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栄養素辞典⑮「鉄とは?」

赤血球の成分として全身に酸素を運ぶ栄養素である鉄。食事やサプリで意識してとっている方も多いのではないでしょうか?
鉄がどんな働きを体内でしているのか、過剰摂取や摂取不足によるリスク、食事から上手にとるコツについて解説します。

鉄とはどんな栄養素?

鉄は体内に3~4gほど含まれており、このうち約70%は血液中、4%は筋肉に存在し「機能鉄」と呼ばれています。残りは肝臓や脾臓(ひぞう)、骨髄に存在しており「貯蔵鉄」と呼ばれていて、機能鉄が不足すると使われます。
食品中の鉄は動物性食品に多く含まれているヘム鉄と、植物性食品に含まれている非ヘム鉄に分けられます。非ヘム鉄よりもヘム鉄のほうが吸収されやすい形になっています。

体内ではどんな働きをする?

鉄は酸素の運搬を行っている栄養素です。たんぱく質と結合して、赤血球の成分であるヘモグロビンを構成し、肺で取り込んだ酸素を全身の細胞に送り届けています。また、血液中の酸素を筋肉に取り込むミオグロビンの成分としての働きもあります。

どんな食品に多く含まれているか

吸収率の良いヘム鉄は、動物性食品に多く含まれています。中でも、鶏や豚のレバーに多く含まれており、これは肝臓に鉄が貯蔵されているためです。また、脂肪分の少ない赤身肉である牛ヒレ肉にも多いです。魚介類では赤身の魚であるカツオやマグロ、シジミやアサリなどの貝にも多く含まれています。
植物性食品では小松菜や菜の花などの青菜に多く含まれており、これらには鉄の吸収を高めるビタミンCも含まれています。その他、納豆や厚揚げなどの大豆製品、のりやひじきなどの一部の海藻類でもとることができます。

栄養素辞典⑮「鉄とは?」

過剰摂取や摂取不足による健康への弊害

鉄は吸収率が低く、体内には必要以上に吸収されない仕組みとなっているため、通常の食事で過剰摂取になることはありません。しかし、サプリメントなどで過剰に摂取し続けると、嘔吐などの胃腸症状や鉄沈着症を引き起こすことがあります。
摂取不足の場合、赤血球の生成に必要な鉄が不足するため、酸素が全身に供給されず鉄欠乏性貧血になります。症状としては疲れやすくなったり、頭痛や動悸、息切れ、食欲不振などの症状があらわれることがあります。また、鉄の必要量が多い成長期や妊娠期、月経異常などにより出血を伴った場合は不足しやすくなります。

管理栄養士から伝授!鉄を食事から上手にとるコツ!

鉄は吸収されにくい栄養素ですが、ビタミンCは鉄の吸収を助けてくれます。鉄を効率よく摂取するために、ビタミンCを含む食品と一緒にとるとよいでしょう。ビタミンCは動物性食品にはほとんど含まれていないため、レバーをパプリカやブロッコリーと一緒に炒めるといったように、動物性食品と植物性食品を組み合わせるのがおすすめです。
また、肉や魚を選ぶときは赤身の多いものを選ぶとよいでしょう。あさりやしじみは調理しやすいので、味噌汁の具として定期的に取り入れてみるのはいかがでしょうか。

参考文献
・厚生労働省:「「日本人の食品摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書」、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html、(閲覧日:2022年9月12日)
・厚生労働省:鉄、e-ヘルスケアネット(厚生労働省)、https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-022.html、(閲覧日:2022年9月12日)
・吉田企世子・松田早苗:「正しい知識で健康をつくるあたらしい栄養学」、髙橋書店、(2021)
・上西一弘:栄養素の通になる第5版、女子栄養大学出版部、(2022)

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      503日前

      宮﨑 奈津季さんがご紹介する栄養素辞典のコラムシリーズ、第15回目は「鉄」についてです。

      拍手 0

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WRITER

栄養素辞典⑮「鉄とは?」

宮﨑 奈津季

女子栄養大学栄養学部実践栄養学科卒業。 介護食品メーカーで営業に従事した後、独立。 料理動画撮影やレシピ開発、商品開発、ダイエットアプリの監修、栄養価計算などの経験あり。 現在は、特定保健指導、記事執筆・監修をメインに活動中。 Chatwork、Slack、Zoom、Wordpressなどの使用経験あり。

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