今回は青森県にある精神療養病棟で、管理栄養士として活躍されている武越大地さんにお話を伺いました。
管理栄養士を目指したきっかけ
元々食べることが好きで、栄養学や調理関係のことに自然に興味を持つようになりました。そんな中、高校生の時に進路を決める際、母親がいろいろな職業が掲載されている小冊子を見ていて、「栄養士なんていいんじゃない?」と軽く言ったことがきっかけと言えばきっかけかもしれません(笑)。栄養士や管理栄養士は、調理に関わることや栄養面から対象の方のサポートをするというイメージがあったため、それは良さそうだと思い、栄養士の道に進もうと決めました。
管理栄養士の資格は、栄養士として委託給食の仕事をしている時に取ろうと決めました。栄養士の仕事は厨房から離れられず、調理がメインになってしまうのですが、管理栄養士の場合には、患者様と直接コミュニケーションを取って提案などをすることができます。厨房で献立作成や調理の仕事をしながら、自分はもっと患者様と直に密なやり取りをして、寄り添うような形で仕事をしていきたいなと強く思うようになっていました。
管理栄養士になってからは栄養学に限らず、医学や歯学など幅広い知識を持つことも大事だなと思うようになりました。
一番のやりがいは「おいしい」という言葉
勤務先の病院でのおもな仕事は患者様の栄養ケア、マネジメント、そして厨房との調整です。仕事は大変ですが、患者様から食事をおいしいと言っていただいた時や、食事・栄養に興味や関心を持ってもらえた時にとてもやりがいを感じ、やる気が沸いてきます。患者様と食事のお話をしている時間がとても楽しいので、管理栄養士の資格を取ってよかったなぁと実感します。給食に限らず、患者様と直に接する機会を持たせていただいていることは、自分にとってとてもありがたいことだと思います。
また、現場に出て患者さんと直接やり取りをするようになってからは、小さな努力を積み重ねていくことが何よりも大事だと感じるようになりました。今は特に、摂食嚥下からどのようにしたら安全に食べてもらえるか、ということについて思いを巡らせ、改善や工夫を重ねているところです。
さらなるスキルアップのために…
まだまだ自分には知識も経験も足りないため、今後は人体生理学的な知識と、栄養を整える工夫や手段の勉強をして、さらにスキルを高めたいと考えています。また、摂食嚥下や排便コントロール、腸内細菌叢、褥瘡(じょくそう)※への理解をもっと深めて、経験値もどんどん上げていきたいです。
※ 褥瘡
患者が長期に渡って同じ体勢で寝たきり等になった場合、体と支持面(多くはベッド)との接触局所で血行が不全となり、周辺組織に壊死を起こすもの。床ずれのこと。
私は、患者様に寄り添って、患者様の食への意識を良い方向に変えられる管理栄養士になりたいと思っています。そのためにも、日々の自己研鑽や勉強や知識の習得はとても大事だと感じています。最新の情報を得られるよう、摂食嚥下リハビリテーション学会、病態栄養学会に所属し、研修などにも積極的に参加するようにしています。直近では、栄養改善学会や精神科栄養士学会などに参加しました。また、先日は佐藤和子先生の食生活研修を受け、とても勉強になりました。
年に一度1型糖尿病患者の家族のためのファミリーキャンプにも参加しているのですが、このキャンプはクリニックの内科の先生が中心となって開催しているもので、1型糖尿病患者のお子さんを持つご家族と一緒にキャンプをする企画です。キャンプを通じて患者である子ども達やご家族の皆さんが、いつも不安に思っていることや困っていることなどを共有しあいました。思いもしなかったような新たな発見がたくさんあり、とても貴重な体験ができました。
最後に管理栄養士を目指す人に向けて
管理栄養士を目指すのなら、まずは自分自身の食事のあり方に目を向けてほしいと思います。あまり偉そうなことは言えませんが、自身のことをきちんとできない状態で、ほかの方のサポートはできないと思うからです。毎日の自分の食卓の中で、まずは自分自身の正しい食生活を実践して結果を積み上げていってほしいです。あと、自分から進んで情報収集をし、いろいろなところに足を向けることが大事だなと思っています。がんばっていきましょう。