今回は、私が普段、糖尿病の栄養指導をする上で気を付けているポイントについて書かせていただきます。
指導?支援?上から目線にならないように
最初に、私自身はこの『栄養指導』という用語について、『指導』と言うと上から目線な感じがしており、本来なら『支援』をさせていただいているという姿勢が大事なのではないかと思い、いつもそういう気持ちで栄養指導を行っています。
私が初めて栄養指導をする患者さんからよく、「何回か話を聞いたけれど、何gだの何mlだの、単位で言われてもわかんないよ。だから途中でやめちゃった。」「前の病院では食事の説明は1回だけだったよ。資料をもらってそれっきりって感じ。えっ?何度も相談しに来ていいの?」というような言葉を聞きます。こんな風にならないように、患者さんには丁寧に対応をし、理解していただけるまで伝えていくのが、私たち管理栄養士の使命だと思います。
座る位置で相手の積極性を確認
患者さんに栄養指導室へ入っていただく時の私の第一声は、「本日は来ていただき、ありがとうございます。お好きな席にお座りください。」です。まずは、主治医の指示とはいえご本人の意思で、この指導室まで足を運んでくれたことに感謝の気持ちを伝えます。
この時、座っていただく位置は患者さんに自由に決めていただきます。座る位置で患者さんの気持ちがわかることがあるからです。こちら側に近い位置に座ってくださる方は、食事について積極的にお考えかな…逆に、離れた位置に座られる場合であれば、食事については消極的かもしれないな…などと、こちらも思いを巡らせます。
資料や電卓などは見えないように工夫を
その日の説明に使う資料はデスクの上に置いていますが、どんなものが置いてあるかは自分のファイルを置いて見えないようにしています。電卓も始めからは置きません。患者さんが入室してデスクの上を見た時に、「この本を見て話すのかな?難しそうだな…」、「電卓で計算するのだろうか?面倒くさそうだ。」といった先入観を持たないようにするためです。
ご本人確認(お名前・ID)は確実に!
患者さんが座られたら、こちらも席に着き、いよいよ栄養指導のスタートです。「食事のお話を担当させていただきます、『こやま さちこ』です。」と、ネームプレートに指を添えながら、ゆっくりと自己紹介をします。続けて、患者さんご本人のお名前をフルネームでお伺いします。ご本人確認は必須です。入院されている場合は、IDナンバーの確認もします。外来の方の場合は、「この後はお仕事ですか?」と、その後の予定も確認するようにしています。部屋の温度が快適かどうかも確認しています。向こうの気持ちがほぐれるように、お天気の話をする時もあります。
最初にご本人が主治医の話をどこまで理解できているのか確認
まずは、主治医からどういったお話があって、ここに来ることになったのかを聞きます。そして、ご本人なりにこれまでに実践してきたことを確認します。ここが重要なポイントです。主治医の話をどれだけ理解しているのか、その話を受けてご本人はどんな行動をしているか。すでに実践していることがあるのであれば、たとえそれが正しい対処とは言えない場合でも評価をします。
食事はその人それぞれの物語があります。今まではこれで大丈夫だったという経験からくる過信が、正しいとは言えない行動につながりやすいのが現実です。それを一緒に軌道修正することが、私たちの仕事だと思っています。
次回は、さらに詳しい内容に入っていきます。
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