今回は、フリーランスの管理栄養士として活躍中の野口友美さんにお話をうかがいました。
ダイエットがきっかけで栄養に目覚める
私が管理栄養士を目指したのは高校2年生の時です。ダイエットをきっかけにして、栄養素についての本を見ていたら楽しくなり、そこから管理栄養士という資格があることを知りました。元々料理を作ることが好きで、せっかく作るなら美味しくて体によいものを作りたい、食べながら健康な体を作っていきたい、そのために管理栄養士の資格を取ろう、と思ったのです。
当時、私はコース制の高校に通っており、文系を選択していたため理系の授業はほとんど受けていませんでした。管理栄養士の学部は理系のため、受験が厳しいのではと一時不安になりましたが、文系科目と理系の選択科目でなんとか大学受験を乗り切りました。
子供たちの食事を大切にしたいという思いから保育園へ
大学では将来の進路に向けて臨床栄養、スポーツ栄養、地域栄養、フードマネジメント、食品開発といった各分野の勉強を自分で選択してより深く学んでいきます。その中で私は臨床栄養を選択し、病院への就職を考えていました。しかし、卒業研究で食物アレルギーの研究をしたことがきっかけで、子供の食事に興味を持つようになり、保育園への就職へと進路変更をしました。
保育園では管理栄養士の設置義務がないため、管理栄養士での採用という枠はほとんどなく、大半が栄養士採用でした。正直なところ、大学の先生方からは管理栄養士としての就職を勧められますが、私は管理栄養士として就職をすることには特にこだわりがありませんでした。それよりもせっかく苦労して、たくさん勉強をしてきたのだから(恐らく人生で一番勉強をしたのが大学時代です)、やりたい道に進みたい、その思いが強くありました。
管理栄養士の仕事は分野にもよりますが、一人仕事で型にはまった業務をしていくイメージがありました。しかし実際は自分の動き方次第で仕事の幅を広げ、自分のやりたいことを実現していけるものだと感じました。
食を通して子供たちの健康を支えたい、子供の食事はその子が将来大きくなる時に必ず体に反映されてきます。だからこそ子供たちの食事を大切にしたいと考え、保育園の栄養士になりました。
保育園の栄養士の仕事内容とは?
保育園の栄養士の主な仕事内容は、献立作成と調理です。私は主に離乳食とアレルギー対応の子供の食事を担当していました。献立は季節感や行事食を取り入れて、各年齢の発達に合わせた食事形態で作成します。子供たちが料理やその手伝いをするイベントの企画、給食だよりの発行など食育にも力を入れて取り組んでいました。
食品会社でのお客様相談室での経験
その後、某食品会社へ転職し、そこではお客様相談室のお仕事に携わりました。このお客様相談室は商品の質問などの他に、商品を絡めた栄養相談を受けることから、栄養士以上の資格が必要でした。電話という相手の顔が見えない環境で、また、短い時間の中でも、いかに相手の気持ちをくみ取りながらお客様と会話を進められるか、お客様が満足いく回答をすることができるかが大切でした。さらに、新規の流動食部門の相談窓口の開設にも携わったことで、現在の介護の実情と課題、家庭でのケアの方法などを学びました。
特定保健指導のポイントは課題の発見
また、結婚後には在宅で特定保健指導のお仕事もさせていただきました。具体的にはメールでのやりとりで、「食材5色バランス健康法」という食生活改善法をコンセプトに、お客様の食生活改善をサポートしていくものです。お客様の現在の問題点、課題を的確に見出し、ライフスタイルに合わせた改善方法をアドバイスすることが重要でした。
相手の方の食への興味・関心が少しでも増えた時感じるやりがい
そして、現在は育児をしながらフリーランスで仕事をしています。仕事の内容は一食500Kcalの献立を提案する料理教室や離乳食の料理教室、レシピ・メニュー開発、食育ワークショップの開催などです。
いくつかの仕事を経験してきましたが、どの仕事でも共通して提供した食事、食の情報を相手の方が笑顔で受け取ってくれた時はとても嬉しく感じます。そして、相手の方の食への興味関心が少しでも増えた時には、きっと将来の健康に繋がってくれると思い、管理栄養士としての知識を持っていてよかったな、この仕事をしてよかったなと仕事へのやりがいを感じます。
最後に一言
飾らないけど大切に、丁寧に作る“家庭の味”を皆さんが持てるように、そのお手伝いをする管理栄養士になりたいです。舌が覚える家庭の味はその人の食習慣を作る味です。その食習慣はその人の体、健康を作っていきます。だからこそ家庭の味を大切に作って欲しいと私は考えています。
管理栄養士の仕事は多岐に渡っています。それ故、選択肢で悩むこともあるかもしれませんが、自分がやりたい道にぜひ進んでください。また、管理栄養士の世界は狭く、一般的にはまだまだ給食のイメージが定着しているように感じます。そのイメージが払拭できたらいいなと思います。
野口友美さん、ありがとうございました。