これまで2回にわたり、「日本人の食事摂取基準2020年版」についてご紹介しました。
連載記事の一覧はこちらをご覧ください。
最終回は、その活用法についてご紹介します。
「日本人の食事摂取基準」活用の基本的な考え方
私たちの健康の維持・増進、生活習慣病の発症予防および重症化予防のために「食事摂取基準」を用いる場合は、PDCA サイクルに基づく活用が基本となります。
まず、食事摂取状況のアセスメントにより、エネルギー・栄養素の摂取量が適切かどうかを評価します。食事評価に基づき、食事改善計画の立案(Plan)、食事改善を実施し(Do)、検証(Check)を行います。検証を行う際には、食事評価も合わせて行うようにします。その結果を踏まえ、計画や実施の内容を改善(Act)します。
食事摂取状況のアセスメントは食事摂取基準と比較して行う
エネルギーや栄養素の摂取量が適切かどうかを評価するためには、食事調査によって得られる摂取量と、食事摂取基準の各指標で示されている値を比較することによって行うことができます。
ただし、エネルギー摂取量の過不足については、BMI(成長期は成長曲線)または体重変化から評価します。
中学生(13歳・男性)を例に見てみましょう。
1日の摂取エネルギーは少ないように見えますが、実際には成長曲線や体重変化を見て評価します。
推奨量は、指標となる値付近もしくはそれ以上、目標量は指標となる範囲であることが望ましいとされています。
食事調査では「過小・過大申告」と「日間変動」が伴う点に留意する
食食事調査によって得られる摂取量には、必ず測定誤差が伴います。
食事調査には、「食事記録法」「24時間食事思い出し法」「陰膳法」「食物摂取頻度法」「食事歴法」「生体指標」などの方法があります。
「食事記録法」は、対象者が自分で摂取した食物を調査票に記録する方法で、丁寧に実施できれば精度が高いといわれていますが、長期間の調査が必要であり、対象者の負担が大きく、やる気や能力に結果が依存しやすいといった点もあります。
中でも、摂取エネルギーの「過小申告」は出現頻度が高いとされています。
また、血液や尿などから栄養状態を評価する「生体指標」は、「過小・過大申告」の誤差は起こりませんが、空腹時、運動後、喫煙後など「日間変動」の影響を受ける場合があり、限られた栄養素のみしか測定できません。
それぞれの食事調査法の特徴を知り、目的や状況に合わせて選択する必要があります。
まとめ
「日本人の食事摂取基準2020年版」は、私たちが健康を保つためにどんな栄養素をどれくらいとったらよいのかを示したガイドラインです。
その活用は、PDCAサイクルに基づいて行うことが基本です。
年齢や目的、生活環境、臨床症状や臨床検査値などにも配慮しながら活用しましょう。
参考文献
・日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf、(閲覧日:2022年9月16日)
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