• COLUMN

汗をかきやすい時期になると、脱水状態から起こる熱中症が心配されますが、糖尿病患者の場合は季節に関わらず、脱水になりやすいことをご存知でしょうか。糖尿病と脱水の関係を知って、適切な水分補給のポイントを整理していきましょう。

糖尿病になると脱水を起こしやすい!

糖尿病になると次のような理由から脱水を起こしやすくなります。

○尿量が増える
血糖値が高い状態が続くと、それを薄めるために血液の水分量が増えます。すると、増えた水分を排出するために尿の量が増え、脱水を起こしやすくなります。

○汗の量が調整しにくい
糖尿病の合併症として神経障害が起こると、汗を調整する神経が鈍り、汗を異常にかいて脱水を起こしやすくなります。反対に汗をかきづらくなることもあり、その場合は体温調節がうまくできず熱中症にかかりやすくなります。

○治療薬の影響
糖尿病の治療薬にSGLT2阻害薬という種類の薬があります。この薬はグルコースの再吸収を阻害し、尿へ糖の排泄を促す仕組みで血糖を下げるのですが、糖とともに水分も排泄されるため、尿の量が増えます。

このような糖尿病がもたらす脱水の特徴を理解して、血糖を良好にコントロールしていきましょう。そして、必要に応じて水分補給を行い、脱水を予防していくことが大切です。

水分補給のポイント~量の目安とタイミング~

では、1日に必要な水分補給の目安量はどのくらいなのでしょうか。一般的に、成人が1日に消費する水分量は約2.5リットルなので、1日でこの量を補給することが必要です。このうち、体内で作られる水分量が約0.3リットル、食事から摂る水分量が約1リットルあるため、水分補給としては約1.2リットルが必要です。これに加えて、汗や尿の量に合わせて適宜補給をしていきます。

水分補給は、一度に多量に摂ると体内で利用されずに排出されてしまうため、こまめに摂ることが大切です。また、糖尿病の患者さんはのどの渇きに気がつきにくいため、1日の中で水分補給をするタイミングを決めると確実な脱水予防につながります。例えば、コップ1杯(150ml)を1日8回、起床時、3回の食事、入浴前、就寝前に必ず摂るようにして、残り300mlを日中の合間に飲むようにすると、適切な水分摂取ができます。

水分補給のポイント~飲み物の選び方~

3回の食事をきちんと摂った上で、水分補給は水やお茶を選ぶことが基本ですが、水分補給にはどういった飲み物を選ぶとよいのでしょうか。甘い清涼飲料水には主にブドウ糖、ショ糖、果糖など分子の小さい糖質が含まれており、血糖値の急激な上昇を引き起こすため、おすすめできません。しかし水分だけでなく、電解質が不足することで脱水が引き起されることもあり、次のような症状がある場合は糖質と電解質を補うことも必要です。

・体調不良などで食事を摂ることができない
・下痢や嘔吐がある
・多量に汗をかく
このような症状がある場合は、電解質と適度な糖質を補うことができる「経口補水液」を選ぶようにしましょう。

糖尿病であっても基本的な水分補給のポイントは変わりませんが、血糖コントロールの状態や治療薬の種類など、治療状況に応じた水分補給を意識していきましょう。

 

関連コラム
糖尿病ってどんな病気?
糖尿病の方への指導 -より効果的な時間にするために-
外出自粛中の食事の工夫 ④糖尿病編




コメントを送ろう!

「コメント」は会員登録した方のみ可能です。

みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      1399日前

      Eatreat編集部です。水分補給の量の目安とタイミングなどのポイントが勉強になりそうです。

      拍手 0

WRITER

おさえておきたい糖尿病患者の水分補給のポイント

薦岡 ともよ

卒業後は痩身教室での栄養指導業務に従事。10~80代までの女性のべ200人ほどとカウンセリングを行い、食生活のヒアリングや食事指導・運動指導を行いました。 ダイエット目的ではなく健康を目的とした栄養指導を行いたく、転職。 転職後、運動施設や院内薬局併設の糖尿病治療を主とした内科医のもとで、生活指導に重点をおいた生活習慣病治療に携わり、食事指導・糖尿病教室実施のほか、MRによる勉強会や学会にも多数参加。 現在は、産業保健における健康管理に携わり、企業および健康保険組合とともに栄養改善に取り組む。特定保健指導は現在6年目に入り、のべ500人以上の社員と面談を行いました(情報提供・動機付け支援・積極的支援)。 企業・健康保険組合とともに、健康経営の一環として、食堂メニュー改善、全事業所への健康情報提供、栄養セミナー、栄養相談などを実施。健康診断結果の改善につなげています。会員向けサイトや健康情報サイトでの健康情報やレシピ開発、調味料メーカーでのレシピの栄養計算(ホームページ、書籍、Facebookなど)も。 プライベートでは一児の母で、地域施設にて離乳食座談会、離乳食講座などを実施しています。 保有資格 管理栄養士、日本臨床栄養協会認定サプリメントアドバイザー、THP産業栄養指導者 母子栄養指導士、妊産婦食アドバイザー、離乳食アドバイザー、幼児食アドバイザー

薦岡 ともよさんのコラム一覧

関連タグ

関連コラム

"栄養の知識・食育"に関するコラム

もっと見る

ログインまたは会員登録が必要です

会員登録がお済みの方

ログイン

まだ会員登録をされていない方

新規会員登録

ページの先頭へ