日本で栄養失調が増えている!?
「栄養失調」と聞くとおそらく多くの人が「貧しくて食べる物がなかった時代にかかる病気」を思い浮かべるかもしれません。しかし、飽食の時代と言われるこの日本でいま、「栄養失調」が増えてきています。それが現代版の栄養失調である新型栄養失調と言われるものです。新型栄養失調とは何なのか、その原因と症状、そして対策について解説します。
新型栄養失調とは?
栄養失調とはその名の通り、身体に必要な栄養(エネルギー・栄養素)が不足している状態を指します。これに対して新型栄養失調は、エネルギーは十分に摂れていても、たんぱく質やビタミン、ミネラルといった、特定の栄養素が不足している状態を指します。中でも特にたんぱく質が不足している状態を示していることが多く、最近とても問題視されています。
新型栄養失調の原因
なぜ、新型栄養失調になってしまうのでしょうか。普段、私たちが目にするテレビCMや雑誌の広告、等では生活習慣病にかからないように食べ過ぎについて注意喚起をする情報があふれています。それらを見て、実際に栄養を過剰摂取している人が食べ過ぎないようにするのは問題ないのですが、もともと粗食な高齢者等が肉類を控えてしまうと、エネルギーとたんぱく質が不足して、新型栄養失調になりやすくなってしまいます。
また、手軽だからと菓子パンやスナック、カップ麺等を食事代わりにしてすませてしまうことが多い人も、たんぱく質が不足しがちです。同様に、体重を減らしたいからと、野菜や果物だけで一食をすませてしまう人も、栄養が偏り、新型栄養失調になる危険性が高くなってしまいます。
新型栄養失調の症状
人体を構成している成分のうち、水分の次に多いたんぱく質。このたんぱく質は人の身体を作っている約60兆個の細胞の主成分であり、筋肉をはじめ、皮膚や髪の毛、骨の一部もたんぱく質でできています。
たんぱく質の不足により腕や脚の筋肉が作られなくなると、体力がなくなり疲れやすくなったり、転びやすくなり骨折しやすくなったりします。また、腕や脚の筋肉だけでなく、心臓や肺を動かす筋力も低下すると血流や呼吸に影響が出ます。
たんぱく質の摂取量が少ないと、筋肉だけでなく赤血球の細胞も作られなくなります。すると貧血になりやくなります。
また、皮膚の細胞の生成にも影響があるため、傷の治りが悪くなります。
さらに、免疫細胞が作られなくなることで抵抗力が弱くなり、風邪などの感染症にかかりやすくなったりもします。
新型栄養失調の対策
まずは一日三食の食事内容を見直し、しっかりとした食事を摂りましょう。たんぱく質はいろいろな食品に含まれていますが、その中でも特に良質なたんぱく質が含まれているのが肉、魚、卵、大豆製品、乳製品です。
みなさんの朝食はトーストに野菜サラダ、ブラックコーヒーだけになっていたりしませんか? 野菜サラダにはゆで卵やサラダチキンを、コーヒーには牛乳や豆乳を積極的に足してみましょう。和食派の人は、味噌汁に豆腐を加えたり、ごはんに削り節やしらすをかけて食べたりするのもいいですね。
菓子パンを総菜パンに変え、炭水化物ばかりのコロッケパンや焼きそばパンでなく、たんぱく質の豊富なメンチカツパンや卵サンド、ツナサンドを選びましょう。たんぱく質だけでなく、野菜のおかずや果物もあわせて摂ると、ビタミン・ミネラルの不足が防げます。市販の惣菜や冷凍食品を上手に活用して、手軽に不足している栄養を補っていきましょう。
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