朝日新聞社が実施したネット調査によると、テレワーク経験者の34%が「体重が増えた」また、52%が「運動量が減った」と回答するなど、テレワークの導入による健康課題が浮き彫りになっています。健康課題の一つであるテレワークによる体重増加、いわゆるテレワーク太りは、なぜ起こったのでしょうか。
テレワークの急増
政府は従来から働き方改革の一環として、時間や場所を有効に活用でき柔軟な働き方を可能とするテレワークの普及を推進してきました。しかし、総務省の令和2年通信利用動向調査報告書によると、企業のテレワークの導入率は、平成8年に8.5%、令和元年に20.1%と、増加傾向にあるものの普及しているとは言い難い状況でした。
ところが、令和2年情報通信白書の報告では、緊急事態宣言の対象7都道府県におけるテレワークの導入率は、3月の17.2%から、緊急事態宣言中の4月には38.8%と急増しました。コロナ禍によって、テレワークの導入は急激に進みました。
通勤・移動時間の減少はプラス効果だけ?
突然のテレワークの導入によって、セキュリティなどの対策を優先せざるを得ず、自身のライフスタイルの変化による健康面への対策を、落ち着いて考える余裕がなかった方も多いのではないでしょうか。
国土交通省の令和元年度テレワーク人口実態調査では、53.4%の方が「通勤・移動時間が減った」ことをテレワークのプラス効果として回答しています。
確かに通勤・移動時間の減少は、通勤のストレス・疲労を軽減し、さらに時間的な余裕が生まれるなどのプラス効果がみられます。しかし、通勤・移動時の歩行量が減少することで、健康を維持するための運動量も減少するという、マイナス効果があることを忘れてはいけません。
たかが通勤、されど通勤
では、テレワークによって失われた通勤時の消費エネルギーは、どれくらいでしょうか。
例えば、体重60㎏の人の場合、通勤時の歩行時間が20分程度だと往復で約140kcal消費します。週5日勤務をした場合、1週間で約700kcalものエネルギーを消費していたことになります。おにぎり1個分(ご飯100g)のエネルギーは、約160kcalですから、通勤時の消費エネルギー量を無視することはできません。
消費エネルギーが減少したにもかかわらず、運動や日常生活での活動量を増やすことなく、今までと同じように食べていると体重は増加します。特に運動習慣のない方にとっての通勤・移動時間は、貴重な運動時間であったといえるでしょう。
テレワーク太りは誰でも起こる?
テレワークを行った全ての人が、テレワーク太りになるわけではありません。
空き時間に運動を行った人、外食や飲み会などの機会が減少した人、自炊時に野菜の摂取量を増やし食事のバランスが改善した人、夕食時間を早めた人などでは、体重が減少するケースも多くみられました。
一方で、運動量が減った人、間食が増えた人、インスタントやレトルト食品の利用が増えた人、麺類やご飯ものなどの炭水化物に偏った食事をしている人、食事の時間や回数が乱れた人などでは、テレワーク太りを起こすケースが多くみられました。
このようにテレワーク太りを起こす原因には、急激に変化したライフスタイルへの対応の遅れがあります。一時期のような混乱が落ち着いた今こそ、自身の健康について考え、ライフスタイルの変化に柔軟に対応をしていく必要があるでしょう。自分の健康を守るためにも、生活習慣を見直すことが大切です。
参考文献
・総務省 令和2年度情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/pdf/02honpen.pdf(閲覧日:2021年3月15日)
・総務省:令和元年 通信利用動向調査報告書(企業編)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR201900_002.pdf(閲覧日:2021年3月15日)
・国土交通省:平成31年度(令和元年度)テレワーク人口実態調査-調査結果の概要-
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001338554.pdf(閲覧日:2021年3月15日)
・朝日新聞:【労働時間減り、体重と食費増えた 在宅勤務でネット調査】
https://www.asahi.com/articles/ASP1H7HTTP16UZPS007.html(閲覧日:2021年3月15日)
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