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2019年7月13日、14日の2日間、駒沢女子大学にて第7回日本在宅栄養管理学会学術集会が開催されました。本学術集会では、2日間を通して、さまざまな講演のほか、複数の調理セミナーやフィジカルアセスメントセミナーなども開催されており、即実践に活かせる充実した内容となっていました。今回は、本学術集会で得た情報をノート式で皆さんにもシェアしたいと思います。

1日目

◆会長講演:歩み寄り~在宅におけるシームレスな関係づくり~

講師:駒沢女子大学人間健康学部 健康栄養学科 西村一弘先生

要旨
・西村先生の経歴と共に多職種とのつながり、諸先輩方の教えなどを紹介。
・歩み寄りでは、まず同職種連携が重要とのこと。

 

◆理事長講演:人に寄り添う「在宅訪問管理栄養士」「在宅栄養専門管理栄養士」をめざして

講師:武庫川女子大学生活環境学部 食物栄養学科 前田佳予子先生

要旨
・超高齢社会 医療、介護の再編;病床数の減少、フレイル対策などが実施されている。
・65歳以上の要介護者などの認定原因:男女総数 1位認知症、2位脳血管疾患、3位高齢による衰弱
・団塊世代が高齢者になる2025年を目指して地域包括ケアシステムを推進している。
・低栄養は、疾患の罹患率や死亡率の増加など生命予防に影響する。
・在宅訪問管理栄養士の現状と分析によると、栄養ケア・ステーションへの参加人数が少ない。
・エビデンスをつくる、活用することが重要。

 

◆特別講演Ⅰ:在宅緩和ケアにおける栄養管理

講師:こだま在宅内科緩和ケアクリニック 児玉佳之先生

要旨
・「在宅医療・在宅緩和ケアの質」が問題となっており、医療やケアの透明性や公開性はチーム医療で担保されるべき。
・がん患者のQOLを決定する因子 体重減少30%、栄養摂取量20%
・診療開始時からの栄養管理が必要。
・前悪液質から体重減少、食欲不振あり。
・大腰筋を鍛えておくことで、亡くなる直前まで歩ける体づくりができる。

<がん悪液質に対してわかってきたこと>
①運動による抗炎症作用。
②脳への影響としてナラティブであり、褒めることでよい方向へ向かう。

・進行してきたがんに対する栄養:BCAA、Lカルニチン、coQ10、ビタミンB1、n-3系脂肪酸などを摂取するなどして、好気性解糖が正常細胞の中で機能するような栄養管理をする。

<病院と在宅との地域連携の促進>
①在宅という選択肢があることを病院側が提示する。
②在宅での経過を病院・関係者が共有できる機会を作る。

・亡くなる1-2か月前から急激に医療・介護依存度が上がる。
・客観的な状況を変えるのが治療(キュア)であるのに対し、主観的な想い・願い・価値観を変えるのを支えるのがケア。
・症状コントロール、治療を行うことで、経口摂取が可能なケースもある。

<がんの嚥下障害の特徴>
・口腔乾燥症(放射線など)
・口腔カンジダ症(ステロイドなどの影響)
・口内炎・味覚障害(薬剤)
・易出血
・嚥下に関する筋肉の消耗(サルコペニア)
・予後2週間程度に出現する嚥下障害

・EORTC QLQ-C15-PAL(がん患者用のQOL測定スコア)の紹介。

<将来に向けた栄養療法における課題>
①市民(介護者)に対する知識の啓発、摂食嚥下、口腔ケア、誤嚥性肺炎、サルコペニア、在宅医療。
②在宅視点の栄養指導。

<在宅における栄養管理で大事なこと>
①チームで患者の「食」を支えること。
②QOLで評価する。

◆特別講演Ⅱ:地域高齢者等の栄養・食生活支援の推進に向けて管理栄養士に期待される役割

講師:厚生労働省健康局健康課 栄養指導室 塩澤信良先生

要旨
・介護報酬の他に、「介護予防・日常生活支援総合事業」という事業が存在する。
・要支援の人は介護報酬ではなく、総合事業で通所介護に対する算定がとられる。
・市町村によって内容が異なるので、対象の市町村の総合事業内容をチェックすること。
・通所介護、通所型サービスB、通所型サービスCに対し、共食の場にて適切な栄養管理がされた配食が提供されることを目的としている。
・2019年6月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」において、「個々の住まいや地域の共食の場における適切な栄養管理に基づく配食サービスについて、先行事例分析やモデル実証事業等を通じて、2019年度から推進する。」と示されている。
・また、2019年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019~「令和」新時代:「Society5.0」への挑戦~」の中でも、「健康寿命延伸プランの推進」「産学官連携による健康増進に向けた取組」「2020年の栄養サミット」などについて示されている。
・「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、高齢者のフレイル予防も視野に入れて検討。
・2019年度は、食事摂取基準の活用に関して、管理栄養士等の保健・医療・介護関係者向けの研修と、自治体でも活用可能な高齢者向けのフレイル予防の普及啓発資料の作成等を予定している。
・管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)の改定に当たって、「複雑困難な個別案件や地域の栄養課題に対し、栄養の専門職としてエビデンスやデータを基に、論理的思考により、最適解としての栄養管理をいかに打ち出していけるか、それを多職種連携の中で論理的に提案できるか」という考え方より、今後の管理栄養士に期待する具体的な像が書かれているので、参考になるのではないか。

後編に続く

 

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      1936日前

      Eatreat編集部です。本日は先月開催された「第7回日本在宅栄養管理学会学術集会」についてのレポートです。ノートを取り切れなかった方、必見です。

      拍手 1

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WRITER

第7回日本在宅栄養管理学会学術集会に参加して①

横原 夢見

病院勤務を経て、現在はフリーランスとして専門学校の非常勤講師、コラム執筆、地域活動などを行っています。

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