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新型コロナウイルスが流行してから、現地参加とWEB参加が可能になった本学術集会です。学会は2024年1月26日(金)〜1月28日(日)の3日間の開催で、私自身は2日目から現地参加をしてきました。学会では教育講演を中心に聴講してきましたので、聴講した講演の中からいくつかを要旨形式で皆さんにも共有します。日々の業務などのヒントになれば幸いです。

シンポジウム:“栄養管理・栄養指導でのAI及び情報通信機器の活用と課題”より

◾️「デジタルデバイスを使用した遠隔栄養指導の実際」駒沢女子大学 人間健康学部健康栄養学科 西村一弘先生

令和4年度診療報酬にて 情報通信機器などを用いた外来栄養食事指導の評価の見直しがされた。
外来栄養食事指導料1と2両方において、初回から情報通信機器を用いた食事指導において算定が取れるようになった。

<電話での栄養指導の実践報告>
電子カルテを確認しながら、電話にて栄養指導を行った。
医師の指示箋のみでの指導は危険。

―電話で難しかった点ー
・嚥下機能評価は難しい
・資料などは見せられない
・調理指導も口頭のみになる
・患者さんの表情からの情報が読み取れない

◾️「地域在住高齢者を対象とした食生活モニタリングアプリを活用したフレイル対策への取り組み」東京都健康長寿医療センター東京都健康長寿医療センター研究所 本川佳子先生

日本国内のフレイル・プレフレイルの割合:フレイル8.7%、プレフレイル40.8%
さまざまな栄養素(タンパク質、ビタミン類など)の摂取不足がフレイルリスクを増加させる。
地中海食、賢明な食事パターンは、フレイルのリスクが低いとの研究結果があるが、海外の研究のため国内では食事の多様性スコア(10に分類した食品のスコア)が、フレイル発症の指標として有効な可能性がある。理由としては、エネルギー比が高く、ミネラルの摂取が多いことなどが関与していると考えられる。
食品摂取の多様性スコアを画像診断からモニタリングをするアプリを作成中。
管理栄養士による食品摂取多様性スコアデータの作成をしている。8400枚+αの画像上の情報を元に作成されている。
来年にはプロトタイプを作成予定。

教育講演:食塩摂取の生理学

愛知医科大学医学部 内科学講座糖尿病内科 森下 啓明先生

Naは血漿浸透圧になる。
<ナトリウムバランスの調節>
・レニンアンジオテンシンアルドステロン系
 血圧を上げるのに関係する経路
 塩味の感度が低下する(→塩辛いものでも食べれるようになってしまう)
・ナトリウム利尿ペプチド系
 ナトリウムの排泄増加とともに水を排泄させて循環量を減少させる
・抗利尿ホルモン系
 バソプレシンに働きかけて、水の再吸収を増加させてナトリウムの濃度を薄める
・物理的因子、尿細管糸球体フィードバック
 血管を拡張させて尿量を増加させる

食塩摂取による健康障害の高血圧はDASH食+減塩による降圧効果あり。
日本人の場合、食塩摂取が1.0g/日増加すると、BMIが0.28増える。
減塩にて、睡眠時無呼吸症候群が改善した。
食塩摂取量増加で2型糖尿病のリスク、認知症のリスクが上がる。
WHO推奨の減塩目標は5g/日。
新型コロナウイルスの自粛期間中に最も多く食べたメニューTOP3(AJINOMOTO調べ):ラーメン、カレー、パスタ

低Na血症の治療の必要性:脳卒中予後における低Na血症はよくない。
高齢者全般において、低Na血症はよくない。骨粗鬆症の原因にもなる。
―低Na血症の治療の基本―
・水分量の制限
・塩分の負荷(10g/日)
この2つでコントロールできないなら内服を検討する。
(低Naがない脳卒中予後における水分摂取は予後がよい)

教育講演:糖尿病と脂質異常 ―高中性脂肪血症の意義―

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科 西尾 善彦先生

2型糖尿病における冠動脈疾患の危険因子として、HbA1cよりもLDLやTGの方が寄与力が高い。
LDLを下げても、TGが高いと新血管イベントリスクが高まる。
HDLが低い場合、TGが高いことが関係している。
VLDLは、アポタンパクとTGで構成されている。
糖、アルコール、脂肪が原料となり、肝臓でVLDLが合成される。
VLDLは、LPL(酵素)によりTGが溶かされLDLになる。LDLは、ステロイドホルモンや肝臓の胆汁酸、細胞膜などの原料として、LDL受容体を介して取り込まれる。
LVDLは中性脂肪の運搬役。
HDLは余ったコレステロールを肝臓に戻す役割。
LPL(リポプロテインリパーゼ)は、インスリンによって活性化されるので、インスリンの効きが悪いと活性が下がる。
LDL受容体に問題があってもLDLが貯まる。
VLDL、LDL両方高まるときは、肝臓でのVLDL産生が高まっている状態。

<高VLDL(TG)対策>
・VLDLの分解を促すことがターゲット
・LPLの活性を高める
・インスリンの働きを良くする→血糖コントールを良くする
・フィブラーと系薬剤を使用する
・オメガ3(魚油)をとる

<高LDL対策>
・肝細胞内のLDL量を減らしてあげれば、取り込む量が増える
・スタチン、エゼチミブ、レジンを内服する

・VLDLが多くなると、HDLが減り、超悪玉のsd(スモールデンス)LDLも増える。

―糖尿病患者の脂質代謝異常の特徴―
食べ過ぎ、インスリン抵抗性、インスリン不足により、肝臓でのVLDL産生の亢進、末梢でのLPL活性の低下が起き、LDLが増加し、血中VLDLが増加し、レムナントも増加する。結果としてHDLが減少し、sdLDLが増える。

さいごに

今回は、2日間の学会参加にて聴講した講演の内、抜粋で聴講レポートを共有させていただきました。
ひとつでも気になるトピックスがあれば、ぜひご自身で調べてみてくださいね。学びが深くなると思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。


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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      60日前

      管理栄養士の横原夢見さんにご紹介いただく、第27回日本病態栄養学会年次学術集会の参加レポートです。

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WRITER

第27回日本病態栄養学会年次学術集会 参加レポート

横原 夢見

病院勤務を経て、現在はフリーランスとして専門学校の非常勤講師、コラム執筆、地域活動などを行っています。

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