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災害時の糖尿病患者さんへの準備や心構えのポイント①
災害時の糖尿病患者さんへの準備や心構えのポイント②

災害が起こったら

今回は、災害が起こってからの超急性期・急性期・亜急性期にそれぞれ心がけることや準備するものについて解説します。

超急性期:災害発生時~3日間
①「生き延びよう!」という強い意志を持って、とにかく食事を摂りましょう。
エネルギーの確保が第一です。災害発生直後は食事回数も食事量も十分に得られません。生きるために、まずはしっかり食べます。配給されたものは、何でも食べてよいと考えます。食べ物がない時は水だけではなく、適度な塩分も摂りましょう。
②準備した非常食を役立てましょう。
使用可能なライフライン(電気・ガス・水道)に合わせて準備し、非常食を活用しましょう。
食べ慣れたものや、温かいものをうまく取り入れると、気持ちも落ち着きます。
③水分補給に心がけましょう。
災害発生直後は気が動転して水分補給を忘れたり、トイレを我慢しようとして水分を控えたりしがちです。意識して水分は確保しましょう。

急性期:4日~1週目
避難所などでは、食料供給が安定するまではバランスよりも、量を優先して食事が提供されます。食べ物や活動にも制約が多いので、主治医に相談しながら、できる範囲内で調整しましょう。

①水分をしっかり摂りましょう。
脱水や便秘になって血糖コントロールが悪化するのを防ぐために、できるだけこまめに水分を摂取しましょう。これはエコノミー症候群の予防にもなります。主治医から水分量について指示がある時は、指示の範囲内で摂取しましょう。

②食事の目安量を覚えておく。
避難所などで配給される食事でも、普段から食事の目安量を理解していれば、血糖コントロールが乱れるのを防ぐ工夫ができます。
③ゆっくりよく噛んで食べる。
時間をかけてゆっくり食べることで、急激な血糖値の上昇を抑えます。また少量でも満腹感を得ることができます。
④減塩を心がける。
配給される食品は、保存性も考えて塩分が高めのものが多く、思っている以上に塩分を摂っている事があります。カップ麺や味噌汁など、汁を残す事は大事です。しかし、水道が普及していない避難所では、残り汁など捨ててはいけない規制になっているところもあります。このような場合を考え、スープの素などは半量使い、汁を飲み干しても塩分は半量程度減らすといった心がけも必要です。

亜急性期:1週間以上~1カ月
できるだけ普段の生活を取り戻す1カ月です。可能な限り受診しましょう。
被災から1カ月近く経つと、多くの方が自宅に戻ったり、仮設住宅へ入居したり環境の変化が著しくなります。ライフラインの復旧も進み、電気・ガスが使用できると、食事の幅も広がることでしょう。主食・主菜・副菜のそろった、いつもの食事を心がけましょう。ローリングストックしておいた食品を活用してみましょう。

被災地でよく配給される食品と食べる時のポイント

次に被災地でよく配給される食品と食べる時のポイントについてです。

主食
配給される食品でもっとも多い食品がおにぎりや菓子パンなどの主食です。炭水化物が多く、血糖値が上がりやすいため、ゆっくり食べる、食事の最後に食べるなど、工夫が必要です。

主菜
肉や魚など、調理済みや加工済みのものが多くなります。たんぱく質源として貴重ですが、塩分の多い食品が重なる時は、煮汁は残すなどの工夫を心がけましょう。

副菜
食料供給が安定するまでは生鮮野菜の確保は困難です。避難所では限られた量の野菜をみんなで分けることになります。少量でも、きのこ・海藻など食物繊維の多い食品を積極的に摂るようにしましょう。

果物
野菜同様、生の果物の確保も難しくなります。缶詰を食べる場合は、甘いシロップは残すとよいでしょう。

飲み物
配給された飲み物の栄養成分や原材料を確認しましょう。野菜ジュースでも果汁が含まれているものは飲み過ぎないように。

現在は、スーパー・ドラッグストアなど非常食・防災用品売り場や、登山用品を扱っているスポーツ用品店、ホームセンターのキャンプ用品など、手に入りやすくなりました。災害への備えは特別なものでなくても良いのです。

被災して、どんなに理不尽な状況に置かれても、その現実を受け入れられなくても、立ち上がらなくてはいけません。災害に備えて準備したことは、そこから立ち上がる時に大きな力になります。救援物資がなかなか届かなくても、ご近所仲間で助け合うことができ、協力することで、地域全体が持ちこたえていくことに繋がっていきます。ご家族と考えていただくのもいいでしょう。

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参考文献
・『糖尿病災害時サバイバルマニュアル 第2版』一般社団法人 臨床糖尿病支援ネットワーク 2017
・『栄養と料理 2017年5月号』女子栄養大学出版部
・厚生労働省 避難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドラインwww.mhlw.go.jp/stf/houdou/...att/2r9852000001enj7.pdf

関連コラム
『糖尿病の栄養指導-食事のお話をする際のポイント①』
『糖尿病の食事指導の行い方』
『https://eat-treat.jp/columns/142』

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みんなのコメント( 1

    • ID: 313
      2212日前

      細かくありがとうございます!
      このページは3.11に向けて拡散させてください!

      拍手 0

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WRITER

災害時の糖尿病患者さんへの準備や心構えのポイント③

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

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