11月19日(日)に、「カリフォルニア くるみ アフタヌーンセミナー』が開催されました。
主催者のカリフォルニアくるみ協会では、25年ほど前から、国内外の大学や医療機関でくるみの健康効果を研究しているそうです。今回は、栄養や食のプロフェッショナルの方々にくるみの魅力をご理解いただき、広く一般のみなさまにも伝えていただきたいとの趣旨でセミナー&くるみ料理の試食会が行われました。
歴史の古いくるみ。日本では縄文時代から
次に慶応義塾大学医学部教授の井上浩義先生による「からだによい食事方法とくるみ」の講演がありました。
くるみには、①食物繊維 ②ビタミンE ③α-リノレン酸 ④ポリフェノール、という4つの宝庫があり、特にポリフェノールについては圧倒的に多く、くるみの薄皮部分に含まれているので、ポリフェノール摂取には薄皮が大切であるとのことでした。ちなみに血管疾患にもくるみがよいそうです。
くるみの起源は、イラン(ペルシャ)の北側あたりで、紀元前7000年前の遺跡からくるみの殻が発見されています。日本でも縄文時代の遺跡から発掘されているとのことです。アーモンドやカシューナッツ、ピスタチオは明治時代から食用として利用されていますが、くるみは日本に記録が残っている時代から食べられているので、歴史が長いということなのです。
アーモンドやピスタチオなど、地球上にはくるみと同じ時期にあったのですが、アクや渋みが強かったため、地中海に到着してから、人間が改良を重ねることで、食べられるようになったナッツです。くるみは、このまま改良もなく食べられているので、食用としての歴史も長いということになります。日本では、長野のくるみだれ、茨城県の小女子(こうなご)とくるみなど郷土料理があります。
栄養素が豊富で脳にもいいくるみ
くるみは骨の形成に必要な、マンガン・鉄・銅・亜鉛・葉酸などの栄養素が豊富に含まれています。妊婦さんや子供だけでなく、血管をしなやかにするα-リノレン酸も豊富なので、高齢者の方にも摂って欲しいものです。
日本の受験生はチョコレートを食べていることが多いのですが、韓国の受験生はくるみを食べる習慣があるそうです。「脳の形をしているから」という理由からだそうなのですが、これは理に適っていて、エネルギー豊富で、少しの量で満腹感があるのでくるみを食べるとイライラしないで済むようです。
機能的なMRIで脳を調べてみると、くるみのスムージーを4日間ダブルブラインドテスト(二重盲検法:被験者も研究者もどちらがくるみ入りかわからない)での報告(※1)で、脳の食べ物への渇望などに関する島皮質(とうひしつ:インシュラ)がくるみの入っていた方だけ活性化して、脳が満足しているという結果だったとのこと。そのため空腹感が減ったということです。くるみは脳にもいいということです。
おすすめのくるみの1日の摂取量
●ひとつかみ
●28g(12粒)
●1/4カップ
体重60㎏の方で12粒です。体重・体格によって手の大きさも変わるので、身体にあった量をいただく
のに一番わかりやすいのは、「ひとつかみ」とのことでした。
くるみの食べ方の提案
ラズベリー・チェリー・お茶をくるみと組み合わせると、脂質代謝がよくなったというアメリカの研究報告(※2)があるそうです。くるみとお茶は炎症抑制も期待されています。
今回は先生の講演が終了後、続々とくるみ料理が運ばれてきました。うれしいワイン付きです。くるみバターは、くるみの甘みと香ばしさが良く、クラッカーの塩味とよく合います。
くるみ&ビーンズサラダには、スパイスがたっぷり使われていましたが、くるみの風味で辛みが抑えられていて、辛さが苦手な方も召し上がれる感じでした。トッピングに、パプリカをはじめ、アボカド、チーズ、レタスなど、そしてトルティーヤにオイルとライムが添えてあり、華やかな一品の中に、主菜・副菜も摂取できる料理でした。レシピの中には、塩の記載がなかったので、トマトホール缶とトッピングのチーズ、そしてトルティーヤの風味が活かされていると感激しました。
熱々のラザニアは、チーズにモッツアレラチーズと、脂肪分が少ないリコッタチーズの2種類を使っていて、さっぱりといただくことができました。またほうれん草の緑、トマトソースの赤のコントラストがきれいなので、クリスマスのおもてなしにもぴったりです。
タルトタタンは、深くて香ばしい色彩の中に、リンゴのいいところをすべて凝縮した一品です。
食べている間は意識しなかったのですが、今回のレシピには、肉・魚は一切使われていませんでした。ひとつの食材で、このように目も口も身体もリッチになるのは幸せなことだなと、実感しました。
この日に提供されたメニューのレシピはこちらです!
・くるみバター
・ローストくるみ&ビーンズサラダのタコス スパイス風味
・くるみペーストのほうれん草ラザニア
・タルトタタン
くるみについてのQ&Aタイム
食事をいただきながら質問タイムになりました。
Q:スポーツ系のコラムを書いています。スポーツにはどうか? どのタイミングでとるといいのか?
