自分では気が付きにくいものの、家族や会社の同僚などの反応から「もしかして…」と悩んでいる人も多い「口臭」。しかし、その多くはセルフケアで解決できるものです。
口臭のおもな原因は歯や舌の汚れ
口臭の原因には様々なものがありますが、最も多いのは歯や舌の汚れと言われています。舌の表面に白っぽくたまった「舌苔(ぜったい)」や歯に付着している「プラーク」の中には、歯周病菌など多くの細菌が含まれています。これらの細菌が、口の中の食べカスなどを分解する時に、揮発性の硫黄化合物や脂肪酸、アンモニアなど、いわゆる“臭いにおい”の成分を生じます。口腔ケアが不十分で起こるむし歯や歯周病でも、特有の口臭が起こります。したがって口の中の環境を清潔に保ち、細菌が生じるにおいをコントロールすることが口臭改善の王道と言えます。
「歯みがき」そして「舌みがき」をしっかりと
口臭改善・予防は、毎日のケアが基本です。歯みがきは基本的には毎食後行い、汚れをきちんと取り除きましょう。
歯みがきをしっかりしている人でも忘れがちなのが「舌みがき」です。ガーゼや舌用ブラシなどを使い、歯みがき後に1日1回を目安に行いましょう。歯ブラシで舌も磨く人がいますが、硬い歯ブラシで舌をこすると舌の粘膜を傷めてしまうことがあるため、舌用の製品を使うことをお勧めします。舌用ブラシには、やわらかい毛を使ったものやシリコン製のものなど、いろいろなタイプがありますので、自分に合ったものをかかりつけの歯医者さんで聞いてみるとよいでしょう。
舌みがきは、以下のような手順で行ってみてください。
①舌を前に出し舌の状態、汚れをまず確認。中央の奥の方は汚れが付きやすい箇所。
②舌の根元から先端にかけてブラシを動かし汚れを取り除く。真ん中・右側・左側を各数回ずつ行う。舌を傷付けないよう、力を入れすぎないようにする。
③舌を磨いた後は、浮いた汚れを口の中に残さないよう、口をよくゆすぐ。
食生活でできる口臭コントロール
健康できちんと食事を摂っている人は、それほど舌苔は付いていません。歯と同様、舌も普段の食事のたびにある程度掃除されるからです。繊維質が豊富なものをよく噛み、唾液を出す食事をしていれば、口臭のリスクは減らすことができます。逆に、よく噛まない食生活や、体調不良、薬の影響などで唾液の分泌が減少している場合は、舌苔もプラークも付きやすくなります。そんな時は、いつもより気を付けて歯みがき・舌みがきを行うほか、唾液腺のマッサージなどで唾液の分泌を促すことが効果的です。
ちなみに、にんにく料理を食べた後や飲酒後に、口からのにおいを消そうと歯みがきをするケースがありますが、実はあまり効果がありません。この場合の口臭は歯みがきや舌みがきで取り除ける口のにおいではなく、食品の成分が血流に乗り、肺から強いにおいを含む呼気として出てきているためです。食後の息のにおいが気になってしまう食事は、大事な面会の前などはやはり控えておくのがベストですね。
参考文献:「口腔微生物学―感染と免疫―」 石原和幸ら編著 学建書院 2015
「口腔微生物学・免疫学」 川端重忠ら編著 医歯薬出版 2016
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