2024年2月19日に、厚生労働省は日本初となる「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表しました。食事指導や保健指導の場でも支援することが多い、飲酒に関するガイドラインですので、管理栄養士の皆さんはぜひチェックしてください。
ガイドラインの内容
本ガイドラインは、アルコールによる健康障害の発生を防止するため、一人ひとりがアルコールに関連する問題への理解を深め、不適切な飲酒を減らすために活用されることを目的としています。
飲酒による体への影響について、年齢、性別、体質などによる違いや、飲酒による疾病や行動に関するリスクがまとめられ、これらを考慮した上での飲酒量(純アルコール量)や配慮のある飲酒の仕方、飲酒の際に留意したいポイントも示されています。
個人差が大きい飲酒による体への影響
①年齢:高齢者と若年者
高齢者
体内の水分量の減少などのため、同じ量のアルコールでも若年期より酔いやすくなります。また飲酒量が一定量を超えると、認知症のリスクが高まるとされています。さらに飲酒による転倒や骨折、筋肉の減少の危険性が上昇します。
若年者
20歳代の若年者は脳の発達途中であり、多量飲酒によって脳機能が低下するとのデータがあります。また高血圧などの健康問題のリスクが高まるとされています。
Point!
若年者は健康そのものを自分事化しにくい傾向にあるので、減酒指導に悩まれている管理栄養士の方も多いのではないでしょうか。しかし「多量飲酒によって脳機能が低下する」というインパクトのあるデータが危機感につながり、行動変容の後押しとなりそうです。
②性別:女性と男性
一般的に女性は男性よりも体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も少ないです。また女性ホルモンのエストロゲンの働きによってもアルコールの影響を受けやすいとされています。このため女性は、少量かつ短期間の飲酒でもアルコール関連肝硬変になる場合があり、健康被害が大きくなりやすいです。
Point!
女性は、妊娠、出産、更年期など、男性と異なるライフステージを有しています。女性への減酒指導では、管理栄養士が飲酒と体の関係を正しく理解し、ライフステージを考慮することが大切です。
③体質:分解酵素の働きの強弱
アルコールの分解酵素の働きの強弱には、大きな個人差があります。分解酵素の働きが弱い場合、飲酒によってフラッシング反応(顔が赤くなる、動悸がする、吐き気を催すなど)を引き起こしやすいとされています。
そのような人が長年飲酒して、不快を伴わずに飲酒するようになった場合、アルコールを原因とする口腔がんや食道がんのリスクが非常に高くなるデータがあります。
Point!
アルコールの分解酵素の働きの強弱は遺伝子によるものといわれていますが、分解酵素が弱くフラッシング反応を起こす方々が、日本では41%程度いるとされています。日本人の2〜3人に1人がお酒に弱いということになりますので、自分の体質を知り、自分のペースでお酒を飲むことを伝えていく必要があります。
本コラムでは、ガイドラインの内容と飲酒による体への影響についてまとめました。
次回は、飲酒量の把握の仕方や飲酒量と健康リスク、健康に配慮した飲酒の仕方について解説します。
参考文献
・厚生労働省:「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」、
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf、(閲覧日:2024年5月28日)
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