A:2つの考え方があります。
①運動する時の、エネルギーとしてのくるみ
②運動時の身体の修復用のくるみ
身体は脂肪で動くので、少量で身体を動かすには55%が脂質のくるみは効率的。マラソンの時にもバナナだと消化管をたくさん使わないといけないけれど、くるみは消化管をそんなに使わなくてもよく、消化管に血流がたくさんいかないのでいいと思う。くるみはスムージーでとるといい。スポーツ後は、活性酸素がたくさんあるから、身体の中で活性酸素を消す酵素・SODが働くけれど、できればポリフェノールが入った薄皮つきのくるみを使うといい。
くるみは修復効果があるので、翌日まで疲れを残しにくい。1回だけだと効果が発揮できないため、1か月ぐらい続けると、乳酸の量も減少していく。
Q:脳に効くとのことだったが?
A:ナッツは、きちんと咀嚼するということがまず良い。前頭前野や海馬に信号がいく。日本人の現在の食べ物は10-15回で飲み込むが、くるみは30-40回噛まないといけない。最近、日本人はガムを噛むのも減っている。α-リノレン酸も脳にいいので、1-2か月の単位で摂ってほしい。
Q:うつ病とオメガ3について。もう少し詳しく。
A:うつ病は、頭のドーパミンとセロトニンが出にくくなっている。ドーパミンが少ないと、パーキンソン病と同じようになって、小さな動きが多くなる。セロトニンが少ないと、高次な学習ができなくなる。うつ病の場合は、どちらも少なくなっている。この時、少なくなっている原因が2つ考えられる。
①分泌量の原因 ②分解量の原因
黒質線条体(こくしつせんじょうたい)を刺激することで、ドーパミンとセロトニンが出てくる。この時、オメガ3がEPAやDHAに変わることで、この黒質線条体を守ってくれるということ。α-リノレン酸は、一旦肝にためて、必要な分だけEPAやDHAになってくれる。必要な分だけ送り込んだ方が、うつ病にはいいと言われている。直接EPAやDHAを摂るよりいいかもしれないという研究もされている。
Q:健診の時に、LDL上昇にはならないのか?
A:くるみはLDLを上昇させない。α-リノレン酸の作用は、過剰な部分を調整するだけだから、一方的に上昇したりしない。コレステロールはLDLとHDLの帽子が違うだけなので、増えることはない。
Q:血糖コントロールには?
A:食後高血糖を防ぐのに、一番いいのは30分前。α-グルコシターゼを阻害するので、緩やかな血糖上昇になる。
Q:くるみの生と、炒ったものでは?
A:ローストした時にどのぐらい過酸化脂質があるか調べたが、あまり出なかった。フードプロセッサーに入れて1mm以下にしたものは10%ぐらい過酸化脂質が上昇した。ローストには強い方だと思う。水に2時間つけておくと、細胞壁が2倍にふくれて、消化が楽になる。また、酸化に関して、空気に触れれるだけではなく、透明な容器でも酸化は進む。冷凍保存も可能だが、新鮮なうちに食べきれるように小さい袋入りの商品が最近は出ている。
Q:日本で輸入されているくるみで、殻つきの生くるみはどのぐらいあるのか?
A:カリフォルニアは全部、皮つきのむきみの状態。以前は殻つきのものが輸入されていたが、今は殻付きのものは輸入していない。現在、殻付きで市場に出ているのは、国産のみで、長野に『シナノグルミ』というカリフォルニア産と似た品種がある。
Q:くるみの健康被害は?
A:くるみアレルギーは国民の1.8%、50人に1人はくるみのアレルギーを持っていると言われている。子供のおやつにする際には気をつけたい。
カリフォルニア くるみ協会では、健康的な間食(ヘルシースナック)として、また挽肉の代わりにお料理に使ったり、小麦粉の代替としてお菓子につかったり、普段使う食材のヘルシーな代替としてのくるみの使い方を提案していきたいとのこと。管理栄養士、栄養士、保健師、料理家のみなさんには、ぜひくるみを使ったからだによいレシピの考案にご協力いただきたいとのことでした。
食には、ひとりひとりの物語があり、その食材の食べ方、好みなどはさまざまです。こうした物語の一ページになる事は、素晴らしいことでもあり、難しいことでもあるんだなということを学びました。
カリフォルニア くるみ協会のホームページでは、ほかにもくるみの健康効果や簡単でおいしいくるみのレシピを紹介しています。ぜひチェックしてみてくださいね。
『カリフォルニア くるみ協会』
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『介護施設従事者向け 圧力鍋調理セミナー開催』
『「家族でつくる愉しみを。 ヨシケイ父の日『親子deキンパ』」開催』
※1『くるみが食欲を抑制する脳の働きを
活性化~ 食欲抑制のメカニズムを解明する初の研究 ~』より
※2『くるみと他のホールフードの摂取は炎症と新陳代謝に好影響~くるみと緑茶は最も効果的な組み合わせの1つ~』より