介護者の負担を減らすポイント
前回のコラムでも少し触れましたが、手作りの料理にこだわらず、レトルトなど市販の食品を上手に利用できるようになることも、介護者の負担を軽減することに繋がります。いかに簡単に栄養のある安全な食形態の食事を用意できるようになるか、とういことは大切なポイントです。
以前のコラムで介護者と同じ食事をミキサーにかけて介護食を作ることで介護者の負担を減らす方法をご紹介しました。しかし、介護者と在宅療養者の食べる食事が大きく違う場合もあります。
そのような時には少量で活用できる市販の食品の利用も有効です。最近では「おひとり様向け」の食品が多く出回っています。ホワイトソースやデミグラスソースなども一人分の小分けのものもありますし、お弁当に入れる惣菜の冷凍食品も豊富に出回っています。家にある食材と組み合わせたり、手作りの料理以外に小鉢に1品利用したりするだけでも、料理をする負担はぐっと軽減します。ただ、どのように食事に取り入れていくかは一般の人にすると難しい場合があります。そんなときにこそ、私たち管理栄養士が在宅訪問で支援していく意味があります。
介護者自身に調理してもらうことが大切
私は訪問時に調理をすることは、ほとんどありません。なぜなら、管理栄養士の訪問が保険適用となるのは月に2回までだからです。その少ない訪問日のなかで、日々の生活を支えている介護者が、在宅療養者に適した食事を自ら用意できるようにならなくてはなりません。そのため、台所に一緒に立つことはありますが、メインで料理をしていくのは介護者となります。もし、代わりに私が調理してしまうと、私が帰った後に「はて、栄養士さんはどうやっていたかな?」と、その人の身についていない結果になる場合があります。
私はそばで見ながら、「このタイミングでミキサーをかけてください」、「ジャガイモに火が通ったらすぐにフォークでつぶして、熱いうちにバターを入れてよく混ぜてください」などアドバイスしながら、介護者の方に調理をしてもらいます。いかに自分で調理ができるようになるか、日常の食事に取り入れられるようになるかを促していくことも、私たちの大切な役割だと思っています。ついつい手を出したくなることもありますが、ぐっと我慢して見守ることも大切です。
しかし、食は生活の大きな楽しみの一つですので、摂食嚥下のレベルによっては、管理栄養士が腕を振るう場合もあります。介護者では作れない食形態で、安全においしい食事を楽しんでもらうことも必要となるからです。このように介護者自身に調理していただくか、管理栄養士が代わりに調理を行うかは、うまく切り分けながら、支援していきたいものです。
これまでの連載で在宅の現場でどのような介護食をご提案しているのか、調理をどのようにご指導しているのかについて、事例を交えながら、ご紹介しました。一人でも多くの栄養士、管理栄養士が家での食支援に興味を持っていただけたらと思います!
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