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平成30年11月10日、11日の2日間、御茶ノ水駅近隣ビル内にて、「第5回日本サルコペニア・フレイル学会大会」が開催されました。本大会の大会長は、東京大学高齢社会総合研究機構教授の飯島勝矢先生でした。「フレイル研究のさらなる飛躍―From Bench to Community―」というテーマを掲げており、シンポジウムなどの内容もサルコペニア・フレイルの基礎研究やこれまでに分かってきたこと、ガイドラインについて、今後の展望などが盛んに話し合われていました。
今回は2日間の学会の内容について、ノート形式でシェアしたいと思います。

1日目:シンポジウム1 「筋肉、運動機能評価の最前線」

「多周波生体電気インピーダンス法を用いたサルコペニア評価:日本人を対象とした推定式の開発・妥当性・カットオフ値」
◆国立研究開発法人医薬基盤・研究栄養研究所国立研究、栄養研究所健康長寿研究所 吉田司先生のお話のポイント
・加齢による変化としては、
①筋中に脂肪が浸潤する、筋間脂肪が増える
②加齢細胞外液、内液の割合が変化する
③遅筋繊維のサイズは変わらないが速筋繊維のサイズは小さくなり、数大きさも変化する
→筋組織が疎な状態に変化する
④細胞内液が加齢に伴って減少するが、外液はほとんど変わらない

・身体組成推定法には一次間接法(水中測定、空気測定、MRII、DXA)、二次間接法(推定式にて測定;生体電気インピーダンス法(BIA)、キャリパー)などがありますが、加齢による変化は、MRIでは筋中の状態までは分からない可能性がある。
・細胞外液は電気を通しやすいので、若年者と高齢者で同じ推定式を使うと筋肉量を過大評価する可能性があるため、高周波と低周波の2つを使うことで細胞外液・内液の影響をそれぞれ評価できる可能性がある。

「サルコペニア・フレイル対策における運動機能評価の意義」
◆筑波大学体育系高細精医療イノベーション研究コア 大蔵先生のお話のポイント
・新規要介護発生と体力(運動機能)との関連性の追跡調査をしたところ以下の結果が出た。
男性:起居移送能力、下肢筋力
女性:手指巧緻性
・社会的フレイルに対し、運動機能、測定支援を行うことで運動機能改善が期待できる。
・ゼロ次予防として社会環境の改善、地域との繋がりも重要である。

「時系列的な筋肉量・運動機能の“見える化”が、高齢者のフレイル予防に与える影響―市民主導型フレイルチェック現場から―」
◆東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座、東京大学高齢社会総合研究機構 田中先生のお話のポイント
市民主導型フレイルチェック(市民サポーターが実施するプログラム)に複数回参加することでフレイルチェックにおいて、口腔機能、社会的運動への参加が増えるという結果が出た。しかしながら、筋肉量、運動機能改善には介入測定が必要であり、測定、結果を渡して、専門スタッフが説明することで、行動実施への動機づけに影響なる可能性がある。

大会長挨拶 「フレイル予防を通した健康長寿のまちづくり」
◆東京大学 飯島先生のお話のポイント
・フレイル対策は国家プロジェクトであり、介護予防に取り組む通いの場の拡大推進が必要であるが、リピーターで参加者はなかなか増えないのが現状。
・東大フレイル予防研究チームで市民主体(フレイルサポーター:元気な高齢者)の栄養、運動、社会主体を軸とする包括的フレイルチェックを行った。フレイルサポーターの育成には地域の専門職種がフレイルトレーナーとして関わっており、現在33自治体で実施されている。 ・フレイル対策の3つの柱は栄養、身体活動、社会参加であり、産官学民のアクションリサーチが必要である。

ランチョンセミナー 1「オーラルフレイル解消によるQOL向上への取り組み」

◆東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科 平野先生のお話のポイント
・オーラルフレイルは日本産の造語、概念である。
・平成30年4月より、口腔機能低下症が歯科病名になった。診断基準7項目のうち3項目が該当で口腔機能低下症と診断される。7項目のうち、特別な機器がなくとも、舌苔の有無や残存歯の数、オーラルディアドコキネシスの確認、嚥下スクリーニング検査、EAT-10などで診断ができる。
・今まで歳のせいにしていたことを自分ごとにしてもらうのがオーラルフレイル。噛めない→やわらかいものを食べる→口腔機能がおちるというサイクルは口腔の小さなトラブルが始まりとなって加速的に回っていく。
・オーラルフレイルの評価は、6項目のうち3項目が該当で評価される。オーラルフレイルの有無により、身体的フレイル、サルコペニア、要介護認定、死亡率がそれぞれ約2倍ー2.4倍になる。オーラルフレイル概念図を見ると重症度がかなり異なるが、どこの段階でもオーラルフレイルと言えるだろう。
・食欲低下をCNAQで評価することが出来る。CNAQ28点未満で6ヶ月以内に少なくとも5%の体重減少のリスクが示される。食欲低下の段階でどれだけ介入が出来るかという点が重要である。

