病院や高齢者施設などの集団給食施設では、いわゆる常食・普通食(以降常食)に加え、さまざまな形態食やアレルギー食、さらに特定の食材を提供できないために代替品を使用する“禁食”など、個別対応食の提供が伴います。
個別対応食の提供で一番の悩みは、これに伴う手間や食品ロスではないでしょうか。
個別対応食調理はこんなに大変!
個別対応食の提供にあたり、どれくらい手間がかかるのでしょうか。軸となる常食の献立が麻婆豆腐の日を例に、私自身の病院厨房経験からご説明します。
常食が、合挽肉・豆腐・鶏豚スープを使用した麻婆豆腐の場合の対応
・脂質制限食や消化器疾患の方への食事では、合挽肉を鶏挽肉で代替
・肉を食べられない方へは合挽肉を海老で代替
・豚肉だけでなく豚エキスも食べられない方へは、さらに鶏豚スープを除いたものを用意
・肉も豆腐も食べられない方へは、魚のムニエルを提供
・咀嚼や嚥下能力にあわせてミキサー食やゼリー食に展開
上記のように「今日の献立は麻婆豆腐」と言っても、同時に何種類もの麻婆豆腐を用意しなければなりません。
個別対応食調理で食品ロスが出るのはなぜ?①
手間がかかることに加え、必ず食品ロスが伴います。なぜなら、それぞれの食種について対象人数ピッタリの量ではなく、必ず何人分か余分に調理するからです。その理由としては2つ挙げられます。
1つは、調理の仕組みによるものです。例えば対象者が一人だからといって、小さい片手鍋を用いてもピッタリ1人前を調理することは困難でしょう。焼き魚などは可能かもしれませんが、麻婆豆腐のようなメニューは特に難しいです。同じ理由で、ミキサー食も対象者が1人でも余分に食材を用意します。ミキサー内で食材を攪拌するには、一定量以上の食材が必要です。それに加え食材がミキサーコップ内に付着するため、ピッタリでは足りなくなります。
個別対応食調理で食品ロスが出るのはなぜ?②
2つめは、何かあった時を考えて備えるからです。調理を無事に終えても、その後の盛り付けから提供までの工程で、もしかしたらこぼしてしまうかもしれません。これは常食でも同じですね。必ず予備分を含めて調理をしていると思います。
しかし個別対応食は、対象者が常食に比べて少ないため、例えば対象者1人に対して2人前を調理、といった感覚だと思います。
つまり、一つの食種の対象者が少なくなる個別対応食の方が、対象者の多い常食よりも実際に喫食される量に対しての食品ロスの割合が多くなってしまいがちです。
厨房機器を使って、手間も食品ロスも解決!
ここで私がある特養の調理スタッフさんと考えた、個別対応食の問題2つを同時に解決できる手法についてご紹介します。
ある日、常食の献立がハンバーグでした。配膳まで終わった時点で、予備のハンバーグが何食か残ります。従来は一定時間経過するとそのハンバーグは廃棄していましたが、速やかにブラストチラーで冷却後、1食ごとに真空包装機でパックし、ブラストチラーで急速凍結して冷凍保管しておくのです。
これをいつ使うのかというと、例えば魚料理の日に魚を食べられない方がいらっしゃったら、湯煎で再加熱し、盛り付けて提供します。廃棄されるはずのハンバーグが、本来魚料理の日に別途調理しなければならなかった個別対応食として提供できるわけです。しかも当日はサッと再加熱をするだけです。
形態食や個別対応食自体を調理した場合も残ったらストック!
常食を別の日の個別対応食として活用するだけでなく、個別対応食を余分に調理したものも1人前ずつパックしておけば、次回の同じメニューの日に活用できますね。
さらに、ミキサー食での課題も解決できます。アイドルタイムに大きな業務用のパワフルなミキサーで大量に食事をミキサー状にしておきます。これを1人前ずつ、あるいは提供食数が一定であるならその分ずつパックして冷凍ストックしておけば、数回の食事提供分を一気に調理できるだけでなく、ミキサー自体を回す回数が減るため、ミキサー内に付着する食品ロスも少なくすることができます。
食の多様化に対応し、食事提供の質を高めながらも手間や食品ロスを軽減する。厨房機器をうまく使えば、そんなことが可能になりますよ。
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