熱中症予防with新型コロナウイルス
今年の上半期は新型コロナウイルスの流行により、誰もが予想しなかった事態が次々と起こりました。そしてこの夏は、感染予防のためのマスク着用による熱中症への警戒が、例年よりも高まっています。夏日となる日が増えた今、あらためて熱中症予防のポイントをお伝えしたいと思います。
水分補給が大切な理由
私達の身体は気温や運動によって体温が上昇すると汗をかいて放熱し、常に36~37度の適正な体温を維持するようになっています。しかし熱中症により身体が脱水状態になると、熱の放散に必要な体内の水分がなくなってしまいます。すると体温は高温の状態が続いて身体の細胞のたんぱく質が変性し、脳や臓器に障害が起こり、やがて死に至ります。
ゆで卵を思い浮かべてみてください。温度の上昇で変質したたんぱく質は元には戻りませんよね。私達の身体の細胞のたんぱく質も同じなのです。そのため、熱中症予防では水分補給が大きなポイントとなります。普段体内の水分は摂取量と排泄量で調整されていますが、汗をかく量が増えるとさらにその分の水分補給が必要となります。
また、体内の水分は体温調節だけでなく、栄養素や老廃物の運搬、体液の濃度や浸透圧の調整など、生命の維持に大変重要な働きもしています。中でも体液の濃度や浸透圧の調整にはナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウムといった多くのミネラルが関係しているので、水分だけでなくミネラルの補給も必要です。熱中症対策としてミネラルを含む飲み物が推奨されることがありますが、基本的に食事からミネラルを摂取していれば、水やカフェイン含有量の少ないお茶(麦茶やルイボスティーなど)でも十分かと思われます。
水分補給のポイント
水分補給は、一度にまとめて飲むよりもこまめに飲んだ方が良いということは、広く知られています。補給する水分量には、さまざまな情報がありますが、年齢や体質などを考慮しながら、個人に合った量をとる感じで良いと思います。しかし、熱中症のリスクが高い子供と高齢者には、周りの人が意識して水分補給をすすめることが大切です。先程もお伝えした通り、食事から適度に塩分やミネラルが摂取できていれば、水分補給は水やお茶などで十分です。ちなみに、カフェイン含有量の多いコーヒーや紅茶、緑茶などやアルコール類は利尿作用があるため、水分補給には向いていませんので注意が必要です。
また激しい運動時や高熱時の水分補給は、スポーツドリンクなどのミネラルの吸収が良い飲み物がおすすめです。スポーツドリンクは一般的には0.1~0.12%ほどの塩分と他に糖分も含まれています。そのため、日常生活レベルであれば、スポーツドリンクを常用することは塩分や糖分の過剰摂取につながるため、あまりおすすめしません。常用するのであれば、半分に薄めて飲むなどの工夫をしてみましょう。また、暑い季節には冷たい飲み物がほしくなりますが、冷たい飲み物ばかり飲むと身体を冷やしてしまいます。冷房が効いている場所で過ごす場合は、常温の飲み物の方が身体には優しいでしょう。
水分補給以外の大切なポイント
熱中症の予防には日ごろの生活習慣も大きく関わっています。現代では職種によっては生活リズムがまちまちとなり、体内時計のリズムが乱れやすいです。すると交感神経と副交感神経のバランスも崩れ、免疫力の低下につながってしまいます。免疫力を高めることが熱中症予防となり、さらに新型コロナウイルス感染予防にもなると思われるので、十分な睡眠時間や充実した食生活を大切にしましょう。
今日からできる!免疫力アップのための食生活
最後に、免疫力を高めるために今日からできる食生活の4つのポイントをご紹介します。
➀朝食を食べましょう。
体内時計のリセットの鍵ともなる朝食は、免疫力アップのためにも欠かせません。
②たんぱく質のおかずを毎食いただきましょう。
毎食、片手の手の平分(50g~80g)のたんぱく質を食べましょう。たんぱく質は私たちの身体の細胞を作り出す素材となります。たんぱく質を毎食一定量食べることで低栄養の予防にもなり、免疫力アップにつながります。
③毎回食事の中で食材の色を5色以上揃えましょう。
食材の色を5色揃えると緑黄色野菜や海草類などが加わりやすくなり、自然とビタミン類やミネラル類の摂取ができて免疫力アップにつながります。
④旬の食材を意識して食べましょう。
旬の食材はその時期に必要なビタミン類やミネラル類が豊富なので免疫力アップにつながります。夏が旬の緑黄色野菜や薬味に使われる野菜には、夏に必要なビタミン類、ミネラル類が豊富で、熱中症の予防に最適な食べ物がたくさんあります。
食生活による免疫力アップは熱中症予防だけでなく、コロナウイルス感染予防にもつながります。➀~④を意識しながら毎日の食事を楽しみつつ、十分な水分補給を心掛けていきましょう。
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