診療報酬や介護報酬による訪問栄養食事指導の算定数は年々増加しているものの、実践している管理栄養士はまだまだ不足しています。地域が管理栄養士の訪問を待っています。さあ、準備をして出かけましょう。
訪問を始めるための準備
現場に出ても常に勉強ではありますが、まず勉強しておきたいことを3つ挙げるとしたら1.法令や制度の理解、2.臨床栄養、3.調理技術でしょう。
1.法令や制度の理解
地域包括ケアシステムなど、制度を知ると管理栄養士の立場や求められていることが理解しやすくなります。
とくに診療報酬、介護報酬を算定して行う場合、書類や環境を整えるためには法令や制度の理解が必要です。厚生労働省や日本栄養士会のホームページに法令や書式例が掲載されていますので確認をしておきましょう。
※コラムシリーズ「訪問栄養食事指導の実際」もご参照ください。
2.臨床栄養
糖尿病、腎臓病、心疾患、低栄養、摂食嚥下障害、認知症、褥瘡、がん、下痢、便秘、脱水など、訪問栄養食事指導の対象者に多くみられる病態や症状のほか、血液・生化学検査結果の見方、薬などの知識は学んでおきたいところです。
3.調理技術
在宅では必要な栄養素を数字で示すだけでなく、その方にあった形態や量の食品をおいしい料理にして提案します。管理栄養士自身が調理するだけでなく、介護者が短時間で簡単に調理する工夫、レシピの提供、市販食品の紹介、売っている店や購入方法の紹介、値段などの情報を提供することもあります。
地域で買い物をする、実際に作ってみるなどをして技術を磨いてはいかがでしょうか。
訪問管理栄養士の働き方は
医療機関に所属する管理栄養士は、訪問業務以外に外来、病棟、事務などの業務も行うこともあります。高齢者施設に所属している管理栄養士で介護保険の算定要件に該当している場合は、施設と方針を相談してみましょう。
フリーランスや、普段の所属以外に都道府県の栄養ケア・ステーションの所属として訪問する方法もあります。都道府県栄養士会ごとに活動状況はさまざまですので、まずは問い合わせてみてください。市区町村が行う総合事業を請け負う、事業所独自で企画して訪問を行う、複数の所属先を持つなど、常勤・非常勤に関わらず、さまざまな働き方が可能です。
訪問に関する学びの場
職能団体である(公社)日本栄養士会、都道府県栄養士会のホームページや研修会で法令や制度の基本を学ぶことができます。
(一社)日本在宅栄養管理学会は、実際に訪問を行っている方や地域に関わる方々が多く所属し、実践的な研修会も企画されています。訪問栄養食事指導について系統立てて学べる「在宅訪問管理栄養士認定制度」は(公社)日本栄養士会と(一社)日本在宅栄養管理学会によるものです。
生活する地域を知る
訪問地域の市区町村介護保険担当課、地域包括支援センター、社会福祉協議会などに出向いてみると参考になる地域情報が手に入りやすくなるでしょう。地域の高齢化率、医療情報、行政や地域独自のサービス、スーパーやコンビニはどこにあり何を売っているかなども知っておくと具体的な提案をしやすくなります。
各地域で開催される同職種や多職種の連携会への参加は、地域のことを学べるだけでなく、仲間との情報交換や新規の依頼など活動充実につながることも期待できます。
地域包括システムも30分圏内から。まずは自分の周りの地域を知り地域へ出ていくことから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
・厚生労働省:「地域包括ケアシステム」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/、
(閲覧日:2023年8月30日)
関連コラム
・訪問栄養食事指導における多職種連携
・訪問栄養食事指導とは