甘味料メーカ―に務めるイートリスタ沢目晃誠さんが、甘味料やロカボについて解説するシリーズです。今回は、エリスリトールについて説明します。
ご存知ですか?糖アルコール
甘い飲み物やゼリーなどでカロリーゼロや糖類ゼロを謳う商品を購入したことはありませんか?
前回のコラム「植物由来の甘味成分について【ステビア、甘草、羅漢果】」では高甘味度甘味料が一役買っていることを書きましたが、今回は影の主役でもある「エリスリトール」という「糖アルコール」について、ご説明したいと思います。
そもそも「糖アルコール」とは、どういったものでしょうか。
まず、甘い物と言えば炭水化物が思い浮かぶと思いますが、これは糖質と食物繊維の総称です。
少しややこしいですが、【糖質】の中に「糖類」も含まれています。
その糖質を簡単に分類すると以下の図のような形になります。
糖アルコールは【糖質】に含まれます。代表的なものではガムや歯磨き粉に広く使用される「キシリトール」や、リンゴの蜜に含まれている「ソルビトール」などがあります。
糖アルコール類の特徴として、砂糖(スクロース)と比較すると
・低エネルギー
・う蝕性が低い(虫歯菌のエサになりにくい)
・甘さが弱い
といったことが挙げられます(一部例外の物質もあります)。
カロリーゼロの甘味
次に糖アルコール類に属する「エリスリトール」について、より詳しくご紹介します。
エリスリトールは主に植物中のでんぷんが酵母により発酵を受け、生成される物質です。
自然界ではきのこやワイン、納豆や日本酒といった食品に含まれており、日常生活の中で知らず知らずのうちに口にしたことがあるのではないかと思います。
甘味度は砂糖(スクロース)を100とすると、少し弱く70~80程の甘さを持ちます。
また甘さの質は同じ糖アルコール類に属するキシリトールのように、口に入れるとスーッとした冷涼感があり、キレの良い甘さが特徴です。
最も特徴的なことは、甘さを呈する物質ですが、カロリーゼロというところです。この特徴から低カロリー食品に広く使用されています。
消化酵素とエネルギー
さて、なぜエリスリトールはカロリーゼロなのでしょうか。そもそも食物を摂取し、それをカラダに吸収し利用するためには消化酵素が必要です。
消化酵素とは、たとえばでんぷんであればアミラーゼ、たんぱく質であればペプシンと言ったものです。
エリスリトールの体内動態は次の図のような流れになります。
一度体内に吸収されますがその後はエネルギーとして利用されず、大部分がそのままの形で尿中に排泄されます。
このことからエリスリトールは唯一、カロリーゼロの糖アルコールとして消費者庁からも認められています。
また血糖値やインスリン分泌に影響が無いことも報告されており、多くの低糖質食品にも使用されています。
代替甘味料を上手に取り入れよう!
昨今、海外では砂糖税やソーダ税というものも始まっており、WHOでも添加された砂糖の摂取量を減らすべきとの声明も出されています。
今回ご紹介したエリスリトール以外にも、砂糖に代わる甘味成分は多数存在しています。
前回の記事でもヒトの生活に【甘味】というものは欠かせないということを書きましたが、糖尿病や肥満などの生活習慣病が増えている時代だからこそ、上手に代替甘味料を使用し、美味しく満足感のあるダイエットを長く続けることで健康を維持していただきたいと思います。
ちなみに、糖アルコールは食べても酔っぱらうことはありませんので、ご安心ください(笑)
参考文献
栄養学雑誌 第56巻 奥 恒行 低エネルギー糖質甘味料・エリスリトールの体内代謝と食品への応用
前橋健一 甘味の基礎知識
消費者庁 食品表示法別添資料 栄養成分等の分析方法等
関連コラム
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・①糖の役割と糖質カットについて
・②トレハの活用法 - 「作り置きにはトレハ!」