昨今、新型コロナウィルスの影響や働き方改革の一環として、多様で柔軟な働き方への関心が高まっています。それに伴い、特定保健指導も直接顔を合わせず実施できるオンライン面談の需要が年々増えていると感じます。
前回のコラムでは、オンラインツールを使用した特定保健指導が、より実施しやすくなるよう改正された特定保健指導の実施基準についてお伝えしました。連載2回目の今回は、オンラインツールを使用した際のコミュニケーションの取り方についてお伝えします。
相手を把握するのは言葉だけではない
人間の脳は話されている言葉に注意を払うと同時に、直接対面した際に相手の様子を観察し、非言語的な手がかりからも無意識にさまざまな意味を読み取っているといわれています。
例えば、「相手が自分の方をまっすぐ向いているか」「話をしながらそわそわしていないか」「どんな呼吸の仕方をしているのか」などです。 こうした手がかりは、相手の全体像を把握するうえでとても役に立ちます。
しかし、オンラインの場合はこうした手がかりが伝わりにくくなります。さらに、画面に肩から上だけしか映っていなければ、手の仕草やボディランゲージを確認しにくくなり、画質が低い場合は、相手のちょっとした表情から気持ちを読み取ることが難しくなってしまいます。
今回の改正ポイント①
厚生労働省より示された「情報通信技術を活用した特定保健指導の実施について、現行制度からの見直し」では、今回2点の改正が加わりました。
1点目は「ビデオ通話が可能な情報通信技術を活用した初回面接におけるグループ支援の実施を可能とする」という内容です。
もともと初回面談に関しては、個別では対面・オンライン両方の指導が認められていましたが、グループ指導(対象者2~8人)では対面での指導が原則とされていました。
しかし今回の改正では、コロナ禍の現状を鑑みて、集団でのオンライングループ指導が可能となりました。
オンライン面談で重要視したいこと!
また、メラビアンの法則(※1では、こちらからの情報が相手に与える影響について、身だしなみ・表情(視線)などの視覚情報が55%、声の質・大きさ・速さ(テンポ)などの聴覚情報が38%、話す言葉そのものの意味はわずか7%といわれています。
オンライン面談ではこちらから情報提供をする際、この93%を占める視覚情報、聴覚情報が直接対面する場合と比べて伝わりにくいため、言葉でのアプローチが一層重要視されます。
資料を指差して「あれ」「これ」で伝わっていたことも、詳しく言葉にしないと伝わりませんし、誤解を生む可能性もあるので注意が必要です。
(※1メラビアンの法則は、1971年にアメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した概念。「感情や気持ちを伝えるコミュニケーションをとる際、どんな情報に基づいて印象が決定されるのか」ということを検証したもので、その割合を示している。
オンラインでコミュニケーションを上手にとるには①
非言語的な手がかりがない分、オンライン面談ではとにかく言葉や視線、仕草、表情を普段よりもわかりやすく、そして大きく表現する必要があると感じます。
例えば、何かを肯定する時は大きく頷いて「それはいいですね!」と笑顔を作ってハキハキと答えたり、相手が話しているときは少し大袈裟に相づちを打っていれば、聞いているのかいないのかわからないと不審に思われることもありません。
視線もずっと合わせたままだと普段はうっとうしく感じてしまいますが、オンラインの場合は画面越しのため、じっと相手を観察しても気になりにくいと思います。
オンラインでコミュニケーションを上手にとるには②
また、オンラインだと直接対面するよりも顔がズームされることから、お互いの表情が目立ちます。下を向いて資料を見ていたり、ちょっとした無表情が悪目立ちし、相手によい印象を与えない可能性があります。真顔で資料を見ていると怖い印象を与えやすいため、なるべく笑顔を心掛けると良いですね。対面より伝わりにくいからこそ、大事な話ほど感情を込め、表情を作って話すよう心がける必要があるでしょう。
最後にオンライン面談をする際は、PCのカメラの向きに注意することも大切です。カメラを下に付けて顔を映すと、自然に上から目線に写ってしまう場合もあるので、注意すると良いですね。
参考文献
・メビアンの法則 医療法人社団平成医会:https://heisei-ikai.or.jp/column/mehrabian-law/
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