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- 病気(症例別)と栄養
- 2017.06.16
糖尿病の栄養指導-食事のお話をする際のポイント②
前回はこちら→ 糖尿病の栄養指導-食事のお話をする際のポイント①
患者さんが自発的に動いてくれるようにする
私は食事のお話の中で、「今、何が一番食べたいですか?」と必ず聞くようにしています。その願いを叶えられるような方法を一緒に考えていくためです。そうすると、「こういった話をしてもわかってもらえるかも」と患者さんご本人から様々な話が出てくるようになります。これは食事に向き合おうとしているサインです。そこから、さらに自分でこういう事もできるかもという思いが芽生え、提案をしてくれるようになります。この瞬間が、ご本人が食事療法を実践できている、すなわち、自己管理ができてきているというあかしです。
目標を設定するのはご本人。我々はあくまでサポート
目標設定は、人それぞれです。「何を何g食べること」とご本人がお話をされたら、それが目標となります。目標設定は、栄養指導をする側が設定するのではなく、ご本人が決めるものなのです。こちら側の目標は、「食事療法を継続していただくこと」に尽きます。着られなくなったお気に入りのドレスを着て、ダンスの大会に出ることが目標であれば、目標を達成するためにどのようにしていくか作戦を立てます。体重が減り、血糖コントロールもうまくいくようになってくると流れがわかってきて、日々の食事の重要性もわかってきます。
入院中の方の場合は、病院での食事内容を毎日、目と口で学んでいいただいているので、退院後にご自宅でできそうな事から実践していただくようにお話しをします。外来の方の場合は、ご本人のコントロールにかかっています。ご本人だけではなく、ご家族へご協力をお願いすることもあります。
大事なのは安心感と信頼感
患者さんの中には、「これまでの生活のペースを乱されたくない」とか、「初めて会った人にそんなことを言われたくない」というような気持ちをお持ちの方もいらっしゃいます。こういった場合、まずは相手に安心していただき、信頼を作ることが大事だと考えています。
食事のお話は、1~3カ月に一度程度の間隔でさせていただくことが多いので、「何か変わったことはありましたか?」と、毎回お聞きするようにしています。年度が変わる4月であれば、環境の変化も多い時期であるので、そのことについて尋ねます。前回、出張に行かれる話をしていたら、その後どうなったかを伺います。
「この人は、この間話した事をちゃんと覚えていてくれている」このように感じていただくことで、安心感が芽生え、信頼関係が築けると感じています。食事内容の聞き取りも大切ですが、生活習慣病の場合は普段の過ごし方やご本人を取り巻く環境も重要なため、こうしたお話ができることは実はとても大切なことです。
伝える内容、伝え方にも気を配る
血糖コントロールの不良が様々な合併症や生活習慣病のリスクを高めるという知識は、医療従事者にとっては必要な知識ですが、ご本人にそれをそのまま伝えるのはあまりお勧めできません。そのことにとらわれてしまい、広い目で見ることができなくなる恐れがあるからです。また、薬の飲み忘れを責めたりしないようにしています。仕事上の理由や年齢を問わず、薬の飲み忘れはあります。「お薬は、飲めていますか?」と優しく確認するのがいいでしょう。「先生は忙しいし、言ったら怒られそうだから正直に言えない」というような状況を作らないようにしましょう。人によっていろいろな理由があるものです。
適当な情報を伝えるのは言語道断です
現在は情報化社会なので、「質問に答えられなかったらどうしよう」とドキドキすることもあると思います。わからなかったことは、次回まで必ず調べてくるとお伝えして、こちらの誠意を見せることが大切です。その場で取りつくろって情報を提供するのは、言語道断です。医療側は、エビデンスに基づいた情報なのかを精査し、正しい情報を伝えなければいけないのです。また、患者さんの持病に関する検査値の読み方、薬の知識はあった方がこちら側の引き出しが増えるので、そういった勉強も必要だと思います。専門分野についてはもちろんですが、社会情勢へのアンテナは常に持ち、新聞にも目を通した方がいいと思います。情報を持っている方に教えていただくのも一つの方法です。
最後に
食事のお話の進め方には様々な方法があると思います。ただ、心に留めておいてもらいたいのは、私たちはその方の健康の状態だけではなく、家計の状況などにまで足を踏み入れる事になるということです。土足で入るのか、それとも、きちんと一礼をし、自己紹介をして、靴をそろえて中に入るのか。「もし、自分が患者さんの立場だったら?」と、常に自問自答することが大切ですね。
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みんなのコメント( 1 )
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- ID: 459
- 2702日前
病気や栄養の知識だけでなく、コミュニケーション能力も問わわるお仕事なんですね。
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WRITER
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小山 幸子
現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)
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