「血糖が高め」と健診で言われたら?
平成20年度から始まった特定健診・特定保健指導は、おもにメタボリックシンドロームの該当者・予備群を的確に抽出することを目的としています。糖尿病などの生活習慣病の予防のために、内臓脂肪を減少させる生活習慣への介入が有効であると考えられているからです。
健診で、担当医から血糖が高めで、糖尿病または糖尿病予備群とお話があっても、すぐに感じられる自覚症状が少ないため、再検査はめんどくさい、病院には行かなくても大丈夫だろう、と思って放置してしまう方が多いのでないでしょうか。糖尿病の早期発見・早期治療を怠ると、病気の進行を許すことにつながってしまいます。
日本人と糖尿病
現在、日本では糖尿病の患者数は950万人、糖尿病予備群は1100万人とも言われています。
日本が高度経済成長期にあった昭和30年代、糖尿病は『ぜいたく病』と呼ばれていました。
戦後の食糧難の時代から高度成長期へと移るまで、食事はご飯中心で、労働による運動量も確保されていました。その後だんだんと生活に余裕が生まれると、一部の高所得者は、欧米から入ってきた動物性脂質の多い食品をとる機会が増えてきました。さらにそのほかの食品からの摂取エネルギー量も増え、自家用車に乗ることで運動量が減るなど、様々な要因が重なって、肥満になる方が急速に増加しました。それに伴って糖尿病の方も増えたというのが、『ぜいたく病』といわれる由縁です。
また、もともと日本人は欧米人に比べてインスリンを分泌する能力が少なく、肥満の方は、標準体型の方に比べて約5倍も糖尿病になりやすいとも言われています。肥満のリスクがいかに大きいかお分かりいただけると思います。
これまでは、このような生活習慣病としての内蔵脂肪型肥満が引き起こす糖尿病が主なものでした。しかし現在では、もっと幅広い年齢層に起きているということが問題視されています。
現代の糖尿病は『ぜいたく病』ではない
例えば、便利に購入できる安価な揚げ物などは、食費を切り詰めたい時には手が伸びやすくなりますが、このように簡単に食べられる高カロリー食品が食卓に増えることによって、子どもの間にも内臓脂肪型肥満が多くなっています。子どもの頃に内臓脂肪型肥満があると、若いうちに糖尿病を発症するリスクも高まることが知られています。
このように、現代の糖尿病は『ぜいたく病』とは呼べなくなってきているのです。
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参考文献
・『糖尿病治療ガイド2016-2017』日本糖尿病学会 文光堂 2016
・『健康診断が楽しみになる!血糖値を自分でらくらく下げる本(行くぜ!健診)』片山隆司 主婦の友社 2017
・『栄養と料理2016年11月号』女子栄養大学出版部 2016
・『ヘルシーダイアリー 2017』公益社団法人 日本栄養士会