今回は注目の栄養素「オメガ3系脂肪酸」について、イートリスタの鈴木菜美さんが解説します。
オメガ3系脂肪酸とは?
脂質は炭水化物、たんぱく質と並ぶエネルギーを生み出す栄養素の一つですが、構造的な違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の二つに分かれます。
飽和脂肪酸は常温で固体であり、摂りすぎると体内に蓄積しやすいものです。また、不飽和脂肪酸は常温で液体であり、細胞膜を作るのに必要なコレステロールやリン脂質の材料であることやホルモンのもとになるなど、さまざまな役割を担っています。
不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。そして多価不飽和脂肪酸は、二重結合の位置によって「オメガ6系( n-6系 脂肪酸」と 「オメガ3系 (n-3系 )脂肪酸」 などへとさらに分けられます。
「オメガ6系脂肪酸」には、 リノール酸、γ─リノレン酸、アラキドン酸などがあり、日本人が食品から摂取するn-6系脂肪酸の98%はリノール酸で、植物油が主な摂取源です。一方、「オメガ3系脂肪酸」 には、αリノレン酸、DHA、EPAなどがあり、α-リノレン酸は植物油、EPAやDHAは魚介類が主な摂取源です。
リノール酸やαリノレン酸などは体内で作る事ができず、食物から摂る必要があるため、必須脂肪酸と呼ばれています。今回はこちらの中でもオメガ3系脂肪酸について解説をしていきます。
オメガ3系脂肪酸に期待できる効果
オメガ3系脂肪酸は血管の柔軟性を保ち血液をサラサラにすることから、動脈硬化を予防でき、中性脂肪の減少や血圧降下、血栓予防などの効果があると言われています。動脈硬化の抑制は、脳卒中や心臓病の予防が期待できます。
また、脳の神経細胞膜の構成に重要な役割を果たしているため、うつ病や認知症予防・改善などにも効果があると言われています。さらに、体内の炎症を抑えて、アトピーや喘息、花粉症などのアレルギー疾患の軽減にもつながることも期待されています。
新たに注目され始めていること
最近では、妊娠希望の方や妊婦、母親、赤ちゃんの健康にも役立つことが分かってきました。海外の研究によってEPAやDHAを含む食事やサプリメントの摂取量が高い女性ほど、妊娠や出産率が高いということが明らかになったのです。精子の活発な動きにも関与しているため、男性にも必要な栄養と言えます。
また、妊娠中の母親がオメガ3系脂肪酸を摂取するほど、赤ちゃんの湿疹や喘息などのアレルギー性疾患の発生率を低下させる可能性や、出産後のうつ予防の有効性も示唆されています。
参考文献
・日本糖尿病学会 編・著 糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版
・知識ゼロからの健康オイル 井上浩義 2016
・最強の妊活! オメガさと子 2019
・やせたければ「いい油」オメガ3を摂りなさい 南雲吉則
・厚生労働省ホームベージ 平成30年度国民健康・栄養調査報告
・厚生労働省ホームページ 生活習慣病予防のための健康情報サイト(e-ヘルスネット)
・農林水産省ホームページ 政策情報 「食品の安全確保」
・妊娠うつ病予防に対すω3系脂肪酸の可能性 臼田謙太 郎ら
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/54/9/54_KJ00009468870/_pdf/-char/ja
・日本人の食事摂取基準(2020年)
関連コラム
・栄養素辞典 栄養素について知ろう③「脂質」とは?
・「今日からできる認知症予防のための食生活」第1回開催
・誰もが気軽に食事について学べるようにしたい!鈴木 菜美さんインタビュー