訪問栄養食事指導は、在宅に訪問して行う訪問栄養食事指導そのものはもちろん、介入までの準備、訪問後や訪問と訪問の間に行う報告や確認、連携なども含めて成り立ちます。
訪問栄養食事指導の流れ
訪問栄養食事指導の基本的な流れを、居宅療養管理指導(介護保険を利用する場合)を例としてご紹介します。
訪問栄養食事指導はケアマネジャー、本人や家族、主治医のほか、訪問に関わる専門職種からの問い合わせや依頼を受けて始まります。管理栄養士は問い合わせがあったら、医療保険や介護保険の利用対象に該当するかの要件の確認、本人やご家族の希望、主治医やケアマネジャー、現在の状況や目的などの確認をし、多職種と連携しながら介入の準備を行います。また、医療保険や介護保険を利用する場合には医師の指示を受けることが必要です。
居宅療養管理指導での訪問は、栄養ケア・マネジメントの手順を経ながら行い、サービス担当者会議が開催される際には参加または照会を行います。
訪問栄養食事指導の事例① 低栄養:食事摂取量低下、食欲不振
ここからは、訪問栄養食事指導の事例を3つご紹介します。
骨折して入院したことをきっかけに食欲が低下した80代の女性Aさん。退院時には低栄養状態で体重が10kg減り、気力も体力も低下していました。心配したケアマネジャーさんから連絡を受けて介入。1回に少量しか食べられない様子を確認したので、いつも食べているヨーグルトにちょい足しで栄養アップできる食品、少量で高栄養の食品や栄養補助食品を紹介し、同居の息子さんに近所のスーパーやドラッグストアで購入してもらいました。量は増やさずに栄養量を増やして体重を増加、数カ月後にはヘルパーさんと歩いて近所のスーパーに買い物に行けるようになりました。
訪問栄養食事指導の事例② 慢性疾患の検査値が悪化している:高血圧
高血圧の90代男性Bさん。食事は同居の90代の奥様が準備します。お2人とも食べることが大好きで食事を楽しんできたご夫婦です。奥様も高齢のため最近は料理や買い物が体力的に負担となり、調理が簡単で保存しやすいハムやソーセージなどの加工食品や総菜の利用が増え、それに伴い食塩の摂取量も増えていることがわかりました。奥様がいつも買い物する店に売っている総菜や加工食品、市販の調味料の中から食塩量が少なめのものを紹介したり、食塩控えめでもおいしくなる簡単な調理法の工夫を提案しました。また、ケアマネジャーに相談し、ヘルパーによる調理や買い物支援も検討。奥様の負担を減らしながら継続できる減塩への取り組みを行いました。
訪問栄養食事指導の事例③ 嚥下障害
誤嚥性肺炎で入院した90代の独居男性Cさん。Cさんは、入院中に摂食嚥下リハビリを受けて退院しました。入院中に依頼をいただいたので退院前カンファレンスから介入し、退院後すぐに介入訪問。自宅にあるカップやスプーンを使って自分でとろみをつけるときの適切な量や手順を確認したり、自宅のテーブルやイスでの飲食の姿勢を確認しました。テーブルとイスの高さが合わないため食事姿勢が不適切になり、ムセが起こることを確認。リハビリスタッフと連携し適切な姿勢で飲食ができるように整えたところ、水分摂取による誤嚥の改善につながりました。
在宅ならでの管理栄養士の提案
在宅では、実際の生活の場での食の問題点を把握し、実践できる改善方法を具体的に提案していきます。その際、本人と管理栄養士だけでなく、関わりのある家族やスタッフ、すべての人々で連携して支援します。
次回は「連携」についてご紹介します。
【参考文献】
・厚生労働省:令和3年度介護報酬改定について、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号)(抄)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00034.html(閲覧日 令和5年5月30日)
・厚生労働省:令和3年度介護報酬改定について、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示厚生労働省告示第七十三号」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00034.html(閲覧日 令和5年5月30日)
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・【8/5・8/6 2回コース】本気で訪問栄養食事指導をしたい人向け実践講座 開催 後編