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他のビタミンと比べると、あまりなじみのない「ナイアシン」。補酵素としてさまざまな代謝に関わっていることをご存知でしょうか。
今回はナイアシンとはどんな栄養素でどのような働きをしているのか、過剰摂取や摂取不足による健康へのリスクなどについて解説します。

ナイアシンとはどんな栄養素?

ナイアシンはビタミンB群の一つで、主にニコチン酸とニコチンアミドの総称です。ニコチン酸は植物性食品から、ニコチンアミドは動物性食品から摂取できます。
また、アミノ酸の一つであるトリプトファンからも体内で合成され、トリプトファン60mgに対してナイアシン1mgが作られます。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、トリプトファンの摂取量を考慮した上で、ナイアシンの基準値が設定されています。
また、日本食品標準成分表2020年版(八訂)では、ナイアシンのほかにナイアシン当量が収載されています。ナイアシン当量は、トリプトファンからナイアシンが作られる分を加味した数値となっています。

体内ではどんな働きをする?

ナイアシンは、炭水化物や脂質などが代謝されるときに必要な栄養素です。ナイアシンは、体内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という物質に生合成されて、代謝に必要な酵素をサポートする補酵素として働きます。
また、アルコールの代謝にも関わっており、NADはアルコールを代謝する過程で作られるアセトアルデヒドを分解する酵素の補酵素にもなっています。
その他、DNAの合成や細胞分化などにも関わっています。

どんな食品に多く含まれているか

ナイアシンは、動物性食品だと魚介類や肉類のレバーに含まれます。魚介類の中でも特にかつおやまぐろに豊富です。植物性食品では、きのこ類であるえのきたけやエリンギ、種実類であるピーナッツやアーモンドに含まれています。 ナイアシンはトリプトファンからも合成されるため、良質なたんぱく質を摂取していれば、同時にナイアシンも摂取することになります。トリプトファンの多いものとして、魚や乳製品、卵などが挙げられます。

 

過剰摂取や摂取不足による健康への弊害

日常の食生活で過剰摂取による健康への弊害はまずありません。一度に大量に摂取すると、血管が拡張し皮膚が赤くなることがあります。また、大量にとりすぎることで、消化器症状や肝機能障害などが引き起こされることがあります。
摂取不足による欠乏症も、日本ではあまり見られません。慢性的に不足すると、皮膚炎や下痢、神経障害を起こすペラグラという病気になります。また、アルコール依存症の方で、ナイアシン不足による欠乏症状が出ることがあります。

管理栄養士から伝授!ナイアシンを食事から上手にとるコツ!

ナイアシンは、熱や酸、アルカリなどに対して強いビタミンであるため、比較的摂取しやすいことが特徴です。トリプトファンからナイアシンが作られる際には、ビタミンB6をはじめとしたビタミンB群の働きが必要になります。そのため、バランスよくビタミンB群を摂取することが大切です。一つの食品に偏らず、さまざまな食品をとること、主食・主菜・副菜がそろった食事を心がけることが大事でしょう。

 

参考文献
・厚生労働省:「「日本人の食品摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書」、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html、(閲覧日:2023年4月26日)
・吉田企世子・松田早苗:「正しい知識で健康をつくるあたらしい栄養学」、髙橋書店、(2021)
・上西一弘:栄養素の通になる第5版、女子栄養大学出版部、(2022)


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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      503日前

      宮﨑奈津季さんが解説する栄養素辞典シリーズ。第19回目は「ナイアシン」です。

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WRITER

宮﨑 奈津季

女子栄養大学栄養学部実践栄養学科卒業。 介護食品メーカーで営業に従事した後、独立。 料理動画撮影やレシピ開発、商品開発、ダイエットアプリの監修、栄養価計算などの経験あり。 現在は、特定保健指導、記事執筆・監修をメインに活動中。 Chatwork、Slack、Zoom、Wordpressなどの使用経験あり。

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