シンポジウム3「フレイル予防研究から地域に根差した活動への展開」

「ウェラブルIOTデバイスを用いたポピュレーションアプローチ:愛知県高浜市での取り組み」
◆国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センター予防老年学研究部 島田先生のお話のポイント
・ハイリスクからポピュレーションアプローチへ転換が必要。
・行動変容の技法と効果
  →1番はセルフモニタリング (目標設定をするとさらに有効的)
   2番は危険を伝える
   3番は周りからの支援を受ける

「身体的フレイル予防研究から」
◆東京都健康長寿医療センター研究所 金先生のお話のポイント
・身体的アクティビティがある人はない人に比べて死亡率が低い。
・同じフレイルでも診断項目によって対象プログラムを変えて考えていく必要があるのではないか。

「フレイル予防は「総合知」によるまちづくり-アクションリサーチからの視点-」
◆東京大学高齢社会総合研究機構 飯島先生によるポイント
・エビデンス、アクション(ムーブメント)、インパクトメッセージ、エビデンスとムーブメントの融合、マルチステークホルダーという考え方が必要。

「フレイル予防研究から臨床や地域への展開」
◆国立長寿医療研究センター、筑波大学 荒井先生のお話のポイント
・多施設共同研究にてプレフレイルが約50%、活動量減少が一番多かった。
・社会的フレイルと身体的フレイルは相互的な影響がある。
・アメリカとイタリアの研究結果より、4年後に2ー3割はフレイルが改善しており、フレイルは可逆的であることが分かった。

シンポジウム5「サルコペニア、フレイルの診療ガイドラインからの展望」

「サルコペニア、フレイルに対する運動療法の標準化」
◆鹿児島大学医学部保健学科理学療法学専攻の牧迫先生による「基礎理学療法学講座」のポイント
・サルコペニアに対する運動療法の有効性が低いと判断される理由として、報告件数が少ないことが一因と考えられる。運動療法を行えば効果はあると考えられる。
・握力はスクリーニングには使えるが、介入には使いづらい。
・サルコペニアと診断するだけでなく、重症度の判定も必要だろう。
・筋力を測定して漸増的に負荷をかけると効果が出やすい。
・マルチコンポーネントトレーニングプログラムは一番効果がある。

「オーラルフレイルへのアプローチを標準化する」
◆東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座、東京大学高齢社会総合研究機構
田中先生のお話のポイント
・オーラルフレイルは全てのフレイル、予期せぬイベントに関連がある。
・歯数、口腔機能、主観的な包括的アプローチが必要だろう。
・40-64歳時の歯の状態が高齢期のオーラルフレイルに関係している。
・全世代、ライフコース的なアプローチが必要だろう。

後編に続きます。

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みんなのコメント( 2

    • 川口 由美子
    • 川口 由美子
      14日前

      とても興味深く読ませていただきました。
      そういえば、昨日の厚生労働省の「管理栄養士国家試験 出題基準改定検討会」におきまして、「フレイル」という言葉は、英語では通じないし、独特の日本語すぎるから、英語のフレイルティ(Frailty)もいれようということになったのですが、さすがに同学会内はやはりすべてフレイルで統一されていましたか?

      拍手 0

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      23日前

      Eatreat編集部です。
      今回は、「第5回日本サルコペニア・フレイル学会大会」の要旨をイートリスタの横原さんがお届けます!
      とてもわかりやすいメモ形式でその場にいるような気持に…

      拍手 2

WRITER

第5回日本サルコペニア・フレイル学会大会に参加して①

横原 夢見

病院で勤務する管理栄養士です。 献立作成や厨房業務などの経験をもとに、現在は栄養管理・指導業務を中心に行っております。 常に視野を広く、これからも経験値をあげて患者さんのために尽力していきたいと思っております。

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