• COLUMN

今回の旬の野菜は10月に旬の「にんじん」です。

にんじんの原産地・歴史

にんじんは、セリ科の越年草です。原産地はアフガニスタンやトルコを中心とした西アジアです。現在もアフガニスタンの北部高原地帯には、にんじんの野生種があり、黄色、紅紫色、黒紫色と形や色も異なる様々な種類があります。
東へ広がっていったものが、金時にんじんを代表とする東洋種のにんじんになったと考えられています。日本へは、東洋種がシルクロードを経て中国にわたり、17世紀頃に伝わったとされています。当時はカロテン臭(いわゆるにんじん臭)が嫌われていて、品種改良を重ねたようです。その後、1955年(昭和30年)頃に、全国的に西洋にんじんの栽培がされるようになりました。東洋種は栽培が難しいため減少しているようです。

にんじんの由来

にんじんの名前は、人の形に似ていることからついたとされています。漢字の「人参」は、本来は薬用植物の高麗にんじんを指します。この高麗にんじんに似ていたので、こう呼ばれるようになったとも言われています。普通のにんじんは「胡蘿蔔(こらふく)」と書きます。これは中国の西の国(胡)から来た大根(蘿蔔)という意味です。
にんじんは「発芽したら半分は成功」と言われるぐらい、発芽が難しい野菜のひとつです。発芽のカギになるのが水分のため、できれば雨の後、土が十分に湿っているタイミングで種を蒔くことがポイントです。

にんじんの栄養素

ほうれん草とともに、栄養価が高いことで知られています。オレンジ色が鮮やかなため、料理に赤い色が足りないという時にはあると助かる根菜です。
にんじんの色はカロテノイドというグループの色素で、西洋種にはオレンジ色にカロテンが、東洋種にはトマトと同じ赤いリコピンが多く含まれています。カロテンが高い根菜としては唯一の緑黄色野菜です。
にんじんは英語で「キャロット」、学名の「Daucus carota」の「carota(カロータ)」から、カロテンの語源とされています。「カロータ」は赤いという意味、そして「Daucus」は温めるという意味があるため、「赤くて温まるもの」がにんじんの学名の意味ということになります。
にんじんには、ビタミンB1、B2、ビタミンC、カルシウム、食物繊維、カリウムも多く含まれています。さらに、にんじんの甘味は主としてショ糖とブドウ糖です。また、にんじんの葉も負けてはいません。根と同じく、カロテン、ビタミンB2、ビタミンC、カルシウム、ビタミンEの宝庫です。

にんじんの選び方

にんじんを選ぶ時は肩が張っていて形がよく、表面に割れがなくてなめらかな肌をしており、色のいいものがおすすめです。肩の部分までオレンジ色が濃いものはカロテンが多く、栄養価も高くなります。首や皮が黒くくすんでいないものがいいですね。傷があるものはその部分からドロドロと悪くなっていきます。
また、葉の付け根の細いものがいいです。太いものは芯も太くて硬くなってしまいます。表面に横筋が入ったものがまれにありますが、品質には特に関係ないようです。葉つきのものは、葉がピンとしているものがいいですね。

にんじんの保存方法

にんじんの保存は冷暗所が原則です。暑さと湿気と乾燥にも弱いので、水分をきれいにふきとってから、新聞紙やポリ袋に入れて(水分の蒸発を防ぐため)、立てて野菜室へ。葉つきのものは葉を切り落としましょう。葉をつけたままにしておくと、葉に水分を奪われてしまうため、味が落ちていきます。
市販されているにんじんの大半は、専用の機械で洗ってから出荷される「洗いにんじん」になります。つまり、一度皮をむかれている状態ということになります。家庭ではよく洗ってそのまま使うか、皮を薄くむいて使いましょう。カロテンは皮のすぐ下に最も含まれています。無農薬のものなどは、なるべくなら皮ごと食べるといいでしょう。

にんじんの調理方法

生でそのままもいただけます。にんじんを使う料理は幅広く、炊き込みご飯、すし、きんぴら、煮物、天ぷら、酢のもの、汁物、炒め物、ナムル、ピクルス、漬物など。サラダやマリネは果物と合わせても。カレーやシチューに欠かせません。そのまま焼いたり、蒸したりしても。細かく刻んでミートソースやドライカレーに入れてもいいですね。また、他の野菜も加えて野菜ふりかけにも。
にんじんはゆっくり焼くと、でんぷん質が糖化するので甘みがグンと増します。
にんじんサラダや正月のなますを、生春巻きやバケットに挟んだり、すりおろしてケーキや天ぷらの衣、白玉粉に混ぜたり、ジャムにしてもいいですね。
にんじんの葉も煮物、炒め物、天ぷらや茹でて和え物にして食べられます。

参考文献:
・とれたて大百科 JAグループホームページ https://life.ja-group.jp
・『七訂 食品成分表2016』 女子栄養大学出版部 2016
・『野菜の効用事典』 山口米子 大滝 緑 明治書院 2005
・『新・野菜の便利帳 健康編』 名取貴光 高橋書店 2016
・『新・野菜の便利帳 おいしい編』 板木利隆 高橋書店 2016
・『野菜の仕入れ事典』 瀬戸達和 旭屋出版 2008
・『いつもの野菜まるごと百科 やさいの教室』 かんき出版 2016
・『野菜の作型と品種生態』 山川邦夫 農山漁村文化協会 2016
・『簡明食辞林 第2版』 樹村房 1997
・『野菜園芸大事典 第4版』 養賢堂 1988
・『趣味の園芸 やさいの時間 2017年2月号』 NHK出版 2017
・『趣味の園芸 やさいの時間 2017年4月号』 NHK出版 2017
・『趣味の園芸 やさいの時間 2017年7月号』 NHK出版 2017
・『趣味の園芸 やさいの時間 2017年11月号』 NHK出版 2017

関連コラム
・10月15日は「きのこの日」 きのこの豆知識①
・見直される伝統食材! 発酵食品と健康①
・実は少ない!? ひじきの鉄分

コメントを送ろう!

「コメント」は会員登録した方のみ可能です。

みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      2215日前

      Eatreat編集部です。
      今回の旬の野菜は「にんじん」。
      一年中見かける野菜ですが旬があるんです!

      拍手 0

"管理栄養士が解説する旬の野菜の豆知識"のバックナンバー

もっと見る

WRITER

「にんじん」の栄養素や歴史【管理栄養士監修】10月の旬の野菜の栄養学

小山 幸子

現在は病院、クリニックでの食事サポート、調理実習のほか、食コラムの執筆等。 『この食事が、人生で最後の食事かもしれない』を、モットーに業務に携わっている。 メカオンチのあがり症。 高校卒業後、会社員として8年間勤務後、26歳で栄養士養成校へ。 教員より年上の生徒だった経験を持つ異色の栄養士。 毎日書道会 会友 (雅号:小山 桃花)

小山 幸子さんのコラム一覧

関連タグ

関連コラム

"栄養の知識・食育"に関するコラム

もっと見る

ログインまたは会員登録が必要です

会員登録がお済みの方

ログイン

まだ会員登録をされていない方

新規会員登録

ページの先頭へ