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今回は病院の管理栄養士として、お腹の中~人生最期の時まで実にさまざまな方々の栄養・食事のサポートをご経験され、この夏フリーランスとして新たな一歩を踏み出された沼倉真宝子さんにお話を伺いました。

管理栄養士を目指したきっかけは何ですか?

私は小学5年生の時に、管理栄養士になることを決意しました。そのきっかけは、叔母のがんの闘病でした。医師や看護師に当初は憧れましたが、小さい頃から料理を作ることが好きだったため、病気でも唯一の楽しみで人を笑顔にできる食事、そして予防に役立つ食事に惹かれ管理栄養士を志しました。実際に調理ができる管理栄養士になりたかったので、調理師養成の高校に入学し、基礎から調理を学びました。大根や長ねぎがカバンから顔をのぞかせているような女子高生でしたが、ここでの学びが現在に大きな影響を与えています。
高校2年生の時に今度は祖母ががんで闘病生活を送りました。叔母も祖母も最期まで「○○が食べたいな」「○○おいしい」と、食事の話をしている時は笑顔になっていました。家族の闘病を通じて、病院でもおいしい給食を作りたい! 食事で沢山の人を笑顔にしたい! と病院の栄養士の仕事を強く志すようになりました。
大学生活は毎日充実していて、栄養士としての基礎をたくさん学びました。教授や友人に恵まれ、人との関わりの大切さを深く考えさせられました。大学時代の友人とはいまだに親交があり、いつも支えてもらっています。
大学で臨床栄養を学ぶうちに、将来は病院の栄養士になるという気持ちがさらに大きくなりました。叔母や祖母の闘病生活では無知で何もしてあげられませんでしたが、病院の栄養士になって同じように苦しむ患者さんやその家族を支えたいと思いました。そのため、就活では病院にターゲットを絞り就職先を決めました。
また、大学時代は料理教室を主宰している母の助手として、さまざまな方を対象とした料理教室の運営に数多く携わりました。そこでは、段取り力や食を人に伝える能力を学びました。

これまでどのようなお仕事を経験されてきたのですか?

大きなグループ病院に入職し、総合病院に配属されました。急性期病院の直営給食の管理栄養士として、給食管理、栄養指導、栄養管理、NSTと病院業務の基礎を習得しました。先輩方の仕事への姿勢に刺激を受け、毎日遅くまで仕事をし、自宅に帰ってからは勉強と仕事漬けの新人時代でした。しかし、そのかいがあって臨床に対して幅広い知識を身に着けることができました。
その後、育休復帰を機に療養型病院へ異動しました。長期療養の栄養管理、高齢者の栄養、摂食嚥下障害、褥瘡の管理等を習得しました。人生最期の時を過ごす方が多いので、ベットサイドに座り患者様とゆっくりお話しを楽しむ時間を大切にしました。嗜好や食習慣を把握している患者様が多いため、ミールラウンドの時間はとても充実していました。食介助では、世間話をしながら楽しそうに食事をされる患者様の姿を見るとやりがいを感じました。
一人目の子どもを出産した際、母子栄養にとても興味がわき、いつか産婦人科で働きたいと願っていた矢先に配属が決定し、栄養科責任者として異動しました。そこでは給食管理、妊産婦の栄養管理、栄養指導が主な業務です。治療のための食事ではなく、産後の身体と心を癒すおいしい食事のために、献立作成には多くの時間を割きます。流行の食材やメニューを取り入れ、高い技術を持った調理師と協力しながら美しくておいしい食事を作ります。また、自分の子どもの離乳食の時に猛勉強したことを活かし、離乳食教室(もぐもぐサロン)を主宰、毎月キャンセル待ちの人気の教室となりました。離乳食教室では、デモンストレーションや座談会を行い、質問にじっくり答えて離乳食作りの不安を解消し、肩の力を抜いて笑顔で継続できるような離乳食の方法をお話ししてきました。ここでの経験が、今の自分の原動力となっています。
そして最後は、回復期病院(回リハ病棟、地域包括ケア病棟)へ異動しました。しばらく母子栄養の畑で業務をしていたので久々の臨床と、赤ちゃん→高齢者の真逆の内容で毎日勉強の日々でした。しかし、赤ちゃんと高齢者の食事は全く違うようで、リンクすることもとても多く面白かったです。チームの一員として、患者様の治療やリハビリに貢献することはとてもやりがいのある仕事でした。
病院での支援が地域でも継続できるよう、訪問診療にも同行し、在宅訪問管理栄養士の資格を取得して在宅介護支援のプロとして新しい道を開拓しました。ここでの仕事が、私のフリーランス転向への覚悟を決めるものとなりました。治療ももちろん大切だけれど、やはり生活に密着したことや予防・食育を重点的にやりたいという思いが強くなりました。
2021年夏にフリーランスへ転向。今までの経歴を活かし、お腹の中~人生最期の時まで幅広く、さまざまなライフステージに合った、その人らしい食事や生活が送れるようサポートしたいと思います。プライベートでは、小学生の姉妹を育てるママです。自身の手術、癌で家族を亡くしたこともあり、「育児・闘病・自宅で家族を看る」当事者として同じ目線で、頑張り過ぎない方法を一緒に考えられるのではないか…。そんな経験から、疾病・介護予防や日常の食生活を共に考えられる仕事がしたいと思い独立しました。
今後は、フリーランス栄養士として食育、栄養相談、在宅訪問、料理教室、SNS発信、地域活動など身近な栄養士として活動していきたいです。

お仕事でやりがいを感じたことを教えてください

自分が関わったことで食生活が豊かになったり、より改善されたり、誰かの人生に影響を与えられたと思った時にやりがいを感じます。

将来どのような管理栄養士になることが目標ですか?

目標は身近な管理栄養士です。ちょっと困った時に気軽に相談できるような存在になりたいです。それが積み重なり、早い段階から関わることで疾病や介護予防ができます。また、孤独な育児をする方も減らしたいです。

休日の過ごし方やリフレッシュ法を教えてください

仕事は全力で走り抜けるタイプなので、休日は省エネモードか電源が切れていることが多いです(笑)
ひたすら身体を休める休日が多いですが、リフレッシュ方法は森林浴です。自宅近くに広大な公園があるので散歩したり、何時間も滞在して自然のエネルギーをいただきます。他には、大好きな餡子のお菓子を食べることも癒しです。

管理栄養士・栄養士を目指す人に向けて一言!

食べることは生きることと直結し、楽しみの1つでもあります。そして、食生活はその人の人生に大きな影響を及ぼします。
誰かの人生をサポートできるこの仕事は、とてもやりがいを感じます。笑顔がこぼれるような時間を一緒に共有できる素敵な仕事です。

 

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みんなのコメント( 2

    • 川口 由美子
    • 川口 由美子
      943日前

      母子栄養協会の離乳食アドバイザーや幼児食アドバイザーなども保有されていらっしゃる沼倉さん。病院のご経験も豊富でいらっしゃいますし、これからも素敵にご活躍されそうで、わくわくしますね

      拍手 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      973日前

      急性期病院や療養型病院、産婦人科、訪問診療とさまざまな病院でのご経験をお持ちのイートリスタ沼倉真宝子さんへのインタビュー記事です。

      拍手 4

WRITER

お腹の中~人生最期の時まで幅広く、その人らしい食事や生活が送れるようサポートしたい 沼倉真宝子さん

Eatreat 編集部

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