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認知症予防のために意識したい食事とは

基本はバランスの取れた食事であることを忘れないようにしましょう。前回のコラムに記載したように、食べる前に主食、主菜、副菜があるかを確認してみましょう。テレビなどで「○○が体に良い」という番組が放送されると、その食品ばかりを食べる方が出てきますが、そういったことはしないようにしましょう。
高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病などのメタボリックシンドロームは、認知症の危険因子として考えられてきています。これらの疾患をお持ちの方や数値が高めの方は、それぞれの食事療法をしていきましょう。

食べる量を控えたい食品

アルコール依存症や大量にお酒を飲む方には、脳萎縮が高い割合でみられることから、大量の飲酒は認知症の危険性を高めるとされています。お酒は楽しくたしなむ程度にしましょう。また、肉の脂身やマーガリン、ショートニングには血管に溜まりやすい飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が含まれます。これらの過剰摂取は血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やし、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らすことから、動脈硬化を引き起こし、冠動脈疾患などを増やすリスクが報告されています。トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングを使用したパン、ケーキ、ドーナツ、揚げ物などにも含まれます。体中の血管を守るために、これらは食べすぎないようにしましょう。

薄味に慣れる工夫をしましょう

脳梗塞から認知症になることがありますが、脳梗塞の背景には高血圧が関係している場合が多いので、高血圧予防のために食塩を減らす工夫をしましょう。
例えば、ショウガやミョウガ、大葉などの香味野菜や胡椒や七味などの香辛料を加えて、味噌や醤油の使う量を減らしたり、麺類のスープは残すようにしたりすることで塩分量を減らすことができます。また、漬物や加工食品を控えたり、味付けを確かめてから調味料を付け足すといった工夫もできます。大切なのは、濃い味に慣れないことです。慣れるまではすべての料理が薄味だと満足感が足りなくなってしまうので、メインのおかずはしっかりめの味付け、ほかの料理はいつもより薄めの味付けになるように心掛けるようにしましょう。

料理をするメリットはたくさん

皆さんは毎日料理をしていますか?料理をすると、脳の働きが活発になると明らかになっています。日本の研究で、献立を考える、包丁で食材を切る、いためる、盛りつけるまでの一連の動作と脳の関係を調べたところ、安静時にほとんど働いていない脳の前頭前野と呼ばれる部分が、いずれの場面でも活性化することが分かったということです。
前頭前野は、記憶や学習などと関連し、行動や感情をコントロールしたり、やる気を出すなどの人間にとって重要な役割を担っています。人とコミュニケーションをしている時も前頭前野が活性化することがわかっているので、完成した料理を人と楽しみながら召し上がるのもいいでしょう。

かかりつけ歯科医をもちましょう

噛むという刺激によっても神経伝達物質が増加し、脳への刺激となります。
厚生労働科学研究班は噛む能力が弱く、かかりつけの歯医者さんがない人ほど、認知症になる確率が高くなる研究結果を発表しました。歯が20本以上残っている人に比べて、歯が数本で入れ歯を使わない人の認知症リスクは1.9倍に、かかりつけ 医院のある人に比べて、ない人の認知症リスクは1.4倍になるそうです。また、歯周病によって糖尿病が悪化したり、脳に炎症が起きることも考えられます。早い段階で歯の治療を行うためにも、定期的に歯科受診をして、口の中の健康を守りましょう。同じように噛んでいても「おいしい」と思って噛んでいる時は、脳の活性度が高まっているそうです。心も体も楽しめるような食事作りを心掛けたいですね。

 

参考文献
・これでわかる認知症予防 幸せなシニアライフのために 石井映幸 2018年10月
・認知症ねっとホームページ 
 https://info.ninchisho.net/
・健康長寿ネット
 https://www.tyojyu.or.jp/net/index.html
・厚生労働省 介護予防マニュアル(改訂版)
 https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/tp0501-1.html
・脳科学的アプローチによる調理をすることの効果に関する研究 山下満智子
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/47/1/47_1/_pdf
・東北大学+日立ハイテクノロジーズによる脳科学カンパニーNeU
 https://www.active-brain-club.com/ecscripts/reqapp.dll?APPNAME=forward&PRGNAME=ab_brain_detail&ARGUMENTS=-A3,-A201812,-A20181221141722391,-A
・トランス脂肪酸について
 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/
・神奈川歯科大学 プレスリリース 2012 年 3 月 22 日
  “歯を失って義歯を使わなければ認知症のリスクが最大 1.9 倍に” 
 http://cws.umin.jp/press-releases/033.pdf#search='%E6%AD%AF%E3%82%92%E5%A4%B1%E3%81%86%E3%81%A8%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF+%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6

 

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みんなのコメント( 1

    • Eatreat 編集部
    • Eatreat 編集部
      1478日前

      認知症予防のためにバランスの良い食事は大切です。また、高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病などのメタボリックシンドロームは、認知症の危険因子と考えられてきています。認知症予防第2回目のコラムでは、バランスのとれた食事以外で大切な食事のポイントやお口の健康と認知症との関係を鈴木菜美さんが解説していきます。

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WRITER

今から始める認知症予防②

鈴木 菜美

●糖尿病療養指導士 糖尿病専門クリニックにて一年間で1000人以上の食事相談を受けた経験あり。 患者個々の気持ちに寄り添って行動することで、患者の不安解消、数値改善に貢献することができた。現在もその経験を活かして別の糖尿病専門クリニックにて、勤務。 ●「人と食と笑顔をつむぐ おやつ教室 tsumugi」主宰 だれもが食を学ぶことができたり、食事療法の不安を減らすための場所を作り、一人一人の希望に応えたいという想いから、愛知県の自宅にて、【低糖質のおやつ】【食物繊維が豊富なおやつ】【低カロリー満足おやつ】をテーマにして、簡単に作ることができるおやつを伝えている。今後は料理も伝えていく予定。 ●認知症予防レシピの提供 2017年3月より、株式会社エストコーポレーション様発行 『自宅に届く 脳とれドリル 脳レク』 に認知症予防をテーマにして考えたレシピを連載中。 毎月、認知症予防に有効とされている食材を一つ取り上げて、その食材を使ったレシピを2つ紹介している。 ●その他資格 日本糖尿病療養指導士 ホームヘルパー 医療事務 野菜ソムリエ

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