不足すると味覚障害が起こるとされている「亜鉛」。どのような働きをしている栄養素かご存じでしょうか。
今回は亜鉛が体内でどのような働きをするのか、過剰摂取や摂取不足によるリスク、食事から上手にとるコツについて解説します。
亜鉛とはどんな栄養素?
亜鉛は微量ミネラルの一つで、体内に約2gほど含まれ、骨格筋や骨、皮膚、肝臓などに存在しています。男性の場合、前立腺に最も多く含まれているという報告もあります。
食事から摂取した亜鉛は、腸で吸収されます。吸収率は約30%とされていますが、鉄や銅の摂取量や亜鉛の吸収を阻害するフィチン酸などによって変動します。
体内ではどんな働きをする?
亜鉛は、数多くの酵素の構成成分「補酵素」として、体内の重要なプロセスに関与しています。たんぱく質の合成や細胞の生成をすることに関わっており、体の成長に必要な栄養素です。
また、ホルモンの合成や分泌にも関係しています。例えば、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの合成には、亜鉛が必要不可欠です。
それ以外には、免疫機能や性機能の発達と維持、味覚の維持などにも寄与しています。
どんな食品に多く含まれているか
亜鉛の多くはたんぱく質と結合して存在していることから、たんぱく質を含む食品に多く含まれています。特に魚介類では牡蠣、肉類では牛肉の赤身や豚レバー、ラム肉などに多いです。植物性食品では、玄米や胚芽米、大豆製品である納豆などにも含まれています。そのため、菜食主義者の方では亜鉛不足が見られます。これは、亜鉛を多く含む肉類をとらないことや、亜鉛の吸収を阻害する栄養素の多い豆類や穀類を多くとるからだと考えられています。
過剰摂取や摂取不足による健康への弊害
亜鉛の過剰摂取については、通常の食事をとっている場合、あまり見られません。ただし、サプリメントなどで多量、継続的に摂取すると、銅や鉄の吸収が阻害され、貧血を引き起こすことがあります。また、銅の吸収阻害によりSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)の活性が低くなることがあります。その他、胃の不快感やめまい、吐き気、HDLコレステロールの低下も報告されています。
摂取不足では、細胞の生成やたんぱく質の合成が低下することで、子どもでは発育が著しく遅れることがあります。特に思春期では性的な発達の遅れ、成人男性では性機能の低下、妊婦では胎児の成長不良を招く可能性があります。また、細胞の新陳代謝が悪くなることで味覚障害や皮膚炎が起こったり、感染症に対する抵抗力が落ちたりすることも報告されています。
管理栄養士から伝授!亜鉛を食事から上手にとるコツ!
亜鉛は、動物性食品に多く含まれているため植物性食品に偏った食事をとらなければ問題ありません。たんぱく質源となる食品として、肉や魚介類などバランスよくとることが大切です。加工食品の中には、亜鉛の吸収を阻害する添加物が使われていることがあるため、頼りすぎないように気をつける必要があります。また、極端なダイエットで食事量が少なくなると、亜鉛が不足しやすくなるので注意しましょう。
参考文献
・厚生労働省:「「日本人の食品摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書」、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html、(閲覧日:2023年8月9日)
・厚生労働省:亜鉛、「統合医療」に係る情報発信等推進事業eJIM、https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/12.html、(閲覧日:2023年8月9日)
・吉田企世子・松田早苗:「正しい知識で健康をつくるあたらしい栄養学」、髙橋書店、(2021)
・上西一弘:栄養素の通になる第5版、女子栄養大学出版部、(2022)
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