私は法人内に保育園2園、保育士養成施設1校を有する私立の学校法人に勤務しています。保育園栄養士として保育園に勤務する傍ら、4年前から保育士養成施設講師として保育士の養成に関わっています。18歳以上の学生を対象として「子どもの食と栄養」という科目を担当しています。
大切にしていること① 学生の興味関心を引き出す
保育現場で働いていると、保育士の先生方から食に関する質問や相談を受ける場面が多々あります。その際、「食の大切さを就職してから知った」「学生の頃にもっと栄養学について学んでいたら」という声をよく耳にします。食育は保育において非常に重要な一分野ではありますが、やはり保育士を目指す学生にとっては保育活動が興味関心の主となっていることが大半です。私自身、学生時代は統計学にあまり興味を持てず苦手意識がありましたが、就職後にその大切さを実感しました。保育学生たちには保育現場のリアルを踏まえて、わかりやすく実践的な栄養学の授業を心がけています。
年度のはじめには、必ず学生自身の食事や健康について扱うことから始めます。卒業後、就職に伴って学生自身の生活も大きく変わります。新卒の保育士の中には仕事に慣れるのに必死で自分の食生活がおろそかになってしまう人が少なくありません。まずは自分自身が健康でいられることが、仕事の充実にもつながることを伝えています。また、保育学生は将来母親となる若い女性も多いため、保育現場だけでなく母となってからも役に立つ食の知識も織り交ぜる工夫をしています。
大切にしていること② 実践に近い形を体験させる
授業では栄養素の知識だけでなく、食育、食物アレルギー、食中毒など幅広い分野を扱います。現役保育園栄養士としての経験が、ここでとても役に立っています。肥満児へのアプローチや食物アレルギー児の誤食、発達障害児への給食対応など、実際に保育現場で起こった事例をもとに、学生たちには常に「自分ならどのように対応するか?」を考えさせるようにしています。
また食育計画の授業の際、「みんなでカレー作りをしたいけれど小麦アレルギーの子どもがいた場合はどうするか?」、「発達段階の異なる異年齢の混合クラスで実施する際にはどうやって安全性と活動の満足度を両立させるか?」といったいくつかの分野をまたいだ問題提起をすることで食育活動と保育活動をリンクさせ、より広い視野を持てるよう工夫しています。
保育施設における食育は栄養士だけの努力では限界があり、保育士の先生方の理解や協力があってより深まることを現場で身をもって感じています。臨地実習から帰ってきた学生が、「給食の時間っていろんな気づきがありますね」と言ってくれたことがありました。将来保育士となる卵たちに給食を単なる栄養補給の時間ではなく、保育活動や子どもの成長発達の一場面として大切にしてもらえるよう試行錯誤の毎日です。
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