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臨床栄養に関わる幅広い内容を学ぶ

2018年1月12日~14日の3日間、京都の京都国際会館で第21回 日本病態栄養学会年次学術集会が開催されました。学術集会では、管理栄養士、医師、看護師、その他メディカルスタッフ、学生さんなどが一同に会し、臨床栄養に関わるさまざまな演題について発表、論議を交わします。特別講演、教育講演、シンポジウム、パネルディスカッション、一般演題、レシピコンテスト、卒業研究セッションと内容は盛りだくさんで、14か所ある会場はすべて人が溢れて大盛況でした。

非常に広い会場でした

1日目:一般演題の聴講

1日目は、午後から一般演題の予定が組まれていたため、聴講に行ってきました。1日目の演題内容は、栄養教育・指導、高齢者、腎疾患、がん・緩和ケア、肥満・メタボリックシンドローム、脂質異常症、糖尿病、サルコペニア・フレイル、体構成成分、リハビリテーションと栄養、在宅栄養、肝胆膵疾患、卒業研究セッションでした。日頃、リハビリテーション栄養、在宅患者さんなどと関わりが多い業務を行っているため、サルコペニア・フレイル、リハビリテーションと栄養、在宅栄養について興味深く聴講してしました。皆さんの発表を普段の自身の業務と重ね合わせながら聴講していると、今後の業務についてさまざまなアイディアが浮かんできて、大変有意義な時間を過ごせました。
サルコペニアについては、昨年末に診療ガイドラインが発刊され、今まさに注目されている分野ですが、今後さらに研究実績を重ねていく必要がありそうです。

2日目:パネルディスカッションなど

2日目は、朝の8時からモーニングセミナーが開催されていました。大きな会場にたくさんの聴講者の方が集っていました。私は、午後のポスター発表の聴講までにあらかじめ資料を確認しておきたかったので、企業展示が併設されているポスター展示会場へ移動しました。京都国際会館はとても大きな建物のため、会場が離れていると移動にやや時間がかかります。聞きたい演題が同時刻に別会場で開催されていると移動だけでも大忙しなので、効率よく聴講できるように作戦を練って参加はするのですが、いざ参加して抄録を読んでいるとあちらもこちらも聞きたい! と毎年迷ってしまいます。
ポスター資料を確認した後は、合同パネルディスカッションとして、日本病態栄養学会、日本老年医学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本肝臓学会、日本糖尿病学会、日本肥満学会、日本リハビリテーション医学会の演者の先生方による、“生活習慣病とサルコペニア”について聴講してきました。

以下、内容を簡単にまとめてみました。
・日本病態栄養学会会長の門脇医師のお話では、介護になる要因の内訳として、生活習慣病関連が約30%であるのに対して、フレイルや骨折、認知症などの老年症候群関連が約50%であるという驚くべき数字が出されていました。
・日本病態栄養学会の矢部医師は、運動と栄養の複合的な介入で筋力、筋量が改善され、長期的な維持のためには継続が必要とのお話がありました。
・日本腎臓学会の柴垣医師は、高齢者では透析導入後に急激なADL低下が見られるため、筋力、筋量の減少が見られたら、たんぱく質制限の再考、運動指導が必要とお話されていました。
・日本糖尿病学会の荒木医師は、中年でも四肢筋肉量は減少しており、血糖コントロール不良群(HbA1c8.0%以上)で、筋力、筋量が不良とお話がありました。
・日本肥満学会の石井医師は、高齢になると速筋繊維が減少し、遅筋繊維の割合が増え、長期間、長距離を歩いた高齢者は骨格筋量が維持、増加するとお話されていました。
・日本リハビリテーション医学会の梅本医師は、高齢者の筋力低下した患者には積極的な運動療法とたんぱく質補給が必要とのお話がありました。

いずれのお話でも、栄養と運動(リハビリ)の掛け合わせが重要とのメッセージが込められているように感じました。栄養士がフレイル予防に関わることで、日本病態栄養学会会長がおっしゃられた介護になる高齢者の割合を少しでも減らすことが出来れば、大きな社会貢献が出来ると思いました。

イートリートのブースも!
たくさんの方でにぎわっていました。

3日目:教育講演

3日目は教育講演を中心に聴講してきました。分岐鎖アミノ酸(BCAA)と骨格筋合成について小倉医師は、量の栄養学から質の栄養学へシフトしてきているとお話されていたのが印象的でした。献立上の数字を合わせるだけでなく、生化学的な代謝なども踏まえた上で献立に落とし込む、そんな力が必要になってきているのだと改めて感じました。
摂食嚥下障害の栄養ケアについて藤谷医師は、学会分類についてのお話や具体的なテクニックについてお話された後、退院時1回の指導だけでなく、退院後も良くなっていける地域での活動のため、情報提供書作成が必要とおっしゃられていました。作成意義は理解しているつもりでも、作成件数が伸び悩んでいる現状をいかに変化させていけるか、考えるきっかけとなるお話でした。
3日間を通し、学んだ知識や感じた想いを胸に、日常業務へ落とし込んでいきたいと思いました。

途中で雪が降りだし、会場から見えた雪景色

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・『第23回日本摂食嚥下リハビリ―テーション学会学術大会に参加して①』
・『【JSPEN】第32回日本静脈経腸栄養学会学術集会レポート①』
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みんなのコメント( 2

    • 横原 夢見
    • 横原 夢見
      2115日前

      菅原様
      とんでもございません。
      2019年は横浜での開催予定です。

      拍手 1

    • ID: 324
      2146日前

      レポートありがとうございます!!

      拍手 1

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WRITER

第21回日本病態栄養学会レポート

横原 夢見

病院勤務を経て、現在はフリーランスとして専門学校の非常勤講師、コラム執筆、地域活動などを行っています。

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