COLUMN

今回の旬の野菜はただ今旬の「くわい」です。

くわいの歴史

くわいはオモダカ科の水生多年草です。湿田で栽培され、地下茎の先端が球状にふくらんだものを食用にします。原産地は中国で、日本へ伝わってきたのは古く、奈良時代か平安時代には既に栽培されていたようです。「倭名類聚抄」(923-930)に「久和為」という字が見られます。江戸時代に書かれた「百姓伝記」に、くわいを茹でたり煎ったりして食べるという記述が残っています。 アジアやヨーロッパ、アメリカなどの温帯から熱帯地域まで広く分布しています。欧米では、もっぱら観賞用で、食用にしているのは、中国と日本だけと言われています。一般には、肌が青色をした青いくわいが知られています。中国で栽培されているもので白いくわいもあります。

くわいの種類

くわいは「青くわい」「白くわい」「吹田くわい」と大きく分けて3種類あります。青くわいは、肉質も良く、「新田くわい」「京くわい」とも呼ばれています。白くわいは外皮が白く、味も淡泊で「支那くわい」と呼ばれます。そして大型の長円形であることから「徳利くわい」「馬鹿くわい」とも呼ばれています。
吹田くわいは「姫くわい」「豆くわい」とも呼ばれ、肉質が繊細で苦みが少なく、味が良いとされています。くわいは「鍬芋(くわいも)」を略した名前です。葉と葉柄が鍬の形に似ているところから付けられたようです。
また、くわいは「慈姑」と書きますが、これはくわいが一つの根から数十個の子をつけて、まるで慈母が子どもたちに授乳をしているように見えるところからと言われてます。
また、「大黒くわい」はくわいの名前はついていますが、別の種類の「カヤツリグサ科」の栽培品種になります。
ちなみにおせち料理に用いられることが多いのは、塊茎からどんどんと芽が伸びてくるので「芽が出るように」との縁起物のゲン担ぎからなのです。そのため需要も年末に集中していて、年間出荷量の約70%がこの時期に占められています。

くわいの栄養素

ほろ苦さの中に、ほのかな甘みがあります。エネルギーが多く、さつま芋に近い量です。また、たんぱく質が、ほかの芋類と比べると4~5倍多いのも特徴です。ビタミンE、ナイアシン・ビタミンB1・B6・パントテン酸が豊富です。さらにカリウム・リン・亜鉛・胴などのミネラルも多く、野菜の中でも栄養価が高いと言えます。
食べる機会が少ない分、季節を感じながら、取り入れていただきたい野菜のひとつなのです。

おいしいくわいの選び方と保存方法

くわいを選ぶ時は形が球体で整っていて、ツヤが良く、芽の部分に黒ずみがなくて、ピンと伸びてみずみずしいものいいですね。特に縁起物なので、芽の部分が折れていたり、傷がついていたりしないものを選びましょう。水に浸けた状態で冷暗所や野菜室、もしくは新聞紙に包んでポリ袋に入れて野菜室で冷蔵しましょう。

くわいの調理方法

形よく仕上げたい時は、底の部分を切り落とし、下から上に向かって六方むきの要領で皮をむきます。
芽を1.5㎝ほど残して切って、水にさらしてアクを抜いてから下茹でします。
他の調理の時は、皮をむいて水に浸けてアクを抜きます。えぐ味をとりたい時は、ゆでこぼすか、茹でた後で水に浸けるか、または米のとぎ汁で茹でてもいいでしょう。でんぷん質が多いので、ホクホクとした食感を味わいましょう。
含め煮にも、薄く輪切りにしてから水にさらして、しっかりと水気をとり中温で素揚げにも。カリッとした食感が味わえます。天ぷらや、揚げてから煮る揚げ煮、クリーム煮も向いています。生のまますりおろして揚げ物にしても、茹でてからつぶしてきんとんや卵焼きにも。サクサクした食感があるので、炒め物や野菜のあんかけにするとおいしいです。加工品として、クッキー・アイスクリーム・ビール・焼酎も作られています。

参考文献:
・『とれたて大百科』 JAグループホームページ https://life.ja-group.jp
・『七訂 食品成分表2016』 女子栄養大学出版部 2016
・『野菜の効用事典』 山口米子 大滝 緑 明治書院 2005
・『野菜の仕入れ事典』 瀬戸達和 旭屋出版 2008
・『新・野菜の便利帳 おいしい編』 板木利隆 高橋書店 2016
・『旬の野菜の栄養事典』 吉田企世子 エクスナレッジ 2016
・『野菜園芸大事典 第4版』 養賢堂 1988
・『簡明食辞林 第2版』 樹村房 1997
・『原色食品図鑑 第2版』 建帛社 2008
・『地域食材大百科 第2巻』 農山漁村文化協会 2010

みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
      2166日前

      Eatreat編集部です。
      今日の旬の野菜はクワイです。

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WRITER

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

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