社会環境の変化は、夜型の生活や朝食の欠食傾向にある児童の増加につながり、子どもの発育や発達にも大きな影響を及ぼしています。さらに、生活習慣病の発症も低年齢化が進み、小児期に生活習慣病(小児生活習慣病)を発症するお子さんも増えてきています。
そこで今回は、小児生活習慣病の現状と将来への影響についてまとめました。
小児生活習慣病とは?
はっきりと定められた生活習慣病の定義はありませんが、厚生労働省は1956年から使用されてきた「成人病」という言葉を1996年10月から「生活習慣病」と変更しました。「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義することが適切であると考えられており、インスリン非依存糖尿病や高血圧、高脂血症などが含まれます。これらの病気の共通した背景として肥満があることが多く、肥満は遺伝的な影響だけでなく、その人の生活習慣に根ざしていることが多いことから、こうした病気を一括して生活習慣病と呼ぶようになりました。
小児においても、肥満をはじめとする生活習慣病がみられるようになり、「小児生活習慣病」と呼ばれています。
小児肥満の現状
文部科学省の学校保健統計調査によると、男子・女子共に1977年度以降、肥満傾向児の出現率は増加傾向でした。2000 年以降では、年齢層によりばらつきはあるものの、肥満傾向児の出現率は、おおむね横ばいもしくは増加傾向となっています。
また近年の傾向として、中高生の思春期肥満から成人肥満への移行が多くなり、2型糖尿病や脂質異常症、高血圧の合併症だけでなくメタボリックシンドロームを伴う例も増えてきています。
そのため、成人同様に子供のメタボリックシンドローム対策が必要であり、2007年には厚生労働省によって小児期メタボリックシンドロームの診断基準が発表され、2017年には小児肥満症の診療ガイドラインが作成されました。
将来へのリスク
小児肥満は、成人肥満に移行する可能性が高く、2型糖尿病、脂質異常症、高血圧などの原因となります。また、これらは動脈硬化を促進し、将来的に心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクを高めます。
年齢が低いうちから生活習慣病を発症すると、罹病期間が長くなることから、成人した後に合併症の起こる頻度が高い傾向があります。小児生活習慣病のみならず、成人期に発症する生活習慣病を予防するため、小児期の肥満に対する早期発見・早期治療などの適切な介入を行うことが望まれています。
参考文献
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http://plaza.umin.ac.jp/~jschild/com/pdf/20170922.pdf、(閲覧日:2021年6月2日)
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