2010年以降、政府は海外からの観光客を増やすための経済政策に力を入れ始めました。それにより、都内だけでなく日本中に新しいホテルなどが建ちました。
インバウンド(訪日外国人の旅行のこと)が増えるということは、彼らのもつ異文化に対応をするということです。そしてその異文化のひとつが、ベジタリアンです。
今回は実際に彼らを受け入れる際の、ホテルでの対応をご紹介します。
ホテルでのさまざまな対応
ベジタリアンへの対応はホテルによって異なりますが、ここでは3つの対応をご紹介いたします。
①インバウンド向けガイドブックなどへ「ベジタリアン対応しています」とアナウンス
ガイドブックには、彼らのもつ宗教、文化への対応がピクトグラムでわかるようにしています。
②菜食料理を売りにするレストランをテナントに併設
国内のホテルは大抵、洋食・和食・中華のジャンルのレストランを備えています。
その中で和食は、精進料理のルーツから菜食料理を作ることができます。そして中華も、薬膳料理から派生したものとして、菜食料理を作っていたりします。洋食はフランス料理が多いので、菜食料理の基礎がありません。しかし現在はベジタリアンブームもあり、フランス料理でもそのような料理を置くホテルもあります。
③「ベジタリアン等はご相談ください」とし、ホテルにある食材で対応
アレルギー対応もそうですが、お客様の召し上がれない食材への対応は、基本的にご相談ベースです。ホテルによって調理場の形、規模はさまざまですが、出来る範囲の提案をしてお客様に選んでいただきます。
料理を考える時のヒント(代替品)
ベジタリアンへの料理を考える時は、動物性食材を代替品で補うことがあります。
ホテルでは、来館されるお客様の傾向と特徴を把握し、あらゆる要望に応じられるよう、さまざまな食材を準備しておきます。
以下では、ベジタリアンへの料理で使用する代替品の例をご紹介します。
・メインとなる、肉・魚は、“大豆ミート”といった豆類食材や、ボリューム感を出すために芋類、アボカドなどを用いることもあります。ステーキの場合は、焼き野菜、蒸し野菜の盛り合わせといった感じで提供します。
・だしは、昆布だしや、野菜のうま味を組み合わせてとります。
・乳製品は、豆乳や大豆由来のバター様油脂、チーズ様製品、アーモンドミルク、ココナッツミルクなどを使います。
・マヨネーズも、大豆由来のマヨネーズ様食品があります。
・豚・牛由来のゼラチンは、寒天やアガーといった海藻由来のゲル化剤などで代用します。テリーヌやジュレドレッシング、デザートにも使うことができます。
・ドレッシングに動物性食材を使っている場合は、オリーブオイルとワインヴィネガーといったシンプルなドレッシングでご用意します。
用意している料理の原材料は、通常把握しておく必要があります。
その中で、お客様の召し上がれない料理は、上記のような食材で代用して考えているのです。
まとめ
都内ベジタリアン料理店の店主が、次のように話していたことがあります。
ある外国人旅行者が、
「私が宿泊しているホテルではベジタリアン料理を用意してもらえず、インターネットで調べてタクシーで食事をしに来た」
と言って、滞在期間中毎日訪れてきたそうです。
異文化の申告は一見難しく感じますが、整理するとシンプルです。「わからない」「出来ない」ではなく、「今あるものの中で出来ることは何か」を考えてあげることが大切です。日本での滞在が「楽しかった」と思ってもらえるよう、出来る限り相談に乗ってあげたいものですね。
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