糖尿病の食事療法について
食事療法は糖尿病治療の基本になります。主治医の指示に基づき、進めていきます。食事指導では、これまでの食習慣を聞き出し、明らかな問題点がある場合は、まずはその改善から進めます。
初診時の食事指導のポイント
①腹八分目にする
②食品の種類はできるだけ多くする
③脂質は控えめにする
④食物繊維を多く含む食品(野菜・海藻・きのこなど)をとる
⑤朝食・昼食・夕食を規則正しくとる
⑥ゆっくりよく噛んで食べる
摂取エネルギーと栄養バランスを考慮しながら食事指導を行います。一般的には、患者さんにあったエネルギー摂取量(指示エネルギー量)の50~60%を炭水化物から摂取します。その中でも食物繊維の多い食品を選ぶことも有効です。たんぱく質は20%を目安として、残りは脂質で構成します。脂質が25%超えるような時は、飽和脂肪酸を減らすなど、脂肪酸組成の配慮も必要になります。また、食後高血糖にならないように、血糖値の上昇を緩やかにするような食品や食べ方がポイントになります。たとえば、はじめにサラダやあえ物など野菜から食べ、次に魚や肉、そして、主食を加えていくという食べ方です。
肥満の方の減量の注意点
肥満で体重コントロールの必要性のある方は、減量の近道として欠食しやすい傾向にあります。しかし、空腹の時間が長くなると、食後の急激な血糖の上昇に繋がるのと同時に、体脂肪もつきやすくなってしまいます。近道しようとしたことがかえって遠回りになってしまわないように、食習慣の軌道修正を提案することも必要になります。
糖尿病の方のアルコール摂取
患者さんがアルコールを飲んでもよいか、また飲酒量については主治医の指示に基づく必要があります。主治医から処方されている薬剤があれば、飲酒時に薬を飲むタイミングも含め、確認するようにお話しすることが必要です。
患者さんが主治医に確認するときには、具体的な聞き方までアドバイスすることが重要です。例えば、主治医に「少しお酒を飲んでいいですか?」と患者さんが聞いた時、患者さんの「少し」と主治医の「少し」では、量が異なることがかんがえられるためです。きちんと正確な指示を求めるためには、「毎日ビール500mlと缶チューハイ350ml飲んでいるけど、飲んでいいですか?」と聞いてみて下さい。など具体的な飲酒量を伝えた上で、主治医に確認するようにお願いするのがいいでしょう。また、アルコールを控える必要のある方には、アルコールと一緒にお水やお茶など、甘味のない飲み物をチェイサーとして飲んでみてくださいとお話しています。
患者さんが働き盛りで、夕食が遅くなる時は、職場での許容範囲内で、夜の6~7時あたりに、おにぎりなど簡単な主食を摂っていただき、帰宅後に消化の良いおかずを食べるようにアドバイスするといいでしょう。
糖尿病になると、おいしいものが食べられなくなるの?
患者さんの中には「おいしいものを食べられないから、食事の話なんて嫌だ」という方も多くいらっしゃいます。高血糖だからといって、食べてはいけないものはありません。問題は、食べ過ぎてしまうということです。「おいしいものをちょうどよく食べよう」と発想を変えてみると、素材そのものの味がわかり、だしの繊細な味を楽しむなど、より食を楽しめるようになってきます。
食事療法のアプローチを重ねながら、どうして食事療法が必要なのかについて、患者さん本人なりの目標を自然と設定できるように食事指導を行うことが重要です。
参考文献
糖尿病治療ガイド2016-2017 日本糖尿病学会 文光堂 2016
糖尿病食事療法のための食品交換表第7版 日本糖尿病学会 文光堂 2013
図解でわかる糖尿病-血糖値を下げるおいしいレシピつき-片山隆司・貴堂明世・伊藤玲子 主婦の友社 2015
糖尿病 作って食べて学べるレシピ 西東京臨床糖尿病研究会 医学書院 2015
最新糖尿病に克つ生活読本 相磯嘉孝 主婦と生活社 2015
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