脂溶性ビタミンの一つでもあるビタミンA。にんじんなど色の濃い野菜に多く含まれているイメージが強いかと思いますが、体内ではどのような働きをしているかご存知ですか? 今回はビタミンAの働きから、過剰摂取や摂取不足による健康へのリスクなどについて解説します。
ビタミンAとはどんな栄養素?
ビタミンAは脂溶性レチノイド類の総称です。体内でビタミンAとして働くものは約50種類あることが知られており、代表的なものはレチノールやα-カロテン、β-カロテンなどです。
ビタミンAは種類により利用効率が異なります。レチノールの吸収率は70~90%で利用効率が高いです。対してβ-カロテンは必要に応じてレチノールに変換されビタミンAとして働くため、吸収率とレチノールへの変換率を考慮すると、利用率はレチノールの1/12とされています。
食事摂取基準では、これらの特徴を考慮し、ビタミンAの数値をレチノール活性当量で示しています。
体内ではどんな働きをする?
ビタミンAは、目の網膜で光を吸収するたんぱく質であるロドプシンの構成に欠かせない成分です。結膜や角膜にも関与しており、視覚や目の健康を守るために重要です。
また、皮膚や粘膜の健康維持にも働いており、粘膜の乾燥や細菌の感染を防いでいます。
さらに、細胞を正常に分化させることにも関わっているため、子どもの成長にも欠かせない栄養素です。
近年では、β-カロテンに抗酸化作用があることから、アンチエイジングやがん予防に効果があるのではないかと期待されています。
どんな食品に多く含まれているか
野菜などの植物性食品には、ビタミンAはカロテン類として含まれています。カロテンは色素成分であるため、色の濃い野菜(にんじんや春菊、ほうれん草、かぼちゃなど)に多いのが特徴です。また、海藻類にも多く含まれています。海藻類の中でも焼きのりや青のりなど乾燥しているものは、少量でも多くのビタミンAを摂取できます。
動物性食品には、主にレチノールとして含まれています。レチノールは肝臓に蓄積されているため、豚や鶏肉、牛のレバーに多いです。その他、うなぎや卵黄にも多く含まれています。
過剰摂取や摂取不足による健康への弊害
ビタミンAは体内で主に肝臓に蓄積され、過剰に摂取した場合過剰症になることがあります。過剰症の主な症状は、頭痛や吐き気などです。また、妊娠初期だと胎児に影響する可能性があります。過剰症は通常の食事ではほとんど起こりませんが、サプリメントからの摂取や、ビタミンAが多いレバーなどの食べ過ぎに注意しましょう。
ビタミンAが不足した場合、薄暗いところでものが見えにくくなる「夜盲症」を発症します。また、皮膚や粘膜が乾燥し、感染症にもかかりやすくなります。
管理栄養士が伝授!ビタミンAを上手に食事からとるコツ!
動物性食品に含まれるビタミンAは、吸収率がよく利用効率もよいです。一方、植物性食品に含まれるビタミンA(カロテン類)は、利用効率は動物性食品に比べると劣りますが、抗酸化作用などさまざまな働きを持つ成分を含んでいます。そのため、どちらかに偏るのではなく、両方をバランスよくとるようにするとよいでしょう。
また、ビタミンAは脂溶性のため、炒め物や油を使ったドレッシングをかけるなど、油と一緒にとることで吸収率をアップすることができます。
参考文献
・厚生労働省:「「日本人の食品摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書」、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html、(閲覧日:2022年2月15日)
・厚生労働省「ビタミンA」、eJIM、https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/13.html、(閲覧日:2022年3月14日)
・吉田企世子・松田早苗:「正しい知識で健康をつくるあたらしい栄養学」、髙橋書店、(2021)
関連コラム
・栄養素辞典③「脂質とは?」
・栄養素辞典④「食物繊維とは?」