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知的障がいの方は病気や薬の副作用の影響、代謝、栄養吸収など健常者とは違い肥満になりやすい傾向があります。今回は、知的障がいの方のための栄養管理の情報をお届けします。

座位の安静時代謝は知的障がい者のほうが高い

「知的障害者の栄養管理ガイド」(大和田浩子・中山健夫著 建帛社2006年)という本に、興味深いデータが載っています。知的障がい者の仰臥位での安静時の代謝は、健常者と変わりませんが、座位や立位で測定した代謝量は、知的障がいを持った人のほうが約18%高いというのです。
対象者は施設入所の男性23名で、平均年齢は36歳。比較対象は、年齢、身長、体重がほぼ同じになるように、一人ひとりマッチングさせた健常男性群です。知的障がいを持った人は緊張しやすいので、事前に何度も計測体験を積み、馴れた状況で本番に臨んでいます。
この結果、知的障がいの人が座位や立位でじっとしているとき、健常者より代謝が多いのは、体動が原因でした。姿勢反射が不十分なのか、体幹が弱いのかはわかりませんが、じっとしているときは、体がふらついて消費量が増えているそうです。

筋肉が少なく過体重な知的障がい者たち

同調査では体の容積を調べ、LBM(除脂肪体重)を算出しています。その結果、知的障がいを持つ人はLBMが少ない、つまり筋肉量が少ないことがはっきりしました。歩行時の酸素消費量も少ない、つまり、体力が弱いこともわかってきました。
知的障がい者が肥満になりやすい原因は、日常生活の不活発さからくる筋肉量の少なさにあると著者らは考察しています。
では、活発になれば肥満は減るのでしょうか。

減量による希望

実はその通りです。横浜のあるグループホームでは、中年の知的障がいを持つ超肥満者たちが、自分にあった運動や生活方法で10~30kg減量し、その後20年以上体重を保ち、健康高齢者となっている例があります。
その陰には、視覚に訴えるわかりやすい学習会を工夫し、お互いの成果を発表する場を設けるなど、支援を続けてきた管理栄養士と指導員がいます。

栄養目標を立てるときに考慮してほしいエネルギー、タンパク質

以上のことから、健康維持のための栄養目標を考える場合、低エネルギー設定という選択肢のほかに、消費量を増やすことも考えたいものです。寝たきりの人が増えると、介護が大変になりますので、筋肉量を増やす施策を施設の多職種に提案したいところですね。
また、筋肉を減らさないだけでなく、肝機能の低下予防のために、タンパク質はしっかりと確保したいものです。先の調査では、抗てんかん薬や向精神薬を服用している人は、特に男性に高頻度に軽度貧血が起こることがわかりました。

口の中に問題があるケースも

さらに、BMI低め、ZTT高めとも相関があり、ZTTは炎症があると高くなるため、著者らは歯周病を疑っています。知的障がいの方は叢生(そうせい)、開咬など歯並びが悪く、それに歯周病も加わると、食べることに支障が出てきます。
食事量が減ったり、食物が偏ったりしている人の場合、口の問題が隠れていないか見てみてください。

最後に

知的障がい者のための栄養管理マニュアルはあまりなく、施設勤務の管理栄養士の皆様はご苦労の多いことと思います。今回は長年に渡って、障がい児・障がい者が多い歯科医院で摂食相談をしている管理栄養士として、雑感を述べました。何か参考になれば幸いです。

 

参考文献
「知的障害者の栄養管理ガイド」(大和田浩子・中山健夫著 建帛社2006年)

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    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      1947日前

      Eatreat編集部です。今回は相談室に寄せられた質問から発展したコラムです。ご相談&回答も合わせてご覧ください。

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WRITER

知的障がい者の栄養特性と栄養目標

手塚 文栄

管理栄養士

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