「ふんわりなめらかこうや」について
介護食における「こうや豆腐」というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
たんぱく質、カルシウム、鉄分など、体に必要な栄養を多く含むこうや豆腐ですが、摂食・嚥下機能が低下されている方にとっては“誤嚥しやすい”食材として敬遠されることもしばしば…。
しかし、喫食量が減り低栄養のリスクのある方にこそ「こうや豆腐」を食べてほしい…。
そこで今回は介護食における「こうや豆腐」のイメージを変えうる「ふんわりなめらかこうや」の開発秘話をお伝えしたいと思います。
開発のきっかけは栄養士からの一言
旭松食品では1998年より、カットグルメという介護食を販売しています。営業活動をしている中で、「旭松=こうや豆腐」というイメージの栄養士の方が多く、そのたびに「こうや豆腐って栄養価が高いから使いたいんだけど、噛んだときに先に水分が出て誤嚥しやすいから使えないのよね」と言われていました。
2014年、とある栄養士会に参加したときにカットグルメをよく使用している栄養士の方から「カットグルメのミキサー食は便利で重宝しているが、もっと栄養強化は出来ないか。低栄養の予防・改善をしたい」というご意見をいただきました。その時に、旭松の主力商品であり高栄養なこうや豆腐と介護食のノウハウを組み合わせて新しいものを作れないかと社内で商品開発をすることになりました。
「こうや豆腐は温かい状態で…」という思いを込めて商品開発
まず、目指すべき物性を定めるため、栄養士の方々とディスカッションを何度も行いました。そこで出た要望を持ち帰り、開発担当者と技術的に実現可能かなど、社内でも協議を重ねました。特に苦労したのは、目指す物性を実現するには耐熱性を持たせることが難しかったのですが、「こうや豆腐は温かい状態で食べてもらいたい」という思いで、何度もテストを行い、温配膳対応の商品にすることができました。
栄養価については、こうや豆腐の最大の特徴であるたんぱく質を強化し(100gあたり8.4g)、常食のこうや豆腐と同等量が摂れるようにしました。簡便性を向上させるため、自然解凍してそのまま提供できるようにする工夫も盛り込みました。
また、味付けについては栄養士から「さすがこうや豆腐の旭松だね」と高評価をいただいています。
肝心の物性は、離水せず非常にやわらかい食感を実現し、幅広い方に美味しく召し上がっていただけるようになりました。
発売後は多くの栄養士に介護食用のこうや豆腐として重宝されています。
今後も給食現場経験を活かした商品開発を
「ふんわりなめらかこうや」の開発に携わることで、給食現場経験を経て食品メーカーにいる栄養士だからこそできることとして非常にやりがいを感じました。今後もさまざまな方の声を聞きながら、より良い商品を、古くて新しいこうや豆腐を、ご提案していきたいと思います。
関連記事
『嚥下食とは ①~役割と嚥下のメカニズム~』
『変化する「介護食」とこれから』
『比叡病院 管理栄養士 山本茂子さんインタビュー/嚥下食レシピコンテストで優秀賞を獲得するまで』