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今すぐできる口臭予防のセルフケア① 歯みがきと舌みがきなど
前回は口臭の主な原因である歯や口の汚れに対するセルフケアについてお伝えしました。今回は、口臭のリスクについてお話します。
加齢により増す口臭リスク
口臭のリスクは、誰でも年齢とともに高くなります。これは唾液の分泌量が減ってくるためです。また、高齢になると体の麻痺、筋力低下、流動食といった状況におちいるきっかけになる病気の発症が増えるためです。唾液が減ることへの対策で一番大切なのは、普段の食生活でよく噛むことです。唾液腺を刺激するマッサージも効果的です。もし麻痺や筋力低下などの状況になっても、口腔ケアや口のまわりや舌の筋力を回復する体操、ストレッチなどを行うことで唾液の分泌が促され、口臭の発生は抑えることができます。
ポイントは唾液をいかに出すかです。唾液分泌を刺激するような口腔ケアや体操、ストレッチなどは、食べたり飲み込んだりする機能の回復を目的として行われることも多く、これは全身の元気を取り戻すことにもつながります。
食べていなくても口腔ケアを
高齢者施設などで独特の臭気が気になる時、その原因が口からのにおいであることは少なくありません。寝たきりで経管栄養の人の場合、口からの食事をしていないために歯みがきなどの口腔ケアの必要性が見過ごされていることがあります。しかし、口で食事をしていないとむしろ、口の中の菌が入れ替わるチャンスが失われ、口の中の衛生状態が悪化し口臭を生じやすくなります。これは誤嚥性肺炎などの生命(いのち)に直接関わる疾病リスクが増している危険な状態のサインでもあります。
定期的な口腔ケアは、口からの食事をしていてもしていなくても、歯があってもなくても、生きている全ての人に必要なものです。
その他の口臭
口臭には、歯や舌の汚れ以外が原因で起こるものもあります。糖尿病・尿毒症・肝硬変・肝癌・トリメチルアミン尿症などは、特有の口臭を伴う全身疾患として知られています。また、耳鼻咽喉系の疾患から生じるにおいが、口臭のように感じられるケースもあります。
そのほか意外に多いのが「仮性口臭」といって、実際には口臭がないのに口臭があると思い込んでいるケースです。口臭を気にする人の3~4割は、仮性口臭であるとも言われています。
このように気にし過ぎの時もある口臭ですが、治療が必要な場合もあるため、原因がわからない時は専門の医療機関の受診をお勧めします。
参考文献:「口腔微生物学―感染と免疫―」 石原和幸ら編著 学建書院 2015
「口腔微生物学・免疫学」 川端重忠ら編著 医歯薬出版 2016
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