私が公認スポーツ栄養士として活動する現場の一つに、大学の部活動における栄養サポートがあります。「公認スポーツ栄養士としての私の仕事現場 ~前編~」はこちら。
大学生アスリートへのサポートは、これまでバスケットボール、野球、ラグビーなど球技系のスポーツを多く担当してきました。これらは、長時間継続して体を動かす持久力と、瞬間的に大きなパワーを発揮する瞬発力の両方が求められる競技です。また、選手同士が激しく接触することもあるため、当たり負けしない強い体づくりをすることも大切な要素といえます。
大学生アスリートへの指導とはどういった仕事なのか
「インカレ優勝」「リーグ昇格」といったチーム全体の目標を達成するために、選手個人の「体重増減」「コンディション維持(体調不良や故障を起こさない)」などを栄養面からサポートします。
サポート内容は、単発の栄養セミナーのみ依頼される場合もあれば、長期間にわたる継続的なマネジメントを担当する場合もあります。継続サポートになると、定期的に練習現場へ出向いたり、メールなどでやりとりしたりすることもあります。
私が現在継続サポートを行っているのは、都内にある大学のバスケットボール部です。
コロナウイルスの流行以降は、大学や試合会場への立ち入りが制限されるようになったため、栄養サポートはほぼ遠隔で行っており、ミーティングや個別面談はオンラインで実施しています。
必要な知識やスキル
大学の部活動は、比較的自由に楽しめるサークル活動に比べ、「本格的にやりたい」「成長したい」といった高い意識で取り組む場合がほとんどなので、選手自身が競技をする上で必要な知識をしっかりと身につける必要があります。
強豪校の出身で、すでに栄養指導を受けてきた選手もいる場合もあるため、こちらもより質の高いものを提供できるよう、栄養学だけでなくトレーニングや競技特性など、スポーツそのものに関する知識も十分に備えてサポートすることが求められます。
また、大学は教育現場なので競技と学業を両立させながら取り組んでいかなければなりません。部活動を通して人間関係を学んだり、卒業して社会に出た際に役立てられるような経験を積むなど、教育効果も考える必要があります。
大学生ならではの課題
大学生というと、1人暮らしを始めたり、授業によって通学時間が違ったり、夜遅くまでアルバイトをするなど生活リズムや食事が乱れやすくなる時期です。中でも、朝の欠食や日中にカップ麺で小腹を満たす学生は、部活動に取り組む選手の中にも散見されます。
私がサポートしているチームでは、役割分担として選手の中にも栄養管理担当を決め、朝食摂取や補食の大切さを自分達でも呼びかけたり、おのおのの食事写真を共有して選手同士でフィードバックする機会をつくったりしています。
大学生活の中で望ましい生活習慣を身につけ、なおかつ試合に勝つための強い体をつくっていけるように工夫しています。
仕事のやりがい
シーズン最後の試合が終わって4年生が引退する際に、個別でメッセージをくれたりします。「栄養サポートのおかげでケガなく力負けせず乗り切れました」など、感謝の気持ちをもらえると大きなやりがいを感じます。昨季は選手の中に看護学部の学生もいたので「部活で身につけた栄養の知識を今後は医療現場で役立てていきたい」との言葉もあり、とても嬉しく思いました。
活動自粛により大会開催やサポート体制も難しい状況が続いていますが、選手の成長が大きな励みになる素晴らしい仕事だと思っています。
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