今回は、一般社団法人母子栄養協会の代表理事として活躍中の管理栄養士、川口由美子さんにお話をうかがいました。
栄養士を目指したきっかけは…
高校生の時は理系だったのですが、全く成績があまり良くなかった私は、「お母さん(主婦)になるのに、大学なんて必要なのかな?」と疑問に思いながら過ごしていました。そのような中で、「それなら母になることがプラスになるような仕事ってなんだろう」と考えるようになり、家の中にあるものひとつひとつを見回してみました。「この先もずっと存在して、結婚して家庭を持った時に、役立つものはなんだろう?」そうして出てきた答えのひとつが「食べ物」でした。
その後、女子栄養大学に入学してすぐ、縁あって渋谷の離乳食レストランでのアルバイトをすることになりました。その時にいろいろなお母さんと接している中で、離乳食をもっと深く勉強し続ければ、母親になっても役立つだろうなと思うようになりました。
その後、迷わず小児栄養学研究室に入り、「乳児の身体発育と歴史的相関」について調べ始めました。戦後すぐの家庭雑誌などを読み、そこに書いてある離乳食の進め方を調べる作業は、私の興味をとても大きくかきたてました。大変意外なことに、戦後米のとぎ汁を飲んでいたような乳児であっても、1歳までの発育には大きな差が見られなかったという結果が出てしまいました。この研究はライフワークとして今後も研究し続けたいと思っています。
就職は育児用品メーカーへ!
その後、育児用品メーカーに入社しベビーフードを開発していました。とはいえ、総合職だったため、最初は何をするかわからないままの入社でした。入社試験で、「もし総務や人事だったらどうしますか?」との問いかけに、「はい。それでも私はお母さんの声や生産の声を聞き続けて、メモをとり、いつか開発できる日まで書き続けます」と答えて執念での合格だったと思います。(笑)
でも実際は開発に配属されても、食品加工などについて知らないことばかりで、上司の方々にはかなりご迷惑をかけ、大変お世話になりました。またそこでマーケティングの勉強をさせていただいたのも、今の私にとても役に立っているため、感謝しております。
それからしばらくして会社を退社し、保健所でアルバイトをしたり、医療用医薬品の広告代理店系の企業で執筆業をしていたりしたこともありました。どれも私にとってはなくてはならない経験で、すべてが糧になっています。保健所でお会いしたお母さんたちのひとりひとりが、私にとっては先生のような存在であったと思います。
家庭と仕事との両立ができる働き方に感謝
現在は一般社団法人 母子栄養協会の代表理事に就任し、「日本の食卓をもっと元気にもっと笑顔に」をモットーとし、日本のママ達が育児を楽しくなるようなお手伝いができたらいいなと思っております。
私は、大学生時代に病院で朝ごはんをつくるアルバイトもしていました。当時は管理栄養士といえば病院のイメージが強かったため、就職の前にアルバイトしてみたのです。働いてみたところ、私が目指すところとは少し異なると思い、メーカー経験を踏まえて独立しようと思った経緯があります。その望みどおり、今のような働き方ができることは家庭と両立しやすいという点からも、よかったと思っています。
母親としての私と代表理事としての自分を両立できるのはとてもありがたいことです。例えば子供のために料理したものを撮影し、それが仕事でそのあと食べることができるというのは、幸せなことだなと思います。
管理栄養士・栄養士を目指す人に向けて一言
皆さんの可能性は無限大だと思います。目の前の困っている人にやさしく寄り添えるような栄養士さんが増えたらいいなと思います。
また、なんでも「知ってるつもり」にならないように、いつでも発見できるような心のゆとりを持ち続けていけると、さらに成長していくかと思います。日本の食卓がもっと笑顔になるように、寄り添った声がけを、一緒にがんばっていきましょう!