 佐々木由樹先生
要旨
・AIの明確な定義はない。
・コンピュータ化、ロボット化のボトルネックとなる指標
➡知覚・操作、創造性、社会性
・人間の情報処理とは?
①機械的処理
②論理的処理
③情緒的処理
これを管理栄養士、栄養士業務に当てはめると、以下のようになる。
①アセスメント、エビデンス調査
②栄養指導の優先度決め、献立作成
③対象者に合った話し方、いかに食べてもらうか
<現在、AIを活用して出来ること>
・検診結果から将来なりうる疾患を予測する
・料理の写真から自動で栄養価計算できる
・推定:料理領域、メニュー、食材、重量
・エビデンス収集:栄養分野はまだなさそう
・エビデンスに基づいた意思決定の補助
・シェフワトソン;レシピの提案
・ミーニュー;1週間分の献立提案
・カロリーママ:アドバイスアルゴリズム、メニューマスターがD/Bに入っている
<栄養指導の近未来像(1〜5年くらい)について>
・AIが様々なことを管理・予測してくるため、ヒトはAIの提案を取捨選択して、対象者に合わせた話し方、提案をするようになる。
<近未来の管理栄養士、栄養士に必要なスキルとは?>
①情報判断する力
・許せる誤差なのか、妥当性研究を確認するべき。
・AIが結果を出してきた理由はブラックボックスのため、自分で調べることができる、読むべきポイントを知っていることが必要となる。
②話を聞く力
・現在のAIは言葉の意味自体を理解することができない。AIの自然言語理解は最後に取り掛かる分野と言われている。
③会話力、プレゼン力
・専門用語を分かりやすい言葉で具体的なイメージが沸くように話す。
まとめ「これからの時代をsurviveしていくために」
本大会では、普段なかなか聞くことのできない、「倫理」や「AI、IoT」などのお話を中心に聴講してきました。時代に合わせて柔軟に対応できる管理栄養士であり続けるたには、日頃から様々な準備が必要であると、感じることができた有意義な2日間でした。